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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第五話 悪の組織
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悪の組織Ⅶ

「カイトさん、あれって本当ですかね」


「今は分からない。でも、接触してみれば分かるはずだよ」


 そう言いながらも、俺は街の散策を優先した。


 個人的に興味が優先されたというのもあるが、なによりはニオがこのお出かけを楽しみにしていたからである。


 ただの買い物であれほどまでに喜ぶくらい、メイドの仕事はきついのだろう。


 そうは見えないが、専属メイドという事で俺の前で見せていないだけかもしれない。


「あっ、あれがお城へお菓子を届けているお店ですよ」


 指さされた方を見ると、妙に大きな菓子店に辿りついた。


 店内に入って早速、ニオは俺の手を引っ張って色々なコーナーを巡る。俺としても、金は少なからず持っているので、彼女が欲しいと思っている物を買う程度はできた。


 会計を終えて店を出ようとした時、俺はパズルのピースが抜け落ちたように、気持ち悪くなる。


 その喉につっかえた感触が何なのか分かった瞬間、俺は店員へと声を掛けた。


「……この店に赤い箱のクッキーってあるかな? 金箔押しの」


「ありますよ。でもあれは特注品ですからね……」


「特注品?」


 一度振り返り、ニオの視線がない事に気付いた時点で店員に顔を近づける。


「それがですね、プレゼント用なんですよ。それも、恋人用の」


 つまりあれは、シアンが誰かから好意を寄せられて贈られた、という事になるのだ。


 あのお子様なシアンに対して、そのような事をするロリコン変態男が、この世界にもいると考えると若干寒気がする。


「王宮宛てで依頼を出した人はいるかな?」


「えっ、まぁ居ますけど……そういうのは公開できないんですよ」


「俺はシアン……姫様預かりの者だよ。本人から聞いてくるように頼まれたんだ」


 怪しまれているような目線を向けられたが、俺の胸に付けられたバッジを見た途端、黙って頭を下げてきた。


「ライアス様です」


「もしかして、まだストックとかある?」


「あります」


 連日来ている事に気付いていた俺は店主を促し、その中の一つを持ってくるように頼む。


 そして持ってこられた箱を開けると、案の定というべきか、シアンの名前が刻まれていた。


「何か光ってるけど、これ怪しい食べ物じゃないよね」


「いえいえ、それはもう安全第一ですよ。ですが、お客様からの材料受け取りもしておりますので、人それぞれの様子になりますがね」


 妙に光を反射する銀色の粉、アラザンの粉末にも思えるが、それにしては光り方が純情ではない。


「毒物じゃないよね」


「それはもう。きちんと毒物検査をして、その上でお送りしていますので。ただ、惚れ薬や媚薬、さらには体毛や体液まで混入させるお客様がいるので――」


「カイトさん、何の話ですか?」


 突如として話しかけてきたニオに驚き、俺はクッキーを落としてしまった。幸い、三枚くらい落ちた程度で済んでいる。


「これ姫様の名前じゃないですか?」


「ニオの名前刻印で一箱くれないかな」


 追求されるよりも前に、俺は店員に注文を出した。


それで察してくれたらしく、店員は店の奥へと消えていく。


「今のクッキーって」


「ニオへのプレゼントだよ。今日は付き合わせちゃったし、いつもお世話になっているからね」


 元々プレゼントしようとしていたのは都合が良かった。若干前後はしたが、考えたままの事を言える。


「わぁっ! 嬉しいです! カンゲキです!」


 喜ぶニオを尻目に、落ちていたクッキーを一枚拾った。


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