第一話*始まり
今日は、いつになく教室の中が騒がしかった。
そりゃあもう騒がしいどころじゃないよ。何が沸騰してるんだ?てな感じ。
今日はテストの日。
皆
「勉強してないよ」
って言うけどさ、してるんだよね、これが。
してないって言う人ほどしてるんだ。俺よく知ってる。
―――まあ、俺にとってみればそんな事はどうでもいい事で……
「あーあ。テストなんて別にどうでもいいいんだけどな」
俺はポツリと呟いた。
ま、受験生だから仕方ないだろうけど。
だからってこうもテストテストじゃ、気がめいっちゃうよ、ホント。
「何がそんなに不服なんだ?」
不服とかじゃなくてさ、テストなんていらないと思う。
つーか、ホント、学生の本分は勉強とか誰が抜かしやがったんですか…。
………………。
い、今どこから声がした?
俺は恐る恐る振り返った。
「ぎゃあああああああっ」
振り返ると同時に、俺は椅子ごと転んだ。
窓外に男が立って――いや、浮いていたんだから仕方ない。
転んだだけですんでよかったよ。普通なら気絶するぞ?
バコバコと高鳴っている心臓を抑えながら、俺は叫んだ。
「なっ?お前……誰だっ?」
「魔法使いだが?」
オイオイオイオイオイオイ……。
今時魔法使いなんか信じるやつがいると思うか?冗談もほどほどにしろよな。
浮いてるのだって、絶対何かトリックが……。
思ってからはっとする。
こ こ 4 階 だ っ た 。
しかも命綱とか付けてねええ!!!俺はどう反応すりゃあいいんだがあああ!!
頭を両手で抱えて悶絶する俺に、親友の高が声をかけてきた。
「良、どーしたんだよ?テストが嫌でいかれちまったのか?」
「いかれるかッ!窓見てみろ窓!」
「はあ?窓?」
「窓だっつってんだろ!M・A・D・O・窓だ!英語でウィンドウだッ!」
必死になって言う俺を、高は不思議そうにみた。
「ほ、本当に大丈夫……か?」
「大丈夫だったらこんなこと言うか!窓だ窓!!」
どうリアクションすればいいのかわから無くなったらしく、高はひょいと身をあげて窓を見た。
「いい天気だな」
「俺が言いたいのはそんな事じゃねえええ!!お前もっと他に気にする事があるだろーがっ!!!!!」
俺は高にとうっとケリを入れた。
「いや……。別に何も無いし。……お前大丈夫か?」
見えてねえ!?
俺はクラリと眩暈をおこした。
イヤイヤイヤイヤ待て待て。
現代科学に証明できねえモンはねえんだ。そう、たとえ人が宙に浮いていようと……。
俺はきどって机に手をつき、どうにか解明できねえもんかと頭を悩ませた。
「―――無理だあああああ!!現代科学もここまでかーッ!」
意味不明なことを言い出した俺は、高に見放されてしまった。
高は、
「頑張れよ」
と、俺の肩をぽんと叩き自分の席へ行ってしまった。
ヤメヤメー!俺を一人にしないでくれ高ぁぁぁ。現代科学のピンチっつーかまず俺のピンチなんだよぉぉぉ。
「面白いな」
高みの見物をしてやがった
「そいつ」
を、俺は青くなりながら見つめた。
「阿呆!誰が面白いんだよッ!お、お前さてはアレか!?スパイか!?はっ、密偵か!?それとも警察??」
「……普通の人間が命綱もなしに浮くと思うほど、お前は馬鹿者か?」
馬鹿者じゃねえよ!今からテストに挑もうとしてる受験生にそういうこと言うなっ!不吉な!!!
「てことは……お前エンジェルか??」
「魔法使いだといっているだろう……?」
だいたい翼が無いだろうが、とそいつは呟いた。
わ、分かってるけど……。
魔法使いなんて非現実的な話信じられるかぁぁぁ!!!
「……良君、変よね」
「ばかっ。みない方がいいわよ」
一部の女子が俺の事を噂している。
ああそうさ。俺は変さ。つーか変にもなるだろうよ!
何とでもいえコンチキショー!!!
「俺は変じゃねえ!変人だ!文句あるかこの野郎!」
きっと睨みつけながら、俺は言った。
俺の悪口をたたいていた女子は、コソコソとどこかに隠れていった。
あーあ、変人確定だよ。ふふふふふ。
――その日のテストは多分、史上最悪の点数だろう。