カルテミナ大陸攻略戦Ⅱ
「最前線索敵分艦隊の情報で、当艦隊の前方にある大陸が件の存在だと確定できました」
長い机の前には各船の指揮官格がそれぞれに集い、シアンの話を聞いていた。
「カルテミナ大陸……ですか。しかし、あれほどとは」
「なんらかの細工があるとはいえ、完全な大陸ですよ、あれは」
前衛についている船の指揮官達は口ぐちに告げる。
「どんな見た目なのかな? 絵とかないの?」カイトが口を挟む。
「そうですね、では情報の開示から始めましょう。事前に模写を得意とする者に命令し、資料を用意しました」
シアンは机に置かれていた封筒から一枚の紙を取り出すと、出来るだけ中心寄りに置いた。
誰もがその姿に驚く中、カイトだけは皆とは違う反応を示す。
――嘘だろ……これ、空母じゃないのか。
土が撒かれ、大陸状にはなっているが。その特徴的外見は間違えられるものではなかった。
カイトの目視情報では曖昧ではあるが、彼の尺度で言えば全長300m以上はある。
こちらの世界においてそれに準ずる大きさの船は存在せず、カイトの世界ですら数えられる程度だろう。
「カイト……どうしました?」
「これ、船だよ。俺の元居た世界で、似たような物を見た事がある」
作戦司令室が静まり返る。
「まさか、あれが船だと」
「指揮官とはいえ、そのような戯言は信じられませんな」
「そもそも……あれだけの船を動かせる機関も燃料も、存在しえないだろう」
指揮官達は好き勝手に言っているが、カイトの世界ならばその両方が存在している。後者は忌むべき存在――特にカイトの国では――でもあるが。
「《武潜の宝具》と考えればあり得ますね。雷の国では異世界兵器を運用していますが、カイトの言い分が正しければこの世界に現れた物をそのまま使っている、となります」
「しかしそれは……」
「いや、それならば有り得るかもしれない。仮にも魔物撃退の役割を持つ夢幻王、海上戦力を補給していてもおかしくはない」
聞き覚えのない話を聞き、カイトはシアンを見た。
「夢幻王の元々の役割は魔物の撃退、善大王が魔物達の世界である魔界の封印を請負っています。今はその限りではありませんが」
小声で注釈が入れられ、そこでようやく納得する。
「周囲の護衛艦を撃沈させながら接近し、白兵戦で決着を付けます」
「物理的な破壊は無理と?」
「はい、艦隊内の精鋭を呼び集め、あちらの司令官を討ち取ります」
具体的な作戦は伝えられ、停止していた三国同盟艦隊は一斉に出撃を開始した。
精鋭として数えられていたのは各国それぞれから五十名程。当然、カイトやミネア、ライカの名もそこに連なっている。
だが、戦闘可能になるまでは役割を続行し、護衛艦の撃破に向う事になった。
魚型の小型魔物や、大型海洋生物の襲来など、海上防衛切り札だけあって敵も一筋縄ではいかない。
砲撃などで魔物を打ち落とし、白兵戦力で敵の船に密着してから突入、カイトは単騎で大型の魔物処理に当たった。
戦争の中でも特に最前線に当たるこの戦いは、三国の総攻撃にも等しく、術や剣撃、砲撃音などの飛び交う非常に混沌とした戦いとなっている。
そんな中、カイトの元には予期せぬ来客が現れた。