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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第五話 悪の組織
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悪の組織Ⅸ

「なぜ分かった」


「直感かな。お前からはずっと変な気がしていた……悪人の気配だよ」


 俺が最初から毛嫌いしていたのは、ライアスが表層の奥から放っていた妙な気配に起因していた。


「ならば無駄か」


「そうだよ。もうお前に抵抗はできない」


「……《水の月》、それを知っているのは限られた人間だけ。おそらく、水の国で知っているのは私くらいのものだろう」


 それはダーインが言っていたはずの呼び名、ライアスが知っているはずがない。


「私は分かった上で、貴様を始末しようとした。だが、知らない貴族からすれば貴様は面白くない……平民の分際で姫様の傍により、自身の名を轟かせようとしている者など」


「俺はそんな気は――」


「もしも私が消えたとして、お前を襲う者の手が止まるわけではない。貴族はもとより、大出資者の一人である俺が消えた時点で、組織もお前を襲うだろう」


 組織、聞いた事もない単語がここで飛び出してきた。


「何の事なんだ」


「悪の組織、イーヴィルエンター。この世界を裏から操る組織だ……他国の貴族が結託している組織だけに、貴様のような平民――《水の月》だろうとも、逃げる事は出来ない」


 同類しか知らない情報が回っている程の組織。俺が思っていたよりも、ライアスには危ないバックが居たという事か。


「……お前は本当にシアンを好きだと思っていたのか? なら何でこんな事を……」


「好き? 笑わせるな。私は水の国で昇り詰める為、姫様を手に入れようとしただけだ。このような子供に惚れる者など居るはずがない――貴様がどうかは知らんが」


 それからしばらくすると、ミネアが現れた。


 ライアスは不審にも一切抵抗を示さず、謁見の前へと連行される。


 俺も顛末を見届ける為に、ミネアに付いていった。


「ライアス、君の実力は結構評価してたんだけどなぁ」


 フォルティス王は軽い口調ながらも、冷たい視線でライアスを睨んでいた。


「申し訳ありません」


「謝罪など無用だよ――それで、カイト君が問題を見つけたわけか」


「そうだよ」


 しばらく沈黙が続き、急にフォルティス王は笑いだす。


「そうだ、じゃあライアスにもう一度チャンスを上げよう。そうだな、カイト君と正々堂々の決闘をして、勝てたら無罪放免だ」


 冗談などで言っているようには見えなかった。


 しかし、犯罪者を平気で野放しにしようとしているなど、明らかに正気とは思えない。特に、娘が襲われかけた事も伝わっているはずなのに。


「フォルティス王、それは――」


「君が勝てばいいだけだよ。僕としてはカイト君を高く評価しているんだ。そのカイト君に勝てるなら、ライアスに恩赦を向ける程度は造作もないね」


 何も言えず、目線を逸らした瞬間、ライアスが口許を緩ませている様が目に映り込んだ。


 かくして、ミネアとフォルティス王が見物人となり、決闘が行われる事になる。


「カイト、そいつを叩きのめしなさい!」


 今回に限り、ミネアは完全な意味での味方であり、俺を応援してくれていた。


「任せておいて」


 狂魂槌を構え、俺はライアスと向かい合う。


「では、戦闘開始!」フォルティス王は告げる。


 それと同時に俺は槌を盾にして突撃し、ライアスとの距離を詰めた。


 第一撃目に刺突が放たれるが、やはりこれも狂魂槌が防いでくれる。


 攻撃姿勢に移し、狂魂槌を振りかぶった瞬間、目に留まらない程の速度で第二撃目の突きが打ちこまれた。


 攻撃速度で上回れない、そう思った時点で後方に逃げようとしたが、ライアスは刺突と同時にフェンシングのようなモーションを加えて射程を延ばす。


 右肩に細剣(レイピア)の尖端が突き刺さり、狂魂槌を手放しそうになった。


「チェックメイト」


 ライアスが何かを言ったかと思うと、急に右肩が上がらなくなる。


「麻痺薬を塗っても、問題あるまい?」


 速効性の麻痺薬、これでは追撃を回避する事も、攻撃する事も出来ないだろう。


 第三撃目、ライアスは俺の心臓を目掛けて最終攻撃を仕掛けてきた。


 攻撃の軌道は追えた。目では見えないが、直観はライアスの攻撃を捉えている。


 俺は目を閉じたまま体を反らせた。すると、ライアスの一撃は手前で止まり、そこから攻撃が続行される事はなかった。


 倒すべき対象はライアス、守るべきは――。


「シアンっ!」


 覚悟を決めた瞬間、感覚のなくなった右肩へと血が流れ込んだかのように、動き出す。


 狂魂槌によるフルスイングを叩き込んだ瞬間、ただの一撃にもかかわらず、ライアスは撃沈した。


「わぁお! すごいよ! カイト君、やはり君は僕の見立てた通りの逸材だ!」


 高揚した英語教師のように、欧米人風のテンションでフォルティス王は拍手を送る。それで俺が喜ぶわけではないが。


「カイト、良くやったわね!」


 ミネアは、それまでに見せた事もないような笑みを俺に向けてくれた。こちらの方がよっぽど有り難かった。


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