机ピカピカ事件、正式覚醒⟡.·
昼休み。
教室にはお弁当のいい匂いと、適度な喧騒。
しかしその中でひときわ視線を集める場所があった。
雨宮の机。
……今日もピッカピカである。
いや、朝よりツヤ増してない?
「ねぇ、誰かこの机触った?」
「なんで食堂みたいに光ってんの……?」
「反射で目痛いんだけど!」
クラスは騒然。
雨宮はお弁当を開けながら肩をすくめた。
「いやー、俺も知らん。なんか朝来たらこうでさ……」
そのとき、ひなたの視線が鋭く動いた。
(……まひる)
まひるは、雨宮の机の前で静かに立っていた。
目はキラ……というより、ウルウルうれしそうに輝き、
ハンカチで机をキュッキュッと磨いている。
「二階堂!? 今磨いてた!?」
雨宮が慌てて声を上げる。
まひるは、はっとして振り向いた。
「……すみません。
雨宮くんの机、少しだけ……指紋がついていたので……」
「いや、つくよ!? 生きてるから!!」
ひなたがすぐ飛び込んでくる。
「まひる!! お弁当食べて!! 机はもう充分キレイだから!!」
まひるは申し訳なさそうにハンカチを畳む。
「……ひなた。わたし、そんなに変でしょうか?」
ひなたは友として心配し、
しかし現実を優しく告げる。
「変というか……
真面目すぎて……ちょっと頑張りすぎてるというか……
いや、めちゃくちゃ変だよ!? 雨宮の机磨いてるよ!?!?」
まひるは、胸の前でそっと手を組んだ。
でもその横顔は、どこか幸せそう。
「雨宮くんは、いつも困っているので……
少しでも助けられたら……」
(ほらきた……! “助けたい”スイッチ!
いやまひる、それ助け方ちょっと違うんよ……!)
だが当の雨宮は
まひるの気遣いを純粋に受け取ってしまう性格だった。
「まあ……ありがとう。
俺、机汚れすぎだし……助かるよ」
その瞬間。
まひるの瞳がふわぁ……っと柔らかく光る。
(また……言ってくれた……)
(助かるって……)
(だったら……もっと……もっと……)
ひなたは見てしまった。
親友の中で何かが膨れ上がる危険な気配を。
(バカ雨宮ーーー!! “助かる”って言うなぁー!!
そのワードがまひるの覚醒ワードなんだよぉー!!)
雨宮はそんな事情を何ひとつ知らず、
のんびり唐揚げを食べている。
まひるは顔を赤らめ、
そっと雨宮の席に寄り添うように立つ。
「……雨宮くん。
困ったことがあったら、何でも言ってくださいね?」
「え、あー……うん?」
この時まだ、
雨宮はその一言の重さを理解していなかった。
クラスは静まり返り、
ひなただけが悲鳴を上げていた。
(やっぱりまひる……
恋すると重いタイプだったかぁぁぁ……!!)




