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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第六話 神器の力
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神器の力Ⅶ

「ジャガイモとニンジンとタマネギと……」


 買い物カゴを持って首都フレイアに訪れた俺は、師匠に命じられた通りに必要な食材をかき集めていた。


 ニオは自分がやると言っていたが、彼女もまた別の仕事を抱えている。そこまで無理をさせるよりは、俺がこうして動いた方がいいと考えた。


「ん……あれは」


 片膝をついている女性を見つけた俺は、傍に寄ってから話しかける。


「大丈夫かい?」


「足をすりむいてしまって」


 傷口を見ると、若干だが血が出ていた。俺ならばともかく、女性がそうなってしまえばきっと痛いに違いない。


「俺は治療できないけど、城にまで運ぼうか? 頼んだらたぶん手当くらいはしてくれると思うからさ」


 この前の要求分を考え、人助けで頼みを聞いてもらうくらいはいいだろう、と俺は勝手に判断していた。


「いえ、そこまでは――ですが、頼めるというのであれば家まで運んでいただきたいのですが」


「ちゃんと救急セットとかある? 家で治せないなら、ちゃんとした場所で見てもらった方がいいと思うけど」


「はい、大丈夫ですので」


 そうして俺は茶肌の女性を背負うと、指示に従うがままに歩く。


 意外に遠いのかと思った時、女性は俺の背を何度か突いた。


「どうしたの?」


「そこを右に曲がったら家です」


「オッケー、じゃあ後少しだね」


 到着してみると、かなりぼろい家に到着する。


 ただ、それはこの女性に限った事ではなく、火の国ではさほど珍しい事ではないのだ。


 シアン曰く、水の国は文化の国としての側面を推している事もあり、住居は全て外見を良く見せる為に高水準の作りらしい。


 今度は師匠の弁だが、火の国は生活実用性に特化しているらしく、水の国のように身形に金を掛けるよりは生活の質を上げる事に使っているとの事。


「じゃ、お大事にどうぞ」


「はい。あっ、大したものではないですが、お礼です」


 女性は小さな革袋を手渡してきた。


 俺は受け取ると、軽く表面を撫ででみる。思った通りに硬貨の類ではないようだが、奇妙な触感だ。


 気になった俺は袋を開け、中身を見てみる。すると、割と多くの種籾が入っていた。


「ありがたく頂くよ」


 女性と別れた後に、俺は指定の買い物を済ませていない事を思い出し、すぐにマーケットへと戻っていく。


 かなり遅れた時間に帰った事もあり、ニオも師匠も空腹で机に突っ伏していた。


「すみません! ちょっと人助けしてたもので」


「またか、せめて修業期間中は自粛せんか!」


 こんな風に、師匠は怒り気味になると口調を変える。


 それこそ、ミネアの原型となっているのではないか、という程の迫力で言われるのでなかなか怖いのだ。


 閑話休題、癖どころか本能になりつつある人助けは、この火の国に来てからも続けている。


「カイトさんらしいですね」


「いやぁ、それ程でも」


「反省せんか! それはそうと、食材は買ってきたのか」


 これだけは自信満々に、買ってきた食材を机の上に置いていった。


「サツマイモに大根にキャベツです」


「どうしたらそんな間違え方をするんですか!」


 俺としては普通だったのだが、どうやらとんでもない間違いだったらしく、さすがのニオも驚きを隠せずにいる。


「イモ、根っこ、剥いても剥いても同じか。言語で覚えていたら間違えんはずじゃが……」


 純粋に間違えた俺は面目なく、頭を下げ続けた。


 結局ニオがどうにか素材を生かし、当初の予定だったらしいカレーをキャンセルしてスープを作る事に。


 これはこれで美味しかったので、まったく問題はなかった。


 事件が起きたのはこの二日後、俺としては普通に過ごしていた時の事になる。


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