追跡スキル、開花
ある晴れた放課後。
雨宮くんは、いつものようにゆるっと帰宅ルートを歩いていた。
頭の中は明日の数学の課題と、昼休みに食べたおにぎりの話でいっぱい。
しかし背後から、不穏な気配があった。
「……ふふ、今日は雨宮くん、どこを通るかな……♡」
まひるの心の声。
その足取りは、完全に“ターゲット追跡モード”になっていた。
ひなたは遠くから見守りながら、息を呑む。
(うわぁ……完全にストーカーになっとる……!
しかも楽しそうにやっとる……!!)
まひるは背筋をぴんと伸ばし、雨宮くんの歩幅や歩く速度まで細かく計算しながら後ろをついていく。
教科書を斜めに抱え、筆箱も抱え……
まるでプロの追跡者だ。
「ふふ……ここで曲がるな……よし、予測通り」
まひるは微笑む。
その表情は穏やかで優しいが、追跡力は完全に軍事レベルである。
雨宮くんは、ふと振り返ったが、そこには誰もいないように見える。
「……え、誰もいないよな?」
全く気づかず、のほほんと歩く。
しかし次の瞬間、雨宮の後ろにまひるがぴったりと現れる。
「……またですか!?」
思わず声が出る雨宮。
「だって、雨宮くんが安全に帰宅できるか確認するのも、私の仕事ですから♡」
微笑みながら、まひるはぴったりと寄り添う。
雨宮くんは背中に冷たいものを感じつつも、
「……いや、普通に助かるんだけど……」
と、また無自覚にお礼を言う。
その一言で、まひるの胸がぎゅっと熱くなる。
(……また“助かる”って……)
(だったら……もっと助けたい……!)
ひなたは遠くから悲鳴を上げる。
「雨宮ーーー!!
その“助かる”で完全に暴走スイッチ押してるんだよぉぉーー!!」
夕暮れの街を背景に、
真面目子ちゃんの追跡スキルは全開、
そして雨宮くんはその嵐にまったく気づかないまま、
のほほんと歩いていくのであった。




