観察される日常
職員室での用事を済ませた雨宮くんとまひるが教室に戻ると、教室の空気は少しだけいつもと違っていた。
机の角度は揃い、筆箱やノートは整列し、消しゴムまで規則正しく並んでいる。
まるでクラス全体が“まひるの観察下”にあることを示すようだった。
「……あれ、また整ってる……?」
雨宮くんは首をかしげる。
しかし、その不思議さに気づくのはまだほんの一部だけで、ほとんどのクラスメイトは何も言わない。
ひなたは後ろの席で頭を抱える。
(またか……完全に日常侵略モードだ……
でも……笑える……いや、怖い……!)
まひるは教室をぐるりと見渡し、微笑む。
「みんなも快適になったはずです♡
雨宮くんが困らないようにするのが私の役目ですから♡」
その一言で、クラスメイトたちは微妙に顔を見合わせる。
「快適……なのか……?」
「いや、これは……監視……?」
ざわざわと囁き合い、教室の空気は静かに混乱していた。
雨宮くんは少しずつ、自分が日常侵略の中心にいることに気づき始める。
「もしかして……二階堂がずっと……俺のこと……?」
その瞬間、まひるはにっこり笑い、ペンの位置やノートのページまで整えながら答える。
「ええ、だって雨宮くんが快適なら私も嬉しいですから♡」
ひなたはため息混じりに呟く。
(友情と愛情と恐怖が一緒に襲ってくる……
このクラス、完全に巻き込まれてる……)
しかし、まひるの観察は止まらない。
消しゴムの角度、椅子の高さ、窓際の光の入り方まで計算し、教室全体を“雨宮くん専用快適空間”に変えていく。
クラスメイトたちは笑いと困惑を交互に感じながら、その現場を見守るしかなかった。
「……もう慣れちゃったな、この状況」
雨宮くんは少し笑いながら呟く。
まひるのメンヘラ全開のサポートは、クラスに小さな嵐を巻き起こしつつも、
どこか日常の一部になっていくのだった。




