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DB一刃異世界奮闘記  作者: 鈴神楽
出会い編
2/14

小さな恋のストーリー

今回の話しは、こっちの世界に近い世界観を持った世界のお話しです

 男が居た。

 その男は財力も権力も有り、なんと言ってもカリスマがあった。

 その男はある重大な決断を迫られていた。

 男の目の前には、一つの大きな町があった。

 男はその町の権力者であり、守る責任を求められていた。

 そして男は、邪悪なる黒き竜より自分の娘を生贄に差し出せと脅迫されて居たのだ。

「娘を生贄に出すなんて出来ない。しかし私には町を守る責任が」

 苦悩する男、ダーラの前に一人の占い師が来て言う。

「天に三つの月が重なる時、己が真の願いを願えば、財と引き換えにその願い叶うだろう」

 その占い師は、報酬も受け取らず姿を消した。

 胡散臭い占い師であったが、ダーラは、藁にも縋る気持ちで、三つの月が重なる夜、願った。

「お金など全て失っても良い。だから娘、シーラの命を救って、町を竜から守ってくれ!」

 ダーラの真実の言葉でそう言った時、その者達は現れた。

「今回は、真面目に仕事するしかねえな」

 まだ十代前半のこの世界では珍しい黒髪の少年と

「真面目に仕事するのは、当たり前だと、あちきは思うよ」

 十代に達しているとは、思えない少女が。

「君達は何者だい?」

 驚くダーラの質問に少年、一刃が答える。

「俺は、一刃、ドラゴン退治屋だ。でこっちの乳幼児は、その見習いだ」

「見習いだけど、あちきは、七華は、乳幼児じゃ無いもん!」

 少女、七華が声を大きく反論する。

 その仕草の可愛さに思わずダーラは微笑む。

 自分の娘のシーラも又、七華と同じ年の頃、こんな可愛らしい事を言っていたからだ。

「おっさん、もしかしてロリコン?」

「お兄ちゃん変な事言わない!」

 一刃の失礼極まりない一言に、七華の至近距離からの回し蹴りが放たれるが、一刃が平然と受け止める。

 ダーラは首を横に振りながらも、いとおしげに七華の頭を撫でる。

 しかしその動作には一切の邪な感情が感じられず、七華は頬を軽く赤く染める。

「お兄ちゃんこの人良い人だよ」

 それに対して本気でどうでもよさ気に一刃が言う。

「関係ない。この男が報酬を払えるかどうかだけだ」

 そう七華に答えながら、一刃は自分より背が高いダーラを見下ろす様に言う。

「あんた、竜を退治してもらいたいんだろう?」

 一刃の言葉にダーラが頷く。

「ああ、しかしそんな事可能なのかい?」

 一刃は自信たっぷりの態度で答える。

「俺なら可能さ。まー報酬は必要だがな」

 そう言って、例の如く金塊を差し出す。

「この竜の気配からして大物だ、これと同じ金塊三百個用意しろ。七華は一応宝石の鑑定出来るから、宝石でも良いぞ」

「お兄ちゃん取りすぎじゃない?」

 もう懐いてしまった七華の言葉に、一刃は軽く頭を殴りながら言う。

「竜の気配くらい感じ分けろ、これは間違いなくダークドラゴンだよ。お前の見学無かったら、四百って言ってたぞ」

 ダーラは戸惑った、金塊三百、それはダーラにとっても全財産に近い金額で、それを作るにはこの家も手放す必要があった。

 そして何より目の前の兄妹を信用していいのかどうかを。

 そんな様子を察知して七華が慌てて言う。

「あの報酬は後払いで問題ありません」

 その必死な姿にダーラはこの二人を信じることにした。



 ダーラが事情を説明すると、一刃はあっさりと言う。

「それじゃあ、七華をその生贄の娘の代わりに置いておこう」

 その言葉にダーラは思わず立ち上がる。

「そんな事が出来る訳無い!」

 それに対して一刃が淡々と言う。

「七華も霧流の人間だ、例えダークドラゴンだって、そー簡単にはやられないから大丈夫だ」

「しかし、こんな幼い女の子を危険な目に遭わせるなんて出来ない!」

 その言葉に七華が少し困ったが嬉しそうな顔をする。

「大丈夫です。でも心配してもらえて嬉しいです」

 そう言って微笑む七華は本当に可愛く、ダーラも微笑み返すと七華は顔を真っ赤にする。

「ませガキ、異界の人間に惚れたって、面倒なだけだぞ」

 その言葉に七華が本気蹴りを放つが、一刃はあっさりかわす。

「ほっといて!」



 結局生贄の祭壇にダーラと一緒に身代りとして上がった七華。

「本当に大丈夫なのかい?」

 その心底心配している顔を見て七華は困ると同時に家に居る横柄な態度の男性人とは違う、男の優しさに顔を赤くしながら答える。

「大丈夫です。それよりダーラさんは奥さんは?」

 何か意味深な事を聞く七華。

 ダーラは少し哀愁を漂わせる。

「娘が小さい時にね」

「すいません」

 頭を下げる七華をダーラは優しい笑顔で許す。

 七華は少し躊躇した後言う。

「あのー仕事終っても又来て良いですか?」

 その言葉にダーラは頷く。

「喜んで」

 少し真を空いて続く。

「まー、仕事の報酬を払ったら今の家には住めないだろうけどね」

 その言葉に、七華は困った顔をするとダーラは慌てて否定する。

「あの竜を退治するんだ当然の権利だ。七華ちゃんが気にすることじゃないよ」

 その態度に更に七華の恋愛値があがったその時、天から黒き悪夢が舞い降りた。

『生贄の娘は何処だ?』

 その言葉に反射的に七華を背後に庇うダーラ。

 そんなダーラの大人の男の態度を嬉しく思いながらも、七華は首のアクセサリーを手に取る。

『指定した娘とは違う! 我を愚弄するとはいい根性だ!』

 その口周りに氷の結晶が発生する。

『ダークコールドブレス!』

 氷の塊を発生させる冷気の流れがダーラと七華に襲い掛かる。

『血の盟約の元、七華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀』

 七華は手のアクセサリーを刀に変えて、コールドブレスを竜牙刀の力でその冷気を受け流すが、ブレスの勢いだけで軽い七華の体は吹っ飛んだ。

 ダーラは咄嗟に七華の受け止めるが、勢いを殺せず、後の壁にぶつかる。

「大丈夫ですか!」

 七華は直ぐに立ち上がり、ダーラを心配するなか、ダークブルードラゴンは、止めの一撃を放とうとした時、その翼が斬りおとされる。

『グワー』

 あまりもの事に、言葉無くすダーラ。

 そしてダークブルードラゴンの背後から一本の槍、竜角槍を持った一刃が現れる。

「本当にドラゴンって馬鹿だな、こんな罠が掛っていそうな場所に普通に来て、警戒もしないんだからな」

 ダーラは心の中で反論する。本来竜はそんな物は要らないと。

『人間の分際で!』

 人では絶対発音できない呪文を唱え、ダークブルードラゴンは竜魔法を発動させる。

『ドラゴンアイスプレッシャー』

 一刃の周りの空気が急速に凍結していき、そのまま一刃を押しつぶそうとするが、一刃は平然と地面に竜角槍を突き立て唱える。

『ドラゴンフィールド!』

 竜の世界、それは竜の超常の存在だけが持つ、世界の理すら自分の意思で変化させる能力をさす。

 一刃の潜在する竜の血力で、竜角槍の元になった万年竜と同等な竜の世界が展開される。

 氷は決してその竜の世界に侵入することは出来ない。

 一刃が竜角槍の竜の世界を纏わり着かせて氷を砕く。

 それは、凶器と化してダークブルードラゴンを襲う。

『空に逃げれば……』

 咄嗟に空に逃げようとしてから、自分の翼が斬りおとされた事を思い出すダークブルードラゴン。

 氷の凶器はダークブルードラゴンを容赦なく切り裂いていく。

『たかが人間に何故だ?』

 その問いに答えるものが居た。

「奢れ、他者を踏みにじったからさ。踏みにじられた者は、踏みにじった奴を一生忘れない。俺たちはその思いを晴らすために力を手に入れたんだよ」

 竜角槍が天を指す。

『ドラゴンスライサー!』

 その一撃でダークブルードラゴンは崩れ落ちた。



「さー頑張って報酬をかき集めてもらおうか」

 横柄な態度の一刃にダーラが頷く。

 竜を倒してもらった時にもう覚悟は決めていた。

 家を売却する準備も進めている。

 そんな時、七華が石を抱えて入ってくる。

「ちょっとまって、この石って格安なんでしょ?」

 その言葉にダーラが言う。

「そうだけどそれがどうしたんだい?」

 七華はその石を見せて言う。

「この石はあちき達の世界ではダイヤモンドって言って、とても高価な石なんです」

 その言葉に一刃が驚いた顔をする。

「まさかそれ全部ダイヤモンドか?」

 七華が大きく頷く。

「でもそれは多少は綺麗な石で、炭鉱で普通に取れるが、普通の石炭と違って燃えるのが早すぎて使い辛く、うちの様な金持しか使わない」

 価値観の違いである。

「報酬はこれだけあれば大丈夫です」

 七華が微笑みながら言う。

「お袋に換金頼むと、余計な手数料取られるかなー。ここは直接マーケットを調査して」

 すでに儲けの計算に入る一刃。

 ダーラは嬉しそうに七華を抱きしめる。

「ありがとう七華ちゃん」

 七華は顔を真っ赤にして答える。

「あちき達も儲かるし、あちきここに又遊びに来たいから」

 ダーラは微笑み言う。

「ありがとう」

 その時、十代後半の美少女が入ってくる。

「ダーラ」

「シーラ」

 抱きしめあう二人。

 少し不機嫌そうな顔をする七華に、もうこっちの世界の事は全く気にもしてない一刃が言う。

「気にするな、親子の愛情表現だろ」

「そーだけど……」

 その時、ダーラが言う。

「これでお前と結婚できるな」

 その一言は七華の思考を停止させた。

「はいダーラ、私はいい妻になります」

 その言葉で七華が詰め寄る。

「あのーシーラさんて娘さんじゃないんですか!」

 ダーラは何あせっているのか解らない表情で言う。

「そうですが、娘と結婚するなんて当たり前の事じゃないですか?」

 シーラも頷き言う。

「父親が、妻を無くした時、子供を娶るのは極々普通の事ですよ。時たま、関係ない女性と結婚する不道徳な人がいますが、そんな前妻を蔑ろにする真似を良く出来るもんです」

 ダーラは強く頷く。

「そうだな。二人で愛情を注いで育てた娘なら、妻も喜んで祝福してくれるだろう」

 そんな会話に涙を目に溜める七華。

 笑い出すのを堪えながら一刃が言う。

「異世界にはうちらの世界ではどうしても納得出来ない常識ってもんがあるもんだよ」



 その後、泣き続ける七華を多めの報酬を嬉しそうに抱えながら連れかえる一刃であった。

一刃の妹の七華は、実は、このシリーズより前に始まったナナカレイって作品の主役です。

そっちでは、一刃は、強力なチートキャラとして出ていますが、おもいっきりのゲスト枠。

逆に七華は、こっちでは、レギュラーです。

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