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第三話 再びの日常……?

今回はまた日常回です。『Marginal Man』についての説明もあるので前回の内容を覚えていてくださると分かりやすいと思います。

 不良どもとの戦闘の翌日、午後になってようやく学校に来た俺に神威が話しかけてきた。

「やぁ、歩。昨日はデートだったのに災難だったね」

 昨日不良どもを倒した後の事情聴取に重ねて、今日の朝も引き続き事情聴取を警察でやるのはかなり骨が折れたので『効率主義』の俺は大変機嫌が悪い。

 神威の言葉を聞くと怒ってしまい、尚更疲れそうなので、釘を刺して黙らせておくか。

「空気塊を顔面にぶつけてやろうか?Fランクの威力でも鈍器の替わりくらいにはなるぞ」

「当たらなければどうということはない!それにしても、やっぱり警察の事情聴取とかで無駄にエネルギーを使わされてイライラしてるんだね」 わかっているならわざわざ絡みに来るなよ、と心の中だけで呟く。

 俺は神威の相手をやめて、昼休みの終わりまで寝るつもりだった、が……

「それとも、昨日の夜は寝ずに桜香ちゃんとイチャイチャしてたのかい?」

 神威の爆弾発言が聞こえたらしく女子がざわめくが、俺は無言で『Marginal Man』としての能力を発動。神威の顔面目掛けて空気塊をぶつけようとしたが、神威は再度、

「当たらなければどうということはない!」

名作アニメの名言を叫びながらあっさり回避しやがった。

 ちなみに神威も『Marginal Man』であり、能力は具現化系だ。具現化系は「想像を具現する」という離れ技をやってのけるため、概念系に次いで最強の能力と言われる。

 おそらく先程の回避は「○ュータイプ」能力を具現化したというところだろう。

 実力行使では神威を黙らせられそうにないと判断した俺は机から体を起こしながら発言した。

「あのなぁ……お前がそういうことを言うから、俺と桜香の関係が誤解されるんだからな。しかも、お前、俺が家で一人暮らしであることを言いふらしただろ。なんか『あの人についていくと襲われる』などという不名誉な噂がたってるんだぞ……」

「いいじゃないか。そのおかげで女子と話す機会が減って、『効率主義』な歩からすれば万々歳でしょ?」

 確かに神威の理論にも一理ある。

 元々俺に話しかけてくる女子なんて、桜香かクラス委員長くらいのものなので、無駄な噂ではあるがな。

 ただし、友人の理論に納得しながらも、俺の意見が無視されてる部分があるのでそこは指摘しておくことにする。

「確かに余計な会話が減るのは喜ばしいことだ。しかし、スルーされたようなのでもう一回言っておくが俺と桜香は男女の仲ではない。これに関しては桜香にも被害が及ぶからやめろ」

「そういう桜香ちゃん思いの発言も誤解を招くと思うけどなぁ」

 俺の指摘に対して、神威が更なる指摘をしてきた。

 実際コイツの言う通り、墓穴を掘ってしまった。

 我ながら不注意だったと思いながら、尚も抵抗を続けようとしたが、更なる乱入者の出現で、俺の文句は彼方へと忘却されることになった。

「学校に遅刻してきたと思ったら、早速のろけ話とはいいご身分ね」

 乱入者、クラス委員長である大倉神楽(おおくらかぐら)の声に、俺と神威は顔をあげた。

 そこにいたのは前述の通り、クラス委員長であり、長い黒髪に白い肌でキツイ目付きの純日本風の美人である、俺にとっての厄介者その2がいた(ちなみに厄介者その1は現在、教務室へ呼び出されている桜香)。

 その厄介者に突っかかられたことで元々ないに等しいテンションがマイナスゾーンに突入するのを感じながらも、俺は反論する。

「委員長、断じてのろけ話などはしてないぞ。俺は誤解を解くために尽力していただけだ」

「そう。そんなことより、何か忘れてない?」

 俺がエネルギーを割いた行動を「そんなこと」で片付けた委員長が質問してきた。

 しかし、何も思い当たらないのだが……

 俺が無言でいると、委員長がイライラした声音で補足してくれた。

「今日が部活の入部届け締め切りなんだけど?うちの学校が全員入部制なの忘れたわけじゃないわよね?」

「ああ、あれね……」

 俺は嫌なことを思い出してげんなりした。

 確かにうちの学校の生徒は必ず部活に所属しなければならない。

 しかし、『効率主義』の俺は部活などという、非効率的なことはしたくないのが現状だ。

 ただでさえ、桜香がトラブル体質なので帰り道は事件に巻き込まれ、その後には師匠の道場での修行が日課となっている俺には辛い話だ。

 なんとかはぐらかして、入部を避けなければ……

 効率的に日常を過ごすために、はぐらかすことに全力を尽くすことを決定した俺は委員長の顔を真っ直ぐ見据えた。

「確かに校則には部活動に入らなければならないとある。しかし、法律上俺には選択の自由があるわけで―」

「それ以前に学校の中のルールであり、学校に帰属する私達生徒が守らなければならないルールよ。そもそも法律違反ならとっくの昔に廃止されているでしょう?」

 さすがにお家が戒律に厳しい神道系。ルールには厳しいな。

 しかし、こちらも平穏な日常のために、断じて引き下がる訳にはいかない。

「だが、俺はルールを守るつもりはない。そんなやつにルールを守らせて意味があるのか?孔子曰く『法律によって指導し、刑罰によって統制すると、民は少しでも裏をくぐろうとして、恥ずる気持ちをもたない。徳によって指導し、礼によって統制すると、恥ずることを知り、正しい道をふみおこなう』だぜ。行き過ぎた律法主義は形骸化を招くということだ。キリストが批判したユダヤ教パリサイ派のようにな」

 「形骸化」を聞いた委員長の表情が一瞬悲しそうになった。

 かなり強引な理論でなんとか委員長を退けようとしたが、案外ここが攻め所か?

 光明を見いだしたと思った俺に、表情を元に戻して委員長が絶望的な一言を投げ掛ける。

「あんたが書かないと私が文句言われるのよ。なんなら勝手に書いて出す」

 つまり俺が頷かない限り委員長が俺に食い下がるということだ。

 委員長のしつこさと部活に入ることを天秤にかけた結果、委員長のご機嫌をとり部活に入ることにした。

「はぁ……分かったよ。入る……」

「じゃあ、これに入る部活と名前書いて」

 諦めた俺に満足したらしく、委員長は険しい表情をやや普通に戻しながら紙を渡してきた。

 全く、「気をつけろ。理想主義者は悪漢より始末が悪い」などと言っていたのは何の映画だったか。

 是非「律法主義者(誰とは言わない)は理想主義者(誰とは言わないぞ!)より始末が悪い」に直して欲しいものだ。

 思考を終えて仕方なく入部希望用紙なる地獄へのチケットに部活を記入しようとするが、あいにく部活名が思いつかない。

 まぁ、入部するなんて考えてなかったから、全く調べてないしな。

 しかし、あまりにも分からないので周りに助言を乞うことにした。

「委員長は何の部活入ってるんだ?」

「私は『Marginal Man』用の特別カリキュラム取ってるから部活は入ってないわ」

 ああ、そういえば委員長も能力者だったけか。

 『Marginal Man』には誰しもが覚醒する訳ではない。レベル差を無視しても覚醒割合は100人に1人くらいの割合だ。

 そして、せっかくの才能を無駄にしないようにというお国の配慮(実際には国際社会での優位性を出せる人材を育成するために)で、本人が望むなら特別なカリキュラムが受けられるのだ。

 しかし、それには大きな問題点がある。

「部活に入るのが嫌だったら特別カリキュラムを受ければいいじゃない」

 再び思案し出した俺に、委員長が素敵なマリー・アントワネット発言をしてきたので、つい反応してしまった。「あのですねぇ……マリー様……大気操作能力の特別カリキュラムというのは小難しい、物理数学をやった上にカオス理論もやらなくちゃならんのですよ……体を動かしているほうがましなのですよ……」

「そ、それはゴメン」

 恨みがましそうに言う俺に引いたらしく、委員長は一歩下がりながら謝罪した。

 そう、「特別カリキュラム」を受けることだけは断じてあってはならないのだ。

 理由は至って単純。

 能力ごとにカリキュラムが設定されている特別カリキュラムの中で「大気操作能力」のカリキュラムは最高難度に部類する。

 ただそれだけだ。

『Marginal Man』としての「物理系」能力のレベルは生まれつきの才能、頭の中のイメージの具体性、そして、扱う事象への理解度によって変わる。

 仮に俺がカリキュラムを受けると「大気操作」を行うために「大気」の動きを予測・演算しなければならない。

 しかし、それは様々な環境の影響を受ける為に、計算があり得ない程難しくなる。

 そして俺には大昔のラノベの銀髪超能力者のようなスパコン並の演算処理能力はない。

 以上のことから明らかに部活をとるほうが楽だと判断した俺は、入学当初に担任の姫路明里先生の勧めを蹴ったのを思い出した。

「じゃあ、桜香は何部に入るんだ?」

 なんとか面倒くさくない部活に入りたいので俺は質問を再開した。

 本人はいないので委員長が代わりに答えてくれた。

「楠さんは……意外にも『古典部』ね。案外緩い部活らしくて、本人は『多分幽霊部員化しちゃうかな……たまに剣道部にも顔を出すつもりだし』と言ってたわね」

「へぇ」

 これはいいことを聞いた。

 文化系の部活で、しかも幽霊部活化が許される部活らしい。

 よし、決まりだな。

「じゃあ俺も古典部に入る。はいよ」

「あっそ。はい、確かに受理したわ。お疲れさま」

「そっちこそお疲れさま。わざわざありがとうな」

「仕事だから気にしないで」

 紙に「古典部」の名前を書いて提出し、気が軽くなった俺は委員長にねぎらいの言葉をかけた。

 だが、委員長が自分の席に戻ったところで空気化していた神威が嬉しそうに言ったことを聞いて愕然とすることになった。

「古典部へようこそ!」

「は?」

「いや、古典部は僕、矢城神威が部長を務める新興の部活なんだよ。いや、部員が増えて嬉しいよ!」

 委員長も追っ払えたし、幽霊部員化が許される部活に入ったし、再び平穏で効率的な日々が戻ってくるな。

 と、思ったのだが、神様というやつは(いるか知らないが)俺をいじめたいらしい……

駄文をここまで読んで頂きありがとうございました。新キャラの委員長さんが登場です。ただし、次の話は再び桜香と歩中心なのでもう出番はないかもしれません(笑)

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