神器の力Ⅰ
馬車に揺られ、俺は黙り込む。
「カイトさん、絶対にいつか戻れますよ」
「……なんでニオが居るのかな」
「だって私、カイトさん付きのメイドですし」
この様子を見るに、ミネアが呼び寄せたのだろう。正真正銘シアンと二人きりになる為に。
「それはそうとカイトさん、火の国に入っていいんですかね」
ニオが指さす方を見ると、一線を境に茶色の地面がベージュの砂に変わっていた。
「そういえば、この砂漠は上位の冒険者しか入っちゃ駄目だったね」
馬車の速度が早いから問題がない、などという可能性を考慮したが、この悪路では鈍足になってしまうだろう。
馬が砂漠へと足を踏み入れた途端、急激に加速を開始した。
急激な速度上昇により、俺は馬車内の背もたれに押しつけられ、妙な圧迫感を覚える。
気づくと、俺と同じく衝撃で吹っ飛ばされたニオが俺にぶつかっていた。ついでに、その大きな胸も当たっている。
「うーん、でかい」
不意に呟いてしまうと、ニオは何も言わずに自分の座席へと戻った。
速度が早いままで安定してくると、再び馬車内に安寧が訪れる。
俺はといえば、若干気まずい。
「申し訳ありません!」
「いや、構わないよ」
「だって! ……カイトさんはちっちゃい女の子が好きなのに、こんなにみっともない胸を当ててしまい……」
引っかかる単語に気づいた俺は、ニオの傍に駆け寄った。
「ちょっと待って! 俺そんな事言ってないよ!」
「私、見たんです! カイトさんがシアン様の名前入りクッキーを持っていたところ! 私だけと思ったらシアン様にまで……」
弁明しようともしたが、俺は黙り込む。
「言ってくださいよ! 私とは遊びだったって! ……あっ」
「俺はロリコンなんかじゃないよ。どっちかというと、ニオのような胸の大きい女の子が好みなんだ」
言いながら、俺はニオの胸を揉んだ。
「カイトさん……良かった、本当に良かったです」
「ああ、俺も良かったよ」
互いに誤解が解け、感動した俺とニオは抱きしめ合った。




