勇者見習いレベル1(4)
俺は、何度もトカゲやイグアナを狩ってきては、アマテラスの祭壇に奉げた。
十何回目かの祈りの後に、やっとこさ、この苦労が報われた。
<我アマテラス。汝を守護するものなり。汝の贄に対し褒章を授ける。我、汝を守護する者なり、ゲップ>
そうすると、祭壇の上に、小さな袋が現れた。何だろうと手に取ってみると、中に五百円玉がぎっしり入っていた。
「うぉぉぉぉ、やっとキター。報奨金ゲットー」
俺は、やっとのことで手に入れた現金に頬ずりしていた。
「多分、ニセモノじゃないはずだが、一応確認しておこう」
俺はそう思って、眼鏡で袋をじっと見つめた。
現金 五万円
やったー! 五百円玉、百個だぁ! これだけあれば、しばらくの間は、食いつないでいけるに違いない。
念のために、行商人のおっさんには、黙っておいた方がいいな。
俺はおっさんに怪しまれない程度のイグアナを狩ると、森を出て行商人のおっさんのところに戻った。
「オオイグアナが三匹に、オオトカゲが二匹だ。おっさん、いくらになる?」
おっさんは、俺の獲物を見ると、
「ほう、えらく時間がかかってるなぁと思ったら、オオイグアナかい。最近は養殖物が出回ってて、天然ものは重宝されるんだ。一匹 千五百円でどうだい」
「千五百円か。オッケイ、それで手を打とう。どっちにしても今日は疲れちまった。おっさん、千円くらいの弁当はないかい?」
「弁当か。今じぶんは、早く傷んじまうからなぁ。軍用のレーションなら、Cレーションがちょうど千円だが、どうする?」
「ああ、それでいいよ。にしても今日は疲れたぁ。おっさんがいて助かったよ。……ところで、おっさんって、『元勇者』だったんだな」
「えっ? 何でわかった?」
「トカゲ狩ってるうちに、眼鏡がレベルアップしたんだ」
そう、俺の『魔法の眼鏡』も、あの時レベルアップしていたんだ。今の俺には、おっさんのパラメータが、こう見える。
行商人(元勇者):Level 3
HP :15/15
攻撃力 : 8
防御力 : 9
魔法力 : 0
道端で商売をしていて、物を売ったり買ったりできる
(正直な性格で、十分信頼できる)
なので、俺はおっさんのことを十分信頼して、今日は近くで寝ることにしていた。HPが戻ったとはいえ、疲れがとれたわけでは無いのだから。異世界といっても、結構、現実は厳しかったりするようだ。
「あんちゃん、今夜の宿はどうするつもりなんだい?」
おっさんに、こう訊かれて俺は正直に、
「その辺に野宿するつもりだよ」
と、応えた。すると、おっさんは、
「じゃあ、毛布とか要らないかい? 安くしとくよ」
と、ニヤリと笑ってそう言った。
「おっさん、商売上手だな」
「でないと、この世界じゃ生きて行けんからな」
「はは、その通りだ」
俺はおっさんを信じてよかったと思った。
こうして、俺の異世界サバイバルは始まったんだ。
『あしたはどうなる?』
知るか! 願わくば、今度起きたら元の世界に戻ってますように。これだけ。