第44話 元相棒ナギサ、緊急ミッション ― コメット、まさかの臨時基地化 ―
カナが正式に〈コメット〉の“現場側”へ加わり、
店は少しだけ賑やかで、少しだけ騒がしくなりました。
そんな中、今回はジロウの“昔の相棒”が緊急訪問。
香り騒動の余波でステーションが妙な気配を見せはじめ、
〈コメット〉がまさかの“臨時基地”に――。
広い心と楽観主義、そして尽きることのない好奇心で、
また今日もコーヒーの香りと一緒に宇宙がちょっとだけ動きます。
〈セクター7〉、午後3時。
昼の騒動(ナギサ乱入&小爆発)から数時間。
〈コメット〉はなんとか通常運転に戻っていた。
そこへ、またしてもドアが“ガラッ”と荒々しく開いた。
「リクさん! ジロウ! これ見て!!」
ナギサがタブレットを掲げて飛び込んできた。
カナは思わず叫ぶ。
「もうちょっと落ち着いて入ってきて!?」
ミナが淡々と告げる。
『騒音レベル、観測値+32%。』
「分析しないで!」
リクがカップを拭きながらため息まじりに言う。
「今度はなんだよ……また“ジロウ消息不明疑惑”か?」
「ちがうっての! こっちは本物の緊急事態!」
ナギサがタブレットをカウンターに置く。
画面には、
〈セクター5〉の巨大配電盤の警告ログがずらり。
ジロウが目を丸くした。
「“香気異常ルート接触”……? なんすかこれ。」
カナが即座に読み取る。
「え……これ、“ステーション全域”に香りが
届いた影響じゃない?」
ミナが申し訳なさそうに光を揺らした。
『……前回の“香り拡散事故”による
副作用の可能性があります。』
リクが額を押さえる。
「つまり――
“宇宙香らせたせいで、どっか壊れた”ってことか。」
ナギサが力強く頷く。
「そう! で、これ放置すると……
ステーション全体の照明が“香りによって同期”する
可能性が!」
ジロウが叫ぶ。
「それただのアロマ空間じゃないっすか!」
「いや違う! 香りに合わせて明かりがチカチカするの!
超不便なの!」
リクが思わず笑う。
「宇宙のインフラが香りで壊れるって……どんな世界だよ。」
カナが勢いよく立ち上がる。
「で、なんで〈コメット〉に来たの?」
ナギサは指を突きつける。
「現場で“香気パルス”出した犯人がここだから!!」
リク・ジロウ・ミナが一斉に目を逸らした。
カナだけが声を出す。
「……まぁ、否定はしないけど……」
ナギサは深呼吸して、真剣な表情になった。
「だからお願い。
“原因装置”を動かせるの、〈コメット〉だけなの。」
リクが眉を上げる。
「え、あれまだ動くのか。香気安定装置(試作1号)。」
ジロウが胸を張る。
「そりゃあ動きますよ! さっき直したんで!」
カナがつぶやく。
「直したの!?」
ミナが淡々と補足する。
『直したというより、“動かすために
必要最低限のガムテープで補修”しました。』
「補修って言わないでそれ!」
ナギサは腕を組んだ。
「つまり――
“宇宙香気安定装置(試作1号)”を使って、
“香気パルスの逆位相”を作って、
セクター5を落ち着かせたいの!」
リクはすぐに理解した。
「……なるほど。
重力制御をドリップで止めたのと同じ理屈だな。」
カナが目を輝かせる。
「香りで……照明を止めるの?」
ジロウがニヤニヤしながら言う。
「つまり、“香りで宇宙を救う”第二弾っすね!」
ミナが静かに宣言した。
『作戦名――
《香気逆位相による配電盤同期解除作戦》。
略称:カオス作戦。』
ナギサが叫ぶ。
「略称やめて!? 縁起悪い!」
リクは作業エプロンを締め直した。
「まぁ……やるしかねぇか。」
ジロウがスイッチを持ち上げる。
「出撃しますか! 〈コメット〉整備班!」
カナが笑いながら頷く。
「観測班も同行するわよ。」
ナギサがタブレットを握りしめる。
「よし、全員ついてきて!
香りで宇宙を壊したなら――香りで直すのよ!」
ミナが小さく光る。
『今日の香り、タイトルは――
“香りで壊して、香りで直す”。』
リクがぽつりと呟いた。
「……なんだその因果応報みたいなタイトル。」
でも、どこか誇らしげでもあった。
〈コメット〉はまた、宇宙を救いに向かう。
もちろん、コーヒーの香りと一緒に。
香りが宇宙インフラにまで影響する世界で、
それでも仲間たちは笑いながら対処していく。
そんな“ポンコツと誠実さのあいだ”が、
〈コメット〉らしさなのかもしれません。
次回は、今回の作戦の本番――
セクター5への“香気逆位相ミッション”を描きます。
香りで壊したなら、香りで直す。
そんな因果応報みたいな宇宙修理、どうぞお楽しみに。




