放課後観察の極意
放課後、教室にはもうほとんど生徒はいない。
しかし、まひるだけは一人、雨宮くんの席をじっと見つめていた。
「ふふ……今日も完璧に整ってる……」
彼女の目は輝き、心臓の奥が熱くなる。
昨日までの“ちょっとした手助け”は、もう過去の話だ。
今日のまひるは、完全に観察&サポートモード全開。
ノートの角度、鉛筆の向き、椅子の位置……
すべてが、雨宮くんのためだけの最適配置になっていた。
「……これで、授業も効率よく受けられるはず……♡」
手を合わせる仕草は、まるで祈りのよう。
ひなたは背後から息をひそめ、顔面蒼白。
(……まひる……もう完全に危険域……!
しかも本人、幸せそうにニコニコしてる……!)
雨宮くんはといえば、まだ授業中のまどろみを引きずっているようで、
教室に戻ってくると「お、机整ってる……ありがと」と、まひるに軽くお礼を言う。
その一言で、まひるの心は再び膨れ上がる。
(……助かったって……言ってくれた……♡)
(だったら……もっと助けたい……!)
まひるは今日も、雨宮くんのために、机の細部まで観察し、微調整を始める。
「これで完璧……♡」
ひなたは心配しすぎて、壁にへばりつきながら呟く。
「……友達として助けたいけど、これはもう暴走の前兆だよ……!
どうすんの、これ……!!」
教室の隅で、まひるは微笑みながら鉛筆を整え続ける。
放課後観察の極意──
それは、普通の優等生の姿を完全に超越した、
“真面目子ちゃんのメンヘラ開花予行演習” だった。




