カイトとニイトと就職活動とⅢ
「姫様から話は聞いている。この装備を付けろ」
不審者と間違われながらも、斧を持っての参戦を決め込んだところ、あっさり斧は没収された。
ただ、無事に兵士専用の装備を貸し与えられた事もあり、それなりに身形はよくなる。
軽量型のプレートアーマー。薄い鉄板製であるからか、防御性はかなり際どく思えた。だが、幸いにもさほど重くもなく、蒸れる事さえ気にしなければ良好な制服とも言える。
「あの、俺って剣とか使えないんだけど」
「敬語ッ!」
「はっ、はい!」
険しい表情をした兵長は「武器を使う事はほとんどない、むしろ使うなら盾だから安心しろ」と善意の言葉を贈ってくれた。
「ちゃっちゃとせんか!」
「ちょ、ちょっと待って」
「無駄口はいい! そして、答えるときは……はい、だ! 分かったか青二才!」
「はい!」
そうして俺が装備を完了したのは、腕時計換算で五分後くらいの事。
「次からはもっと早く着替えられるようにしろ!」
「はいっ!」
「では、城の見回りをしてこいッ! 夜になったら再集合だ。これを半年は続けてもらい、後々は護衛の任務につかせる、分かったか!」
「兵長さん、質問です!」
「なんだ!」
挙手した俺を指さし、怒鳴りつけるように兵長は問いを許してくれた。
「見回りって何をすればいいんですか?」
しばらく沈黙が続いた。
「城内部を歩き回るのだ」
「それだけですか?」
「そうだ! そうして誰かの目があることで、不審者が入ってもすぐに気付ける」
防犯カメラもない場所に要人がいるというのだから、そこまでどうでもいい仕事ではないらしい。
「はいっ! 全力で頑張らせていただきまっす!」