小さな事件、巻き込まれるクラス
ある日の放課後、教室はいつもより静かだった。
しかし、その静けさは一瞬にして破られる。
「わっ……!」
誰かが掃除用具を倒してしまい、床に小さな水たまりができてしまったのだ。
その水たまりは、雨宮くんがうっかり踏んだら確実に滑るレベル。
その瞬間、まひるの目が光る。
「……雨宮くんが滑ったら大変……♡」
立ち上がると、彼女は小走りで水たまりに駆け寄る。
雑巾を取り出し、丁寧に拭き取る手は、まるで儀式のように完璧だ。
ひなたは後ろの席から顔面蒼白で見守る。
(普通なら、ちょっと拭くだけで終わるはずなのに……
まひる、どうしてここまで必死なの……!?)
しかしまひるは止まらない。
机や椅子の位置まで微調整し、教室全体の安全性と快適さを最大化。
「よし……これで完璧……♡」
その笑顔は無邪気そのものだが、クラスメイトには圧迫感がすごい。
雨宮くんはまだ無自覚で笑顔。
「ありがとう、二階堂……助かるよ」
その一言で、まひるの胸の中に熱い炎が灯る。
(……助かった……♡
だったら……もっと助けたい……!)
事態はさらにエスカレートする。
まひるは床のちょっとした汚れまで発見すると、雑巾で拭き、机の上のプリントを整理する。
「こ、こりゃ……教室が全部整うまで止まらないパターンだ……!」
ひなたは思わず後ろで手を握りしめる。
さらに副委員長の桜井も巻き込まれ、
「まひる先輩……やりすぎです……!」
と止めようとするが、まひるは無邪気に首をかしげる。
「雨宮くんが安全で快適なら、誰も困りませんよね?」
クラスメイトたちは次第に混乱し、机や椅子を動かされるたびにザワザワ。
廊下から見ていた後輩女子も、「え、これ何の祭り……?」と困惑する。
そのとき、雨宮くんが机の前に戻ってくる。
「わぁ……全部整ってる……ありがとう、二階堂」
まひるの胸は再び高鳴る。
(……助かった……♡
もっと……もっと助けたい……!)
小さな事件が、瞬く間に“まひるの助けたい暴走ショー”へと変貌した。
ひなたは壁にへばりつき、心の中で叫ぶ。
(やめて……もう誰も巻き込まないで……!!)
放課後の教室に響くのは、まひるの完璧すぎる手際と、巻き込まれたクラスメイトの困惑。
真面目子ちゃんの小さな事件対応は、
日常をギャグとカオスで染め上げる序章にすぎなかった。




