神器の力Ⅱ
火の国の首都、フレイア。RPG風に言うならば、砂漠にある工業都市といったところか。
ほとんどの建造物から煙突が伸び、通りすがる店からは火花が散り、金属を叩く槌の心地よい音が響いている。
観光案内の一つや二つがあれば良いのだが、そんな便利な無料ペーパーがあるはずもなく、俺とニオは一直線に城へと向かった。
水の国とは違う屈強な門番は、早速俺の足止めをしてくる。
「通りたければ冒険者である証か、謁見許可証を見せろ!」
「謁見許可証かどうかは分からないけど、これ」
ミネアからもらった封筒を手渡すと、警戒をした後に一人の門番が警戒を維持しながら、もう一人が読み始めた。
「……この男が」
「どうする?」
「ヴォーダン様に聞いてくる。お前はここで見張っていろ」
手紙を読んでいた男は門を開け、城の中へと入っていく。
「あのーお肌が焼けてしまうので入れてもらえませんか?」ニオは手をあげてから発言する。
「少し待っていろ! 結果が出るまでは入れられん」
とりあえず入れる気があるのだと安心し、俺は待った。
それから三十分程が経過し、ようやく城の中へと通される。
その最中、城の中を歩いていた屈強な兵士達が俺とニオの後ろに続き、恰も男版大奥に入ったかのように長蛇の列が出来た。
謁見の間に到着すると、今度は剣闘士を思わせる剣と盾を持った戦士が十人程見られる。
「何ですかね、物騒に見えますけど」
ニオは小声で言うが、俺は特に気兼ねする事なく、後ろにいる兵士に話しかけてみた。
「なんか物騒だけど、悪い事でもあったの?」
割と大声だったらしく、その場にいた者達は一斉に武器を構える。
「皆の者、武器を降ろさんか!」
海外ドラマで老齢の鬼教官を吹き替えていそうな、威圧的な声が放たれた瞬間、全員が構えを解いた。
「初めまして、お入れは池尻海人! みんなからはカイトって呼ばれているよ!」
「私はニオです! カイト様専属の僕です!」
元気よく挨拶したつもりだが、その場の雰囲気が重い。
「カイト殿、か。要求は何だ」
鬼教官風の声が聞こえたかと思うと、壁のように立ちふさがっていた戦士達が脇に避けていった。
すると、ハリーポッターのロンを思わせる、赤茶色の散り毛をした、壮年よりも少し上くらいの男性が目に入る。
年だと言うのに戦闘が得意そうな、荘厳な雰囲気を放っていた。薄い褐色の肌であることから、ドワーフの王にも見えた。
おそらくは、この人がフレイア王だろう。
「ミネアとはあんまり似てませんね」
「なんだと!」
再び、武器が構えられ、俺は言ってはならないことを言ってしまったと自覚する。
「あっ、すみません……つい思った事を言ってしまって」
「謝罪は良い。早く本題を話さんか」
ミネアの性格で分かり切っていたが、火の国の人はみんな喧嘩っ早いのだろうか。
直接の招待状を受け取ったというのに、なぜか歓迎されていないようにみえる。
「えっと、豪華絢爛な生活と、ニオの保護、あとはミネアの師匠と話もしたいかな」
「……分かった。全てを聞き届けよう」
「えっ、本当にいいんですか? いやぁ、言ってみるもんだなぁ」
「それで、ミネアはいつ戻るのだ」
手紙に書いてそうなものだが、それらしいことは一切聞いていない。
「えっと、多分俺が満足した頃には戻るかと」
表情を歪めたフレイア王は、一人の兵士を傍に寄せ、耳打ちをしていた。
その兵士はこちらに近づいてくると、ミネアの師匠の元へと案内する、と言って先に進んでいく。
「じゃ、また近い内にきますね」




