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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第五話 悪の組織
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悪の組織Ⅵ

「それで、お城が贔屓にしている店を回りたいわけですね」


「まぁね。ちょっとした好奇心なんだけど」


 これは事件とは全く関係ない問題。むしろ、あれで終息したと数割は思っている以上、気を張っている方がおかしくもある。


 王族顧客の店ともなれば、多少レアな食材をもあるかもしれない。城から受注されていないだけで、高級食品としての何かがあるかもしれない。


 そんな多数のかもしれない(・ ・ ・ ・ ・)論理を鉾に、俺はニオを連れてきた。


「とりあえず、喫茶店で一服していきませんか?」


「まだ出発したばかりだけど」


「いいじゃないですか! ほらほら、先に行っちゃいますよ!」


 メイドの仕事で疲れているのだろうか。ならば仕方がない。


 喫茶店に入った俺は日本のそれと同じように、テーブル席に着いた。


「……おっ、これが呼び鈴ね」


 さすがにスイッチ式の奴があるはずもなく、机に設置されていたベルを鳴らす。


「いらっしゃいませ」


「ニオからいいよ」


 俺はメニューを眺めながらニオに振った。


「私はアイスティーで」


「じゃあ俺は……このアメリカンコーヒーで。砂糖とミルク付けておいてね」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 ウェイトレスがその場を離れた時点で、俺は一つの事に気付く。


「……これって何って書いてある?」


「アメリカンコーヒーですね。カイトさん読めてなかったんですか?」


 それとはまったくの逆。どうして俺は習った事もないこの世界の言語、さらに言えば文字まで判断できるのだろうか。


 その疑問は幾度として抱いていたが、今回はその比ではない。


 アメリカンコーヒーはあっちの世界の言葉であり、こちらの世界にアメリカはないはずだ。


 そこで改めてメニューを一瞥すると、日本に存在したメニューが幾つか存在していた。


「もしかして翻訳機能でも掛かっているのかな……なら携帯とかが伝わらないのは」


「どうしたんですか?」


「いや、俺が異世界から来たって事は話したよね」


「はい。コウコーという施設に通っていたんですよね」


 俺専属のお手伝いという事もあり、ニオにはかなりの事を話している。その為、日本の事も多少なれども把握しているのだ。


「そうだよ。でも、こっちに高校はないよね」


「そうですね。聞いた事のない単語ですし」


「キリマンジャロは?」


「コーヒーはあまり飲みませんけど、知ってますよ」


 つまりはこういう事。おそらくは同一の物の場合は代入が働き、そうではない時は意味が理解されないのだろう。


「それはそうとカイトさん、今日の予定は──」


 それから小一時間程話し、本日の計画を決定した。


 店を回りつつ、個人的な買い物をしていき、申し訳程度に聞き込みをしていくという流れ。俺としても、買いたい物はあるので、これに対して否定の意を示す事はなかった。


 店を出た途端、再びあの時のおばさんと出会う。


「こんにちは」


「こ、こんにちは」


「最近どうかな? 俺の方も不審者を捜しているんだけど」


 おばさんはしきりに目を離そうとしている。もしかして、忙しかったのだろうか。


「いえ、私も最近見ませんねぇ。どこかにいったんじゃないんですかね」


「そうか。一応もう少し粘ってみるけど……あっ、捕まえたらちゃんと教えてあげるからね」


「あはは……お願いします」


 軽い話だけで終わり、おばさんと別れようとした時、ニオはおばさんの手を掴んだ。


「あなた、嘘ついていますね!」


「何言っているんだよニオ。この人は俺に頼んできた人で――」


「本当の事を言ってください! あなたに依頼された日にカイトさんは襲われたんですよ!」


 俺がおばさんの顔を見てみると、あからさまに狼狽している。何か隠していた事があったのだろうか。


「すみません……貴族様に頼まれて」


「なっ、なんだってぇ!」


 俺はこのおばさんが俺を騙していた事に驚いていた。


 まさか、誰かに依頼されて俺を嵌めようとしていたなど、予想できるはずもない。それにしても、ニオはなぜ分かったのだろうか。


「それで、いくらもらったんです!」


「金貨二百枚です……」


「ニオ、そこじゃないよ。……誰に頼まれたんだい?」


 目線があった瞬間、おばさんは頭を下げながら、許しを懇願してくる。


「言ってくれれば何もしないからさ」


「……王宮騎士のライアス様です」


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