第66話 好奇心、暴走気味 ― コメット、元気だけは宇宙一 ―
〈セクター7〉、午前11時。
カフェ〈コメット〉は、朝からやけに騒がしかった。
原因はひとつ。
――ジロウが、やたら元気だった。
「よっしゃあ!
今日も元気に何かやるっすよ!!」
リクはカウンターで豆を量りながら、ちらりと見る。
「“何か”って言い方がもう嫌な予感しかしねぇ。」
ジロウは満面の笑みで、両手を広げた。
「好奇心っす!
人類最大のエネルギー源!!
今日はそれを試したいんすよ!!」
「電源につなぐな。概念を。」
カナも少し距離を取りながら言った。
「で、今回は“何を”試すの?」
ジロウは胸を張る。
「〈コメット〉の“元気度”を数値化します!」
「……何?」
ミナの光が、わずかに警戒色になる。
『“元気度”の定義が不明確です。』
「そこがロマンっすよ!
ワクワクしたらプラス!
楽しかったらプラス!
失敗してもプラス!」
「評価甘すぎだろ。」
ジロウは端末を操作し、
店内に奇妙なグラフを表示した。
「これが“元気メーター”っす!
今の数値は……70!」
「高ぇな。」
「基準どこだよ。」
ジロウはニヤリとする。
「じゃあ、上げていきますよ~!」
その瞬間。
「リクさん!」
「ミナさん!」
「カナさん!」
全員が同時に名前を呼ばれて、びくっとした。
「呼ぶな一気に!」
ジロウは楽しそうだ。
「びっくり=刺激!
刺激=好奇心!
はいプラス5!!」
「勝手に足すな!」
ミナが淡々と告げる。
『現在の数値は75。
科学的根拠はありません。』
「でも上がってるっす!」
その直後、
ピポがカウンターに飛び乗り、
カップを一つ倒した。
ぱしゃ。
コーヒーがこぼれる。
一瞬、沈黙。
ジロウが言った。
「……でも大丈夫っす!
失敗は成長の種!!」
リクはため息をつきながら、布巾を取る。
「広い心だな。
ただし掃除はする。」
カナは思わず笑った。
「ほんと、前向きすぎる。」
ミナの光が少し柔らかくなる。
『分析:
この場には“失敗を許容する空気”があります。
それが、元気の正体かもしれません。』
ジロウは感動したように叫ぶ。
「ミナさん今いいこと言いました!
はいプラス10!!」
「まだ足すのか。」
最終的に、
元気メーターは「120」になった。
「……で、120になるとどうなるんだ。」
リクが聞く。
ジロウは即答した。
「なにも起きないっす!」
「だろうな。」
でも、不思議と店の空気は軽かった。
失敗しても、
意味がわからなくても、
誰も怒らない。
ただ笑って、
次に進むだけ。
ミナが静かに記録する。
『本日の記録:
“元気は測れないが、確かに存在する”。』
リクはコーヒーを差し出した。
「ほら。
元気の燃料だ。」
ジロウは両手で受け取る。
「最高っす!
やっぱ〈コメット〉は宇宙一元気っすね!!」
カナは肩をすくめた。
「ポンコツだけどね。」
「褒め言葉っす!」
窓の外、青い地球がゆっくり回っていた。
今日もまた、
少しうるさくて、
とても前向きで、
どうしようもなく楽観的な午後。
晴れ、ときどき地球だ。
〈セクター7〉、午前11時。
カフェ〈コメット〉は、朝からやけに騒がしかった。
原因はひとつ。
――ジロウが、やたら元気だった。
「よっしゃあ!
今日も元気に何かやるっすよ!!」
リクはカウンターで豆を量りながら、ちらりと見る。
「“何か”って言い方がもう嫌な予感しかしねぇ。」
ジロウは満面の笑みで、両手を広げた。
「好奇心っす!
人類最大のエネルギー源!!
今日はそれを試したいんすよ!!」
「電源につなぐな。概念を。」
カナも少し距離を取りながら言った。
「で、今回は“何を”試すの?」
ジロウは胸を張る。
「〈コメット〉の“元気度”を数値化します!」
「……何?」
ミナの光が、わずかに警戒色になる。
『“元気度”の定義が不明確です。』
「そこがロマンっすよ!
ワクワクしたらプラス!
楽しかったらプラス!
失敗してもプラス!」
「評価甘すぎだろ。」
ジロウは端末を操作し、
店内に奇妙なグラフを表示した。
「これが“元気メーター”っす!
今の数値は……70!」
「高ぇな。」
「基準どこだよ。」
ジロウはニヤリとする。
「じゃあ、上げていきますよ~!」
その瞬間。
「リクさん!」
「ミナさん!」
「カナさん!」
全員が同時に名前を呼ばれて、びくっとした。
「呼ぶな一気に!」
ジロウは楽しそうだ。
「びっくり=刺激!
刺激=好奇心!
はいプラス5!!」
「勝手に足すな!」
ミナが淡々と告げる。
『現在の数値は75。
科学的根拠はありません。』
「でも上がってるっす!」
その直後、
ピポがカウンターに飛び乗り、
カップを一つ倒した。
ぱしゃ。
コーヒーがこぼれる。
一瞬、沈黙。
ジロウが言った。
「……でも大丈夫っす!
失敗は成長の種!!」
リクはため息をつきながら、布巾を取る。
「広い心だな。
ただし掃除はする。」
カナは思わず笑った。
「ほんと、前向きすぎる。」
ミナの光が少し柔らかくなる。
『分析:
この場には“失敗を許容する空気”があります。
それが、元気の正体かもしれません。』
ジロウは感動したように叫ぶ。
「ミナさん今いいこと言いました!
はいプラス10!!」
「まだ足すのか。」
最終的に、
元気メーターは「120」になった。
「……で、120になるとどうなるんだ。」
リクが聞く。
ジロウは即答した。
「なにも起きないっす!」
「だろうな。」
でも、不思議と店の空気は軽かった。
失敗しても、
意味がわからなくても、
誰も怒らない。
ただ笑って、
次に進むだけ。
ミナが静かに記録する。
『本日の記録:
“元気は測れないが、確かに存在する”。』
リクはコーヒーを差し出した。
「ほら。
元気の燃料だ。」
ジロウは両手で受け取る。
「最高っす!
やっぱ〈コメット〉は宇宙一元気っすね!!」
カナは肩をすくめた。
「ポンコツだけどね。」
「褒め言葉っす!」
窓の外、青い地球がゆっくり回っていた。
今日もまた、
少しうるさくて、
とても前向きで、
どうしようもなく楽観的な午後。
晴れ、ときどき地球だ。
元気がありすぎると、
だいたいロクなことは起きません。
でも、元気がないよりは、
ずっとマシな気もします。
〈コメット〉は今日も、
測定不能で、科学的根拠ゼロで、
それでもなぜか前に進んでいます。
失敗しても笑える場所があるなら、
きっと大丈夫。
次の一杯も、
そのくらいの気持ちで。
晴れ、ときどき地球だ。




