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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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第61話 ―― 監査官、来訪。コメット、まさかの“平和拠点候補”になる

今日は〈コメット〉に、予想外の“お客様”が来ます。

理由は……リクの「宇宙をなんとなく救った日」と、

ミナの「宇宙をうっかり壊しかけた日」。


その“調査”のはずなのに、

最後にとんでもない方向へ転がるお話です。


静かな午前の光の中、

少しだけ緊張しながら、お楽しみください。


〈セクター7〉、午前10時。


カフェ〈コメット〉の前に、

白い球体ドローンがふわりと着地した。


続いて黒いコートの人物が一人。


胸元には、銀色の文字。


「宇宙保全庁・観測安全部」


カナが息をのむ。


「……保全庁!? なんで……?」


ジロウは膝を笑わせながら小声で言う。


「……昨日うっかり宇宙救って、

 その前にうっかり壊しかけたからでは……?」


「言うな!!!」


ミナの光は“警戒モード”で低く灯る。


リクだけは淡々とコーヒー豆を量っている。


黒コートの人物が名乗った。


「宇宙保全庁・第三区域安全監査官、

 トワ・ハーデンだ。」


静かな声。だが背筋が伸びる。


トワは端末を開き、淡々と言った。


「〈コメット〉において、

 “重大揺らぎ事案”が2件連続で発生した。

 調査に来た。」


全員:


「「「2件……連続……」」」


ミナが控えめに手を挙げる。


『その……昨日の“局所ブラックホール未遂”は……

 わたしの……』


「あれ完全に宇宙終わるとこだったんじゃないっすか!」


カナがつっこむ。


そして監査官は、次にリクを見た。


「そしてその前日、

 “広域ゆらぎ障害をコーヒー1杯で修復した件”

 も確認している。」


リク:「……まぁ……あれは偶然だ。」


「偶然にしては規模が大きすぎる。」


ジロウ:「え、あれってそんなヤバかったんすか……?」


カナ:「“全航路ズレ始める”ってミナ言ってたじゃない!」


ミナも申し訳なさそうに光をふるわせる。


『事実です。

 リクの逆位相ドリップがなければ……

 宇宙交通は全面停止していました。』


ジロウ:「いやいやそれもう救世主じゃないっすか!」


リク:「やめろ。」


──監査官は淡々と続けた。


「宇宙救済と宇宙破壊未遂。

 この“救いと破壊の振れ幅”は異例だ。」


全員:


「「「異例ってレベルじゃない……」」」


トワは端末を閉じ、結論を述べる。


「しかし調査の結果、

 どちらの現象も〈コメット〉内部で“自然収束”している。

 外部被害なし。むしろ……」


そこで一瞬だけ言葉を止め、続けた。


「むしろ“安定化効果”が確認された。」


カナ:「安定化……?」


ミナ:『香気波と逆位相揺らぎが……

 宇宙構造に“良い影響”を……?』


ジロウ:「いやいやいや! 事故っすよ!?」


リク:「事故だな。」


トワは静かにこう告げた。


「本来なら“監視対象”に指定するところだが……」


端末が光り、上層部からの速報が届く。


球体ドローンが読み上げた。


『〈コメット〉を“銀河平和安定拠点候補”として

 仮登録せよ。』


全員:


「「「候補!? なんで候補!?」」」


ジロウ:


「昨日ホール開けたんすよ!?

 その前の日に宇宙救ったんすよ!?

 平和なのか不安定なのかどっちなんすか!?」


カナ:


「ていうか……誰よこれ決めたの!?」


ミナは解析する。


『……署名者、“評議会第零席”。

 個人名は非公開です。』


リク:「零席……って鶴の一声ってやつか。」


ミナは、どこか満ちた光で言った。


『“平和拠点”……響きが良いですね。』


リク:「いや、ミナ、お前の実験で宇宙が破れかけたんだぞ。」


ジロウ:「平和の“へ”の字もないっすよ!」


それでも監査官トワは淡々と告げた。


「誤解も多いが……

 あなたたちの“揺らぎ”は、総合的に見て害より益が上回る。」


「よって今後は

 〈コメット〉を“観測型平和拠点候補”として扱う。」


監査官は静かに去っていった。


残されたコメットに、

いつもより少しだけ穏やかな空気が流れる。


ミナの光がふんわり優しく灯った。


『今日の香り、タイトルは——

 “救ったり壊しかけたりして、なぜか平和候補”。』


リクは苦笑しながら言った。


「……まあ、悪くねぇ肩書きだ。」


ジロウ:「なんかもう慣れました……」


カナ:「良いのか悪いのかわからないけど……

 たぶん……悪くはないわね。」


——こうして〈コメット〉は、

宇宙を震わせた2つの騒動の結果、

なぜか平和の候補地になった。


誰の判断かは、まだ分からない。


でもその“鶴の一声”は、

どうやらこの店の未来を少し変えたらしい。


今日も。

晴れ、ときどき地球だ。


本来は“怒られる回”のはずが、

なぜか〈コメット〉は“平和拠点候補”に。


救ったり壊しかけたりしながら、

それでも不思議と優しい場所になっていくのが、

この店らしいのかもしれません。


次回は、平和候補になった翌日の〈コメット〉を。

いつもの午後三時と、少し違う風が吹きます。


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