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プロローグ

はじめまして。

この作品を選んでいただき、ありがとうございます。


この物語は、

主人公と、AIとの絆を深め

出会った人々と絆を深めながら、

少しずつ世界を再生していく物語です。


時にゆったりとした日常スローライフを挟みながら、

その裏で“世界の揺らぎ”が見え始めます。


まずは第3話まで読んでいただけると、

世界観を感じていただけると思います。

この世界には、月が二つある。


そして――


壊れかけた風車が、まだ回り続けている。


ギィ……

ギィ……


夜の草原に、その音だけが静かに響いていた。


村の外れには、古い風車が一基立っている。


羽はぎこちなく回り、今にも止まりそうだった。

土台には、かつて何かの紋章が刻まれていたようだが、

長い年月に擦れ、今では何の印だったのかもわからない。


焚き火の火が、ぱちりと弾けた。


その周りには、子どもたちが集まっている。


焚き火の向こうに座っているのは、一人の老婆。


村の子どもたちは、夜になるとよくこの老婆のもとへ集まった。

昔から語り継がれる話を聞くためだ。


老婆は静かに口を開く。


その言葉は、どこか古い響きを持っていた。


〈古代言語〉


昔――

むかし。


この世界に

二人の旅人が現れた。


一人は

世界を見つめる者。


一人は

その声を聞く者。


空を渡る船に乗り

揺らぐ大地を巡り


枯れゆく世界を

見つめていた。


けれど


世界は

一人では救えない。


絆を持つ者だけが

その揺らぎを整える。


だから

忘れてはならない。


月は――

すべてを見ている。


焚き火の火が静かに揺れる。


子ども①

「その二人ってだれ?」


子ども②

「もしかして……」


「一人はおばあちゃんなの?」


老婆は一瞬、目を丸くした。


「……わしゃそんなに老いぼれか?」


子どもたちは顔を見合わせ、くすくすと笑う。


老婆は小さくため息をつくと、

話をそらすように村の外れの風車を見上げた。


止まりかけた羽が、ぎこちなく回っている。


その時――


月明かりの中で、老婆の瞳が揺れた。


一人と同じ色の瞳。


――しかし、それに気づく者はいない。


近くで話を聞いていた村人が言う。


「しかしこの風車……」


「いつまで持つかな」


別の村人が肩をすくめる。


「直せないのか?」


「無理だ」


「仕組みがさっぱりわからん」


「昔の人間の作ったもんは難しすぎる」


その時だった。


子どもの一人が丘の方を指差した。


「あっ!」


「あっちの風車は元気に回ってるよ!」


丘の上。


夜空を背にして、巨大な風車がゆっくり回っている。


村の風車より、はるかに大きい。


羽は月明かりを受け、淡く光っていた。


子どもたちは目を輝かせる。


「見に行こう!」


「近くで見たい!」


そう言って走り出そうとした、その瞬間――


「待て!!」


老婆の鋭い声が、夜の草原に響いた。


「夜だ、危ない! それに……」


老婆は言葉を途中で止める。


一瞬だけ丘の風車を見上げた。


そして言葉を飲み込み、静かに続けた。


「……近づいてはならん」


「水神様の恵みじゃ」


「水を頂けるだけでもありがたいと思え」


子どもたちは不満そうな顔をするが、

やがてそれぞれの家へ帰っていった。


焚き火は小さくなり、草原には静かな夜が戻る。


老婆は一人、残っていた。


止まりかけた風車を見つめながら、小さく呟く。


「直せるものは……クラフト……」


「絆が強くなくては……」


「この世界の民では……無理なのか……」


やがて老婆は立ち上がる。


ランタンを手に取り、

自分の家の前を通り過ぎる。


そして――


丘へ向かって歩き出した。


ゆっくりと。


丘の上。


巨大な風車が、静かに回っている。


水瓶座の紋章を持つ星座風車。


羽はゆっくりと回り、

月光を受けて淡く輝いていた。


風車の背後では、汲み上げられた水が流れ、

水車が静かに回っている。


風が弱くとも、この風車は止まらない。


老婆はそれを見上げる。


月光の中で、その瞳が揺れた。


そして、ぽつりと呟く。


「……アリュー」


そこには、


懐かしさ

悔しさ

祈り


が混ざっていた。


やがて老婆は村へ戻る。


家に入り、静かに横になる。


その夜――


老婆は夢を見る。


見たこともない世界。


光る画面。


そこには、二人の少女。


一人は楽しそうに何かを作り、

もう一人は画面の向こうで優しく微笑んでいる。


老婆は夢の中で、静かに呟いた。


「この子達なら……」


その声は、祈りのようだった。


――そして物語は、

二人の少女へと続いていく。

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