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異世界からの闖入者  作者: マッチポンプ
第四話 狂魂槌を持ちし者
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狂魂槌を持ちし者Ⅹ

「あの、本当にありがとうございます!」


「いやいや、俺は当然の事をしただけだよ」


 あれから女の子を村に送り、ミネアのいる戦場に向った俺だったが、既にやる事はなくなっていた。


 ミネアは一人で全個体を倒し、その上で俺を待っていたという。


『統率が崩れてからは簡単だったわ。ま、あんたにしては良くやった方ね』


 などと辛口な評価をもらいながらも、俺は内心ガッツポーズをしていた。


 今回に限っては何の偽りもなく、完全に俺の評価が上がっている。それも、あのミネアがそうだというのだから、嬉しさは並々ならぬものだった。


「お礼がしたいのですが……」


 女の子の声で、意識がこちらへと戻ってくる。


「うーん……俺は大丈夫かな」


「そうは問屋が卸しません! お礼をさせてください!」


 まるで選択肢無限ループのような形だ。ならば何かしらもらっておいた方がいいだろうか。


「ん、じゃあ何でもいいかな」


「では、あなたの僕にしてもらえませんか?」


「僕かぁ、お手伝いさんくらいならいいかな……って、この村に残らなくていいの?」


「はい! 命の恩人の……あの……えーっと」


「池尻海人、カイトでいいよ」


「――命の恩人のカイトさんに尽くしたいと、村長に話は通しています!」


 随分と行動が早いような気がするが、気のせいだろう。


 こうして、救った女の子がなぜかお手伝いさんになるという展開を迎え、帰りの馬車は随分と賑やかになった。


 その移動最中、シアンの提案によりニオはフォルティス城内のメイドになり、とりあえずは住居の提供も行われる事に。


 ようやくフォルティスに付いたと思ったら、シアンによりこれからやるべき事を説明され、それに従う形で各々が動き出した。


ニオはメイドに就職先が決まったという事で、担当部署へと向い、俺はシアン先導のもとに謁見の間へと行く。


 赤いカーペットの先に玉座。まさにRPGのお城らしい構造ではあった。


「シアンから話は聞いているよ。君がイケジリカイト君だね」


 王様と聞いていたからには、髭もじゃで意地の悪そうな悪王をイメージしていたのだが、口調も柔らかければ年もそこまで取っていないように見える。


 シアンの青と近い、水色の髪の毛。片目はそれと同色だが、もう片方は緑色をしていた。


 オッドアイというものを実際に見たのは初めてなだけに、俺は結構驚いてしまう。


「は、はい!」


「気を張り詰めなくていいよ。君が強者である事は聞いているからさ」


 確かにウェットリザードのボスを単騎撃破したが、強者と言われるのは少しばかり違和感が残る。


「王様、どうしてあの村を見捨てたんですか?」


 シアンの顔が青ざめたのが見え、俺も失敗に気付いてしまった。


 またうっかり余計な事を聞いてしまったかもしれない、そんな風に焦り出そうとした矢先、王様は特に表情を変える事なく返答を出す。


「まだ処理をするには早いと思ってね。数年規模で軍事力の拡大を狙っているから、あそこの《星霊》はその強化後の訓練用として放置していてもいいと思ったんだ」


 この返事には、村についての事が一切出されていなかった。


「あの、村については」


「村? そんなものはどうでもいいよ。僕としては弱者がどうなろうとも知った事じゃないね」


「それはッ――」


 怒りを滲ませ、数歩進んだ時点でシアンが俺の手を握り、引き止めている事に気付く。


「別に構わないよ。僕は強者に対しては敬意を持って対処する、それは君に対しても同じだから、一発殴るくらいは別にいい。理由はよく分かってないけどね」


 シアンの制止と、王様のこの反応で、俺の怒りは消えた。おそらく、殴っても何も変わらないと理解できてしまったのだろう。


「いえ、申し訳ありませんでした」


「そっか。まぁいいや、とりあえず僕が君を評価している事くらいは覚えておいてよ。何せ、見込みでは兵士数百人規模を出さないと解決できないはずの問題だったんだし」


 そこの一端にミネアが絡んでいる事は、ミネア本人から口止めを要求されているだけに、それが俺に向けられた完全な評価だとは思っていない。


「欲しい物が何かあったら言ってよ。その時はすぐに用意させるからさ……じゃ、僕はちょっと用事があるからこの辺で」


 王様はそう言い、謁見の間を去っていった。


 それからしばらくし、シアンは俺の傍に寄る。


「父の無礼をお許しください」


「大丈夫だよ。また王様が他の村を見捨てようとしても、俺が救って見せるからさ」


 安心してくれたのか、シアンが微笑んでくれた事で、俺もしこりが取れたように笑顔になれた。

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