クライマックス・日常侵略の極み
夕暮れが教室を黄金色に染める中、白石真尋――通称まひるの“助けたい暴走”は、ついに日常侵略の頂点を迎えようとしていた。
机、椅子、筆箱、消しゴム、教科書……すべてが完璧に整えられ、まるで小さな管理国家のような空間だ。
「雨宮くん……ここも少し整えたほうが……♡」
まひるはノートの角度を微調整し、ペンの位置まで完璧に揃える。
その無邪気な笑顔は、見ているだけで癒される……かと思えば、クラス全員には軽い恐怖が漂っていた。
ひなたは後ろの席で顔面蒼白になり、ため息混じりに呟く。
(もう……止められない……
でも……笑える……いや、恐ろしい……!!)
雨宮くんはまだ無自覚に、にこやかに感謝する。
「ありがとう、二階堂……助かるよ」
その一言で、まひるの胸は熱く高鳴る。
(……助かった……♡
だったら……もっと助けたい……!)
しかし、今日のクラスはまひるの暴走によって、まるで小さな地雷原状態になっていた。
プリントは順番通りに揃えられ、机の角度は完璧に補正され、消しゴムや定規も規則正しく並べられている。
「え、これ……俺の席……?
なんか……自分のものを触れない……?」
雨宮くんは戸惑い、周囲のクラスメイトも小声で囁く。
「いや、触ったら怒られるんじゃ……?」
「完全に日常侵略だ……!」
教室全体が笑いと混乱に包まれる。
まひるはそんなことはお構いなし。
「みんなも快適になったはずです♡
雨宮くんが困らないなら、私も嬉しいですから♡」
その言葉に、ひなたは壁にもたれ、頭を抱える。
(友情と愛情と恐怖が入り混じる……
このまま学校全体が巻き込まれるんじゃないか……!)
さらに、まひるの暴走は止まらない。
教室の隅に落ちているゴミを拾い、窓のカーテンの角度まで整える。
雨宮くんの机の下まで覗き込み、靴の位置やカバンの角度も調整。
「完璧……♡」
もはやこれは“助けたい”の域を超え、クラス全体を巻き込む“愛の侵略”だ。
雨宮くんはその無自覚さに困惑しつつも、どこか嬉しそう。
「……でも、確かに快適だな……ありがとう、二階堂」
まひるはその言葉に頬を赤らめ、胸をドキドキさせる。
(……もっと助けたい……♡
これが……愛……?)
夕陽に照らされた教室の空気は、笑い、混乱、少しの恐怖、そして微妙な胸キュン感で満たされていた。
まひるのメンヘラパワーは、まだまだ止まることを知らない。
日常侵略の極みを極めつつ、教室は今日も独特の空気に染まっていく。




