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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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第51話 重力のずれた午後 ― ポンコツは空に舞う ―

午後三時。

〈コメット〉の空気が、すこしだけ“軽く”なった気がした日です。


ジロウのDIY魂が暴走するとき、

なぜか世界が少しだけ傾く——そんなのが、このカフェの日常です。


今回は、重力がゆらぎ、空間がねじれ、

ちょっとだけ空が近くなるような午後のお話を。


今日も“ゆるいのに、ちょっとだけハラハラ”。

そんな〈コメット〉の時間を、どうぞ。


〈セクター7〉、午後3時。

いつもより静かな〈コメット〉に、

ふわっと奇妙な揺れが走った。


「……ん?」


リクがカップを置いた瞬間、

スプーンが微妙に“浮いた”。


ジロウが叫ぶ。


「リクさん! 見てください!

 “軽重スイッチャーmini版”完成したっす!!」


「お前……今このタイミングで言うなよ。」


カナが眉間を押さえる。


「ジロウ、その装置まさか……重力いじってる?」


「スパイス程度に、っす!」


「スパイスで重力いじるな!」


ミナが淡々と分析した。


『重力偏差0.3%発生。

 店内に局所的“ゆる重力”が発生しています。』


「0.3%って……まあ、そこまで……」


リクが言いかけた瞬間。


——ポヨン。


ケトルの湯気が“上ではなく横”に流れた。


「これはダメだろ。」


カナが椅子につかまり、

スプーンやストローが店中を“ゆっくり回転しながら漂う”光景を見て声を失った。


「完全にヤバいやつじゃん!」


ジロウは青ざめながら言った。


「ちょっとだけ、湯気を“ふわっとさせる”予定

 だったんすけど……」


「予定の意味とは。」


——そのとき。


ガガッ。


重力が“縦と横でズレる”ような揺れが起きた。


ミナの光が急変する。


『店舗重力が部分的に“ねじれ”ています。

 このままだと、空間が折れ曲がる可能性があります。』


「折れ曲がるって何!?」


ジロウが号泣しはじめた。


「すみませんすみませんっす!!

 軽くなる世界を作りたかっただけなんす!!」


リクは深呼吸し、

漂うスプーンを片手で掴みながら言った。


「ミナ、店内の揺れの“中心”がどこか割り出せるか?」


『できます。重力偏差の原点は——

 ジロウのポンコツ装置の“第3共振コイル”です。』


「よしカナ、店の“音”聴けるか?」


「音? 重力と関係あるの?」


リクはドリップケトルを持ち、

ぽと……ぽと……と一定間隔で落とし始めた。


ぽと…ぽと…ぽと…


その“落下音”が、

歪んだ重力で微妙にテンポを狂わせている。


カナが気づいた。


「音が……揺れてる。

 つまり、重力の“ゆらぎパターン”が音に出てる!」


リクがうなずく。


「その揺れが最小になる場所が“ねじれの中心”だ。」


ミナも解析を開始する。


『音波解析と重力偏差波形を同期……

 中心点を算出。——そこです。』


指し示されたのは、床下。


ジロウの装置の“裏面”だった。


カナが叫ぶ。


「ジロウ! そこに手突っ込んで!!」


「死ぬやつじゃないっすかそれ!!」


「大丈夫だ。死ぬ重力じゃない。」

(リク)


「そんなフォローあります!?」

(ジロウ)


しかしジロウは覚悟を決め、

重力がゆらぐ床に手を差し入れた。


空間がふわっと揺れ、

彼の腕が“ちょっと長く見える”。


「ひいいいぃぃ!!」


リクが叫ぶ。


「第3共振コイルを——逆回転だ!!」


ジロウが泣きながら回す。


グルルッ……!


重力に“縦線”のような波が走り——


——ポン。


全部が元に戻った。


スプーンも、空気も、店の床も、

ゆっくりと“いつもの重さ”に収束していく。


ミナが光を戻した。


『重力、安定。空間ねじれ、解消。』


カナはへたり込みながら笑う。


「……ほんと、毎日が実験よねここ。」


ジロウは土下座した。


「すんませんしたああああああ!!」


リクは肩をすくめて笑った。


「まぁ、悪くねぇよ。

 “軽くなる世界”ってのは、案外いいもんだ。」


ミナが今日の記録をまとめる。


『今日の香りのタイトルは——

 “重力のゆらぎと、少し軽くなる心”。』


外では地球が静かに流れていた。


今日も変わらず——

晴れ、ときどき地球だ。


お読みいただき、ありがとうございます。


重力がズレても、空間が少し曲がっても、

最後は笑ってコーヒーを飲める場所——

〈コメット〉はそんなカフェでありたいと思っています。


リクとミナの静かな連携、

カナの冷静な観察、

ジロウの尽きない好奇心とポンコツ。

この4人(と1AI)が揃うと、

日常がちょっとした冒険に変わるような気がします。


次回もまた、

“日常の向こう側にある、小さな奇跡”を描きます。


それではまた明日、午後三時に。

晴れ、ときどき地球で。


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