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「排除だとさ、テスラ。どうするよ」
「わたくしに聞かないでくださいまし! こんなの聞いていませんわ!」
「俺も聞いてねーぞ」
男は何も言わず、突撃を仕掛けてくる。
相手を普通の人間と判断したレイジは《武装装甲》の能力で返り討ちにしようとした。
だが、予想を越えた動きを見せてきたことに驚き、レイジは手を抜かないままに拳を叩きこんでしまう。
殺したか、などと不安にこそなるが、すぐにその不安は消えた。
「……抵抗確認」
「どうにも、普通の人間じゃないらしいな」
機械的な口調の男を見て自嘲気味に笑うと、レイジは早速構えを取る。
「《武器創造》」
発声と同時に黒い剣が形成され、レイジの手に落ちた。
スキンヘッドの男は殴りかかってくるが、そうした攻撃を剣で受け止め、殺さない程度の威力で蹴りを叩きこむ。
「なぁ、テスラ!」
「なんですの?」
「こいつは殺しちまって大丈夫か?」
「さぁ? 少なくとも、雷の国の人間ではなさそうですわ」
「そうか! なら少なくとも半殺しならセーフだな」
剣で一撃を浴びせた後、レイジは目を閉じる。
次の瞬間、周囲の空間が歪み、男の肩腕が抉られる――と思われたが。
「……なんだ。人間には使えないのか」
『軟性物質は不得意だ』
「そうか」
男が再び殴りかかってくるが、レイジの顔から焦りは一切浮かばなかった。
「《大気喰らい》」
風の刃が形成された途端、男の右手首を跳ね飛ばす。
半殺し、といえば叩きのめすことをイメージとするが、レイジの場合は文字通り死なない程度の攻撃に値していた。
「反撃……確認」
「そろそろやめておけよ。そのままだと死ぬぞ」
「ぐぉぉぅ」
男が呻いた瞬間、断面からあふれていた血が完全に止まり、傷口が塞がる。
「聖刻使いには見えないが……なんだ、こいつらは」
殺すには殺せず、怪我を追わせて撤退させようにも男はまだ戦う気だった。
しばらくすると、同じくスキンヘッドの褐色肌男性が数人現れ、レイジを――テスラもだが――を囲む。
数は七人。全員が同一の力を持っているとすれば、厄介となってくる相手だ。
「テスラ、これ本当に殺しちゃ駄目か?」
「わたくしは知りませんわ!」
「お前も力を持っているんだろう? 手伝ってくれ」
「人間への能力使用は禁じられてますわ」
「だろうな」
初めから期待はしていなかったと言わん限りに言い放つと、レイジは黒い剣を強く握った。
次々に襲いかかってくる男達の攻撃をかわしながら、切り傷を少しずつ与えていく。ただ、それで引き下がらないことを理解しているだけに、急所を狙い打ち始めた。
関節、足、腕。負傷すれば戦闘が成立しなくなる場所。
あっという間に三人の身動きを封じたが、それでも状況は好転していない。
「……殺すか」
ポツリと呟いた途端、レイジの目付きが変わった。
刹那、男の一人は呻きをあげる。右腕が根っこから切断され、地面に転がった。
「相手が普通の人間ではないなら、俺も手は抜かない。死にたいならば掛かってこい。死にたくなければ……」
追い払う為の口実のはずだったが、レイジは大切な考慮を忘れている。
「ひっ……きゃあああああああああ!」
途轍もなくグロテスクな場面をみたテスラは叫び出した。
しまったと思った時には既に手遅れであり、時間を巻き戻す他にどうにかする方法はない。そして、時間を巻き戻す方法もなかった。
「あっ、悪かったなテスラ」
「最悪ですわ! 怖いですわ! あああああああああ! もう嫌ですわああああ!」
感情の昂りに呼応するように、テスラの体から紫色の雷撃が迸る。
レイジはまずいと分かりながらもその場から逃げることはできず、男達は危険だと判断したのか、急いで撤収していった。




