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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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99/109

第99話 午後三時(※当社比)、ちゃんと今日 ― コメット、ギリギリ現在形 ―

予定は、だいたい予定通りにいかない。

時計は正確でも、生活はそうじゃない。


少し遅れて、少し焦って、

それでも「今日」はちゃんと今日として存在している。


〈コメット〉の午後三時(※当社比)は、

そんな曖昧さを抱えたまま、今日も静かに回っています。


〈セクター7〉、午後3時(と、表示されている)。


カフェ〈コメット〉の時計は、

今日もきちんと午後三時を指していた。


……本当に午後三時かどうかは、

もう誰も深く考えないことにしている。


リクは豆を挽き、

ミナは抽出温度を確認し、

カナは端末を閉じ、

ジロウはなぜか小走りで店内を一周して戻ってきた。


「……今日、出したよな?」


リクが、豆を挽きながらぼそっと言う。


「何を?」


「今日を」


一瞬の沈黙。


ミナの光が、

ほんの少しだけ遅れて点滅した。


『確認します。

 本日の更新ログ……』


ジロウが身構える。


「……あります?

 ありますよね?」


『……あります。

 ただし、想定時刻から——』


「何時間?」


ミナは一拍置いてから、静かに答えた。


『……気にしない方が、

 この店らしいと思います』


カナが即座に手を振る。


「いいのいいの!

 まだ今日だから!」


「そうだ。まだ今日だ」


リクはあっさり言った。


「宇宙的には誤差だろ」


「その理屈、雑すぎません?」


「雑だが強い」


ミナは少し考えたあと、記録を続ける。


『本日の状態:

 “ギリギリだが、未超過”』


ジロウが胸をなで下ろす。


「セーフ判定っすね……」


「完全アウトより百倍いいわ」


ドリップが始まる。


ぽと……

ぽと……


そのリズムは、

朝でも夕方でもなく、

ただ「今」の速度だった。


ミナが静かに付け足す。


『時間は正確ではありませんが、

 現在は存在しています』


「十分だな」


リクはそう言って、カップを差し出した。


午後三時(※当社比)。

朝七時のはずだった時間は過ぎ、

夜になりかけている。


それでも今日は、

ちゃんと今日のままだ。


ミナが記録を確定する。


『今日の香りの記録——

 “遅れたけれど、今日だった一杯”。』


窓の外で、地球が回っている。

日付が変わる直前でも、

まだ同じ一日として。


今日も――

晴れ、ときどき地球だ。


遅れても、忘れかけても、

完全に過ぎてしまわなければ「今日」は今日。


この回は、

更新ギリギリ、判断雑め、でも不思議と成立してしまう

〈コメット〉らしい一日を、そのまま記録しました。


時間に追いつくより、

コーヒーが冷めない方が大事な日もある。


今日も――

晴れ、ときどき地球だ。


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