邪神竜の気配そして
今回の話しは、最初と同じ世界、剣と魔法の世界が舞台です
ハジメは村を襲った竜の最後を見た後、己の力不足を痛感し、巫女として修行をする為、聖都ミヤロンに来ていた。
「ハジメ、今日も禊?」
同じ巫女の修行者、ミガキ=コーナの言葉にハジメが頷く。
「はい。私はまだ、下界の汚れが残っているそうで」
その言葉にミガキが溜息を吐く。
「そんなのあいつ等の勝手な言い草でしょ? ここで三年修行してるあたしの目から見てもハジメは立派な巫女よ」
その言葉にハジメは首を横に振った。
「それは違います。あたしは強欲な勇者を召喚してしまいました」
その言葉を聞いた途端ミガキの目が好奇心に光る。
「それよそれ、あたし前から聞きたかったんだけど本当なの、あたし達と同じ位の年頃なのに竜を圧倒したって話しよね」
ハジメは強く頷く。
「はっきりと竜を圧倒していました」
その言葉にミガキは唸る。
「竜を圧倒できる人間って、このミヤロンにもそー居ないよ。幾ら異界の勇者だと言っても規格外だよ」
ハジメは困った顔になる。
確かに規格外に強いが、とても勇者と呼べる性格ではないからだ。
「ハジメ! ツドイ様とカネモ様がお呼びだ! 直ぐに来い」
偉そうにそういう男、中間管理者、マスリ=ゴにミガキが冷たい視線を送る。
「解りました。直ぐに」
そう言ってハジメは初めて神殿に足を踏み入れるのであった。
「ハジメ=ミーラ、御呼びにより参りました」
そう頭を下げる先には、この聖都ミヤロンの最高位の巫女ツドイ=ナサイと神殿に最大の支援者であるカネモ=チーが居た。
「お前を呼んだのも他でもありません、貴方に異界の勇者を再度呼んでもらう為です」
その言葉にハジメが驚く。
「それでしたら私以外の者がするべきなのでは、私が召喚した勇者はとても勇者と呼べぬ者でした」
そのハジメの答えにカネモが続ける。
「しかし、強い。単独で竜を滅ぼせるものはそう居ない」
その言葉には素直に頷くハジメ。
「お金の事は心配するな。私が全額工面する。今我々には強い勇者が必要なのだ」
ハジメがツドイの方を向くとツドイが頷く。
「安心しなさい、もし召喚された勇者が真に邪悪な者の場合は、この聖都ミヤロンの守護者達がきっと退治してくれます」
その言葉に複雑な感情を持ちながらもハジメが頷く。
「解りました。召喚を行います」
召喚の準備をしようとした時、空間が割れて、一人の黒髪の少年が現れた。
その少年は、ハジメが以前召喚したあのドラゴンバスター一刃だった。
一刃はハジメの肩を掴み物凄い表情で言った。
「俺が必要で召喚しようとしていたんだよな?」
否定を許さない強い物言いにハジメが頷く。
「よし、直ぐに仕事だ。報酬は後で考える。早く仕事の現場に行くぞ!」
そういってハジメを手を引っ張り出て行こうとする一刃をカネモが制止する。
「待つんだ少年」
一刃はその声に振り返りながら言う。
「俺は今これ以上無い位急いでる。邪魔するならただで済むと思うなよ!」
完全な脅迫、とても勇者とは思えない言動にその場に居た全員が引くが、カネモは怯まず続ける。
「今回の仕事の正式の依頼者は私だ。その巫女は君を召喚しただけだ」
その言葉に舌打ちをするが直ぐに気を取り直して言う。
「この際依頼主を選り好みする気は無い。早く言え、俺には同じところに留まっている時間は無い!」
一刃の焦り様ハジメも驚く。
前回の一刃は竜を相手にする時に余裕たっぷりな態度だった。
それが、今回の一刃は余裕は全く無い、それどころかまるで天敵に襲われてる小動物の感じすらする。
カネモ達が眉を顰める。
その後、色々な事があった後、一刃とハジメとミガキそして、聖都の守護者の槍使いマモル=チカイの四人で近くの遺跡を探索する事になった。
十三歳の一刃より、五は年上のマモルが言う。
「ふん、どんな細工を使ったか知らないが、お前みたいなガキが竜を倒したなど信じられないな」
その言葉に聖都にいた時の慌てようは何処に行ったのか、落ち着いた様子の一刃が言う。
「自分が竜に勝てないから、そーやって決め付ける奴はいっぱいいるが、お前もそのくちか?」
マモルは手に持った槍を一刃に向ける。
「口に気をつけろ。お前など私の槍の前では、」
マモルはその言葉を言い終わることは出来なかった。
一刃の肘がマモルの顎に決まり、一撃でマモルを気絶させた。
「口だけの奴って居るよな」
あざやな手並みに驚くミガキ。
「カズバさん。お願いですから仲良くしてくれませんか?」
竜を退治した所を見たことがあるハジメは平然とその現実を受け止める。
その時、一刃が手を叩き言う。
「そうだ、忘れてたが、前回の報酬まだ貰ってなかったよな?」
一刃の言葉にハジメの額から汗が流れる。
「あのーその件ですが、やっぱりお金という訳には行きませんか? 一生懸命働いて返しますから」
一刃がにじり寄り言う。
「そんな言い訳が通じると思ってるのか?」
ハジメは下がりながら言う。
「せめてこの仕事が終るまで待ってください」
「仕事の後にして、前回失敗したから嫌だ」
その時、ミガキが好奇心から近づいてくる。
「ねー報酬って何?」
その言葉に一刃は更に詰め寄り言う。
「お金無かったからこの巫女の体で足りない分を補うって約束したんだ。さて約束を守って貰おうか」
その時、ミガキが言う。
「そんな約束してたんだ、取り合えず聖都に連絡した方が良いかな」
その言葉にハジメはもう自分は巫女を続けられないと思ったが、何故か急に思案顔になった一刃が言う。
「そうだな今は仕事が優先だな。しかし約束は守って貰うぞ」
そう言って先に向う一刃。
そんな一刃に召喚した時と同じ感じを覚えるハジメであった。
一行は、様々なトラップとモンスターを回避して、遺跡の最奥にある神像の間に着いた。
その間に見せた一刃の超人的な能力にミガキはただ驚いていた。
「凄いねーあたし達と同じ年でそんな力持ってるなんて」
その言葉に一刃が神像を調べながら言う。
「別に大した事じゃない。八刃の人間だったら今くらいの芸当は十歳で出来る」
その言葉に全員が驚く。
「誇張は止せ」
マモルの言葉に一刃は全く気にせず言う。
「ハジメはあった事あるだろう俺の妹。あいつだって今まであったモンスター位なら普通に倒せるぞ」
その言葉にハジメは、十歳と聞いているが、それより若く見える一刃の妹、七華の姿を思い浮かべるが、流石にモンスターを薙ぎ倒す姿は想像出来なかった。
「八刃は人間の常識の強さ以上のものを求められた。常識が通用しない化け物を相手にする為にな」
そして一刃が言う。
「ハジメ、この封印解くぞ」
その言葉に驚くハジメ。
「封印って、何ですか?」
一刃が神像を叩きながら言う。
「この神像に邪竜が封じられてる。それも半ば封印がとけかけてやがる」
「邪竜とは何だ!」
マモルの言葉は完全に無視してハジメの答えを待つ一刃に、ミガキが手を挙げる。
「はーい。邪竜って何ですか? 普通の竜とは違うんですか?」
一刃はそっちを向いて答える。
「基本的に竜は強大な力と引き換えに強い自制心ってもんがある。ハジメの村を襲った竜も無差別に村を破壊してる様で、そうじゃない。人間を滅ぼさない事を無意識に考えて居た」
「信じられません。あの竜にそんな自制心が会ったなんて!」
ハジメの言葉に一刃が一刀両断する。
「竜が本当に暴れて、人が生き残れると思うか?」
ハジメはその言葉に納得するしかなかった。
「だが邪竜は違う、世界の創造と破滅に関わる竜の破壊本能のままに、世界に破壊を撒き散らす者だ。その世界に住む存在にとってはまさに邪悪なる存在だよ」
その言葉に息を呑む一堂。
その時、ミガキの通信用の魔法玉が光り、ツドイが空中に投影される。
『その通りです。流石は竜退治の一族と言った所ですね。確認ですが、その封印は解けかけているのですね?』
一刃は神像を叩きながら言う。
「ああ間違いない。俺の勘が正しければ、連鎖解放の兆しだな」
その言葉にハジメ達は首を傾げるが、映像のツドイはその言葉に予想していた感じであった。
『もし連鎖開放が始まるとしたら何時頃でしょうか?』
一刃が少し考えた後言う。
「こーいった邪竜を倒していけば、遅くなる。だが、一度始まった現象は止まらないな。邪神竜の復活は、避けられないだろーぜ」
大きな溜息を吐いて、ツドイが言う。
『そうですか。すいませんがその神像に封印されている邪竜の始末はお願いして大丈夫ですか?』
「任せろ。なんだったら近くの奴等も退治してやるぜ。どうせ邪神竜の復活を先延ばしにしたいんだろうからな」
ツドイは首を横に振る。
『そこから先は、私達の世界の事です。貴方にお願いするのはそこに居る邪竜だけで結構です』
その言葉に少し困った顔をする一刃。
通信終了後、一刃は残りの三人に言う。
「ミガキ、お前は通路の方まで下がって結界張ってろ。見境の無い邪竜相手にするのに、お前達を庇っていたらきりが無いからな」
その言葉にマモルが槍を構えて言う。
「俺は戦う」
一刃が完全に呆れた顔をして言う。
「お前バカだろ、ドラゴンブレスも斬れないお前が、竜と戦えるか! とっととミガキが張る結界に隠れてろ!」
「なんだとバカにするな!」
いきりたつマモルをハジメがその前に立って言う。
「ここはカズバに任せましょう」
「しかし……」
反論しようとしたマモルだったが、ハジメの真っ直ぐな瞳に負けて下がる。
一刃は首から提げたアクセサリを掲げる。
『血の盟約の元、一刃が求める、戦いの角をここに表せ、竜角槍』
その手に一本の槍、竜角槍が握られる。
その一閃が神像を打ち砕く。
その瞬間、時空が割れて、神像の間に一体の巨大な竜が現れる。
『遂に封印が破られた。我等は定めに従い、この世界に終末をもたらさん』
その存在感にマモルの足から力が抜ける。
「……あんな化け物と、戦える筈が無い」
ミガキの結界もミガキの恐れから、弱まろうとしていた。
その時、ハジメがミガキの顔を見て言う。
「安心して、カズバが絶対倒してくれる。あの時と同じ様に」
その言葉に答える様に一刃が一歩前に出る。
「定めだかなんだか知らないが、俺はお前を滅ぼす。それが俺の仕事だからな!」
『愚かな。人間は竜に勝てないそれが世の理なり!』
次の瞬間、ハジメの村を襲った竜のそれとは比べ物にならないファイアーブレスが一刃を襲う。
マモルもミガキも一刃の死を確信した、当然邪竜もだが、次の瞬間邪竜の口が貫かれる。
「残念だが、竜角槍の前にはそんな攻撃は通用しないんだよ!」
口を縫いとめられた邪竜は、最大の攻撃方法であるブレスを封じられ上、呪文を唱えられない状態になった。
そして邪竜は、その絶対的な質量を持つ肉体で体当たりを行う。
一刃は余裕の笑みで答える。
「所詮は見境の無くなった竜、俺の敵じゃない」
人の口からは本来つむぎ出される事のない、竜の詠唱に邪竜は驚愕する。
『ドラゴンフレア』
一刃の呪文は導火線であった。
その導火線が結び付けられた先、竜角槍は、己が突き刺さった邪竜の力を強制的に奪い取り、全てを一瞬の内に燃やし尽くす炎に転じさせた。
その炎が消えた時、普通の竜の数倍の生命力を誇る邪竜すら死を逃れられない、ダメージを食らっていた。
余裕の態度で、竜角槍を抜く一刃。
「邪竜は力こそ強いが、その収束度は低いから、こっちで無理やり力を使ってやれるから、楽だ」
『お前は、霧流だな?』
その言葉に一刃が驚く。
「へー本能のままに生きる邪竜でも、俺の家名位は知ってるか」
『竜を滅ぼす為の存在。神は人に抵抗を望んでるようだな。しかし、邪神竜様の前では、例え霧流であろうとも滅びの定めは逃れられないぞ』
その言葉に一刃が笑みを浮かべて言う。
「運命なんて自力で切り開いていくもんだよ。例え相手が神であろうとな!」
『愚かな、所詮は人間か』
そう言い残し邪神竜は絶命した。
そして一刃はハジメ達と共に聖都ミヤロンに戻っていく。
聖都ミヤロンに近づくにつれ、一刃は、周囲を気にし始めた。
「カズバどうしたのですか?」
ハジメの問いに一刃は警戒しながら答える。
「七華に見つかる前に、次の仕事を見つけないといけないんだよ」
首を傾げるハジメ。
「ナナカさんって妹さんよね? どうして見つかる前に仕事探さないといけないの?」
その言葉に一刃が額の汗を拭いながら答える。
「お袋がしなくてもいいのに、あの化け物に頼みやがったんだ。俺はまだ死にたくないから、仕事を理由に、相手の空いている期間中、逃げ切らないといけないんだよ」
その言葉に一行が驚く、邪竜すら滅ぼす一刃がそれ程恐れる存在が居ることを。
「お兄ちゃん見つけたよ!」
その言葉に凍り付く一刃。
声のした方をハジメが見ると、そこには一刃の妹、七華が居た。
「仕事って、逃げて、あの人も色々忙しいんだからね!」
そう言って、近づいてくる七華に邪竜相手にも見せない真剣な表情になって一刃が言う。
「俺にはまだ仕事があるんだ。だから戻らない!」
その言葉に七華が微笑む。
「つまり連れ戻すつもりなら、力ずくで来いって事?」
その言葉に一刃が言う。
「物分りがいいじゃないか。俺はお前を振りきれさえすれば……」
「どうなるのかな?」
その声は一刃の後から聞こえた。
一刃が完全に硬直する。
「あちきじゃ、お兄ちゃんを連れ戻せないから、ついて来てもらいました」
笑顔の七華に最後の希望を込めて振り返る一刃。
そこには一人の少女が居た。
一刃と同じ黒い瞳で黒い髪で、髪を長いポニーテールにした童顔だが、何処か大人びた雰囲気をもつ少女。
その少女はハジメ達に向って頭を下げる。
「始めまして、あちきの名前は白風較って言います。十七歳の女子高生です。二人の母親から対人戦の鍛錬を頼まれています」
その言葉にマモルもミガキ、当然ハジメも不自然に思った。
十三だが、邪竜も倒す一刃に、こんな普通そうな少女が、何を教えると言うのか疑問に思ったからだ。
「ところで、一刃くん、七華ちゃんから聞いたんだけど、仕事の報酬として、女性の体を要求したって本当?」
その言葉に一刃は首を大きく横に振る。
「誤解だ! 俺はそんな事を要求していない」
それに対して七華が嬉しそうに言う。
「でもでも、相手がそう提案したのを断らなかったんだよね?」
一刃が七華を睨む。
較は一歩前に出ると一刃は数歩後退する。
「それで、まさかと思うけど本当にそんな事してないよね?」
「当然だ!」
それに対してミガキが呑気に答える。
「でも、必ず約束は守って貰うってハジメに言ってたよ」
較は大きく溜息を吐くと宣言する。
「まだ十三歳なのにそんな事ばっかり言うなんて、教育が必要ですね」
その言葉に一刃は死神を見て、そして切れた。
「俺はまだ死にたくない!」
そう言って竜角槍を構えると大きく振り上げる。
『ドラゴンスライサー』
竜すら一撃で切り裂く一刃の必殺の一撃、しかし較はいとも簡単に避けて一刃の顔面に掌を当てている。
「そんな大振りの技が通じると思った?」
一刃が涙目になる。
『バハムートブレス』
較のその声と共に、一刃は大回転しながら吹っ飛ぶ。
その様子をみてハジメ達は、目が点になる。
そんなハジメ達の側に行き七華が頭を下げる。
「お久しぶりです。お兄ちゃんがご迷惑かけています」
そんな七華にハジメが問いかける。
「あの人何者?」
七華が平然と答える。
「対人戦だったらあちき達の世界では、五本の指に入る人で、お兄ちゃんの天敵です」
「天敵って……」
ハジメの呟きに七華が答える。
「お兄ちゃんが小学生の頃、スケベ心からお風呂場覗いた後から、あまり手加減してもらえなくなったんです」
その言葉に、冷や汗を垂らすハジメ。
「手加減って、あの人は竜より強いの?」
それに対して少し悩んだ顔をしてから七華が言う。
「多分竜を倒す事だったらお兄ちゃんの方が上手だと思いますけど、まともに遣り合ったらお兄ちゃんじゃ、絶対勝てません」
そんな会話をしている後ろでは、
空中でなんとか体制を整えた一刃が、
『ドラゴンサンダー』
竜魔法で回避が困難の広範囲に広がる雷撃を放つが、較は慌てず騒がず、両手を組み振り下ろす。
『ウー』
次の瞬間空気中の水分が一気に氷になって、較にあたる筈の雷撃を全てが撹乱されるた上、雷撃で砕かれた氷が一刃の視界を塞ぐ。
咄嗟に一刃が竜角槍を振り上げて竜魔法を使う。
『ドラゴンエア』
突風が氷を排除するが、時すでに遅く、較の接近を許していた。
一刃は今までで最速の槍の突きを放つが、較はあっさりと槍の先を握り締める。
「術に頼り過ぎだよ。遅すぎ!」
較は槍を思いっきり振り、一刃を吹っ飛ばす。
一刃はここに来て、はっきり確認した。
「こんな人間の常識を無視した人間と、やりあえるか!」
そう言って、異世界に飛んで逃げようとした時、体が動かないことに気付く。
『メディーサ』
体中を較が操る髪に絡めとられた一刃は大泣きをしながら許しを請う。
「もう二度と報酬に、エッチな事を求めないから許してくれ!」
較はその一言で、手を止める。
「そうね若気のいたりって事もあるし、二度とそんな事をしないなら、普通の修行に戻すのも良いわね」
その時、七華が大声で言う。
「そーいえば、あの時、ハジメさん、お兄ちゃんに無理やり押し倒されてたよ。何もされなかった!」
較の視線の温度が一気に下がる。
「七華俺に恨みでもあるのか!」
そういう一刃に七華が一言。
「人が泣いている横で、爆笑するお兄ちゃんは、一度痛い目見た方がいいんだ」
この間の事を根に持っている七華が居た。
「やっぱり強烈な教育が必要みたいだね」
氷点下の微笑を浮かべる較の後に一刃は死神が鎌を振り上げるのを見た。
「よく生きてたよね」
較が七華と一緒に帰っていった後、生死の境を彷徨っていた一刃を看護するハジメに、付き添っていたミガキの言葉にマモルが頷く。
「しかし、世の中、上には上が居るな」
そんな二人にハジメが言う。
「二人とも、遊んでいないで手伝ってください」
そういうのは一人、邪竜が封印された遺跡の資料を探すハジメだった。
「でもさー、邪竜の封印された遺跡を見つけてどうするの、カズバは実家に帰ったみたいだけど、あの傷じゃ暫く使い物にならないでしょ?」
ミガキの言葉にハジメが答える。
「カズバは、ハチコさんの回復魔法で殆ど治ったそうです。一週間もすれば邪竜位倒せる様になると、ツドイ様にハチコさんが言ってました」
その言葉にマモルが溜息を吐く。
「あいつ等の世界には、化け物しか居ないのか?」
「人の世界の事を気にしてる余裕は無い見たいです」
ハジメは一刃が予測するまえからツドイが神託で告げられていた、邪神竜の復活に大きな不安を抱いていた。
そして不安は同時に今は治療中の一刃の存在を思い浮かばせる。
「またカズバに会えるかしら」