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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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第64話 ジロウ、ひとり番 ― 静けさと事故は紙一重 ―

今日は 完全ジロウ単独回。

コメットをひとりで守る男の奮闘記です。


静けさの中って、意外と事件が多い。


〈セクター7〉、午後1時。


コメットには、

ジロウひとりしかいなかった。


「……静かっすねぇ。」


誰も返事しない。

今日はリクもカナもミナも別ステーション行きで留守番だ。


ジロウはカウンターを磨きながら自信満々に言った。


「ま、任せてくださいよ。

 店番くらい余裕っす。

 トラブルなんて――」


――ボンッ。


天井裏から、狙ったように煙。


「……言い切ってないのに!!!」


脚立に駆け上がり天井を開けると、

配線がひとりでに“パチパチ”火花を散らしていた。


「ちょっ……誰っすか、勝手にショートするの!!」


返事はない。当たり前だ。


なんとか配線を押さえて絶縁し、

ほっとした瞬間。


――ゴロゴロゴロ……


床下で地鳴り(のような音)。


「え、やめて! 今日だけは勘弁してくださいって!」


床パネルを開けると、

保温パイプが“ぷしゅーっ”と湯気を噴出。


顔に直撃。


「熱っっつ!!! なんで今日に限って全員留守なんすかぁぁ!!」


泣きそうになりながらも必死でパイプを閉じる。


静かな店内に荒い息だけが響いた。


それでも、

ジロウはうつ伏せから起き上がり、

少しだけ胸を張った。


(……俺ひとりでも、コメットは守れたっす。)


カウンターに戻り、

自分用に一杯淹れる。


ぽと……ぽと……

静かな店に、その音だけが優しく響いた。


「……たまにはこういうのも悪くないっすね。」


カップを置いた、その瞬間。


――ガチャッ。


ドアが開く。


リクが先頭で入ってきた瞬間、

ジロウの全身の状況(焦げ・濡れ・煤)が視界に入る。


リクは一拍置いて、

ぼそっと言った。


「……お前、留守番で何と戦ったんだ。」


カナも絶句。


ミナは光を淡く震わせながら言った。


『ジロウ……あなた……

 “たったひとりで三つも事故対応した”のですか……?』


ジロウは誇らしげに胸を張った。


「はいっ! 一人で全部、片付けました!」


リクはしばらく見つめてから、

ぽつりとつぶやいた。


「……よくやった。

 でも明日、全部再点検な。」


「なんでぇぇぇぇ!!」


カナは吹き出し、

ミナは優しく光った。


『ジロウ、お疲れさまでした。

 あなたの働きで——

 “今日もコメットは無事でした”。』


ジロウは照れながら頭をかく。


「……ま、任せてくださいよ。」


店内に、いつもの温かい空気が戻っていった。


ひとりの時間は不安もあるけれど、

“帰ってきた誰か”が笑ってくれるだけで、

それが全部、物語に変わる。


ジロウ、お疲れさま。

君の背中のおかげで、今日もコメットは動いている。


――今日も、晴れ、ときどき地球だ。


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