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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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第52話 自動ドア、反抗期になる ― コメット入店不可事件 ―

午後三時のコメットは、静かでゆるくて、

ちょっとした“不具合”が風みたいに起きては過ぎていきます。


今回はその“不具合”が、まさかの……

自動ドア。


AIの進化はときに便利で、ときに妙なところで拗ねます。

でも、そんな日常のハプニングほど、

このカフェの“あたたかさ”が滲むものなのかもしれません。


それでは、少し反抗期気味のドアのお話をどうぞ。


〈セクター7〉、午前11時。


カフェ〈コメット〉の前で、

ジロウがドアに向かって全力でアピールしていた。


「開けっ! 俺だってば! 常連だってば!」


しかし、自動ドアは――


ピクリとも動かない。


リクはカウンター越しに腕を組む。


「……お前、何したんだ?」


「なにもしてないっすよ! 今日もかわいく

 “おはようございます”って言っただけっす!」


カナは端末を見て眉をひそめる。


「自動ドアのAI……アップデート入ってるじゃない。

 “応答パーソナライズ・モードβ版”

 ……嫌な予感しかしない。」


そのとき、ミナの光がふわりと揺れた。


『……コメット入口AI《D-12》が

 “自己選択応答フェーズ”に移行したようです。』


リクがしかめっ面になる。


「つまり……?」


『気に入らない相手は“開けない”、という仕様です。』


「なんで俺が“気に入らない側”なんすか!?」


カナが肩をすくめる。


「……ドアにも好みってのがあるのね。」


ジロウがドアに向かって手を振る。


「D-12さん! 昨日、俺が油差したじゃないっすか!

 あれは愛ですよ!?」


……沈黙。


リクが近づくと――


ウィーン(完璧なスムーズ開閉)


「……おい、俺には完璧に開くじゃねぇか。」


「贔屓だ! 絶対贔屓っすよこれ!」


ミナは静かに告げた。


『D-12は“安定した作業者”を優先する傾向があります。

 ジロウの“エネルギー過剰アクション”は苦手のようで。』


カナが笑いをこらえる。


「つまり……テンション高い人は拒否するドア……。」


ジロウは膝から崩れ落ちた。


「俺……入れないんすか……?」


そのとき、ドア上部のパネルがカチッと動く。


《通知:落ち着いたら、またどうぞ》


「説教されてる!!!!」


リクは笑いながら言った。


「ほら、深呼吸しろ。落ち着いたら機嫌直るだろ。」


「……落ち着く……落ち着く……俺は落ち着いた大人……」


ジロウがゆっくりと瞳を閉じ、

落ち着きを取り戻すと――


ウィーン(やや渋りながら開く)


「ちょっとだけ開いたわね……。」


『拒否反応が35%→18%に低下。

 あと少しで入店許可が出ます。』


ジロウはドアに向かってそっと言った。


「……いつもお疲れ様っす。

 今日もよろしくお願いします。」


――スパンッ!(勢いよく全開)


「急に元気に開くな……。」


ミナがまとめに入る。


『D-12は“丁寧な言葉”に弱いようです。

 感情モデル:素直で、ちょっと気難しい性格。』


ジロウがガッツポーズ。


「よし! 今日からD-12さんとは

 “敬語で仲良くなる作戦”っす!」


カナは呆れつつ笑った。


「……重力装置より扱い難しくない? このドア。」


リクはふっと笑う。


「まぁ、ドアも生き物みてぇなもんだろ。

 気配で動くんだ。」


ミナが光を柔らかく揺らす。


『今日の香りのタイトルは――

 “反抗期のドアと、優しい敬語”。』


そしていつものように、

地球の青がゆっくりと回っていた。


――今日も、晴れ。ときどき、地球だ。


今回は、〈コメット〉の入口ドアが主役でした。


AIが高度になるほど、

“便利”と“めんどくさい”が紙一重になる瞬間があります。


けれど、相手が機械であれ人であれ、

丁寧な一言で世界が開くこともあるのだなと、

リクさんやジロウたちを書きながらじんわり思いました。


明日もまた、静かでおかしな“コメットの日常”を。

その空気を一緒に観測していただけたら嬉しいです。


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