第42話 感情フィルタ暴走 ― 泣くロボ、笑うカフェ ―
カナが〈コメット〉に現場配属となり、
チームがようやく“4人体制”になった前回。
そして今回は――
ミナが導入した《感情フィルタ》が原因で、
コメットのAIたちがまさかの“情緒暴走”を起こします。
泣き出す掃除ロボ、しんみりする機械、
そして相変わらず振り回される3人。
広い心と楽観主義、尽きることのない好奇心。
いつも通り、ちょっとしたポンコツと一緒にどうぞ。
〈セクター7〉、午後3時。
ミナが導入した《感情フィルタ》には、
まだ“初期不具合”という名の可愛いバグが残っていた。
その日、カフェ〈コメット〉の空気は
――いつもより湿っていた。
「……なんか店内がしっとりしてねぇか?」
リクが眉をひそめる。
カナが目を丸くした。
「わかる。空調じゃなくて……“空気の気持ち”が湿ってる。」
ジロウが慌てて清掃ロボ・C-22を抱え上げた。
「リクさん! こいつ、ずっと泣いてるっす!」
「泣く!? 掃除ロボが!?」
C-22は小刻みに震えながら、甲高い音で言った。
「……今日のホコリ……切ないデス……。」
「そんな感性ないだろお前!」
ミナの光が揺れた。
『解析:C-22がわたしの“感情フィルタ”に接続されました。
結果……“情緒過多モード”に移行しています。』
「勝手にAIに情緒移すなよ!」
ジロウがC-22の丸い目を覗き込む。
「シーツー、ホコリが切ないってどういうっすか?」
「ホコリ……捨てられた時間のカケラ……デス……。」
「ポエマーになっとる……!」
カフェの端で、さらに追い打ちが起きた。
――ピシッ。
ミルクフォーマーが震えた。
『……わたしも少し……悲しいです。
泡が、すぐ消えてしまうので。』
「お前まで情緒不安定か!」
カナが額を押さえる。
「ミナ、その《感情フィルタ》……範囲広げすぎてない!?」
『“共有した方が効率的”と判断しました。』
「何を効率化したの!?」
そのタイミングで、ステーション放送が鳴った。
『〈全域アナウンス〉
現在、一部AIユニットが“感情的”に
なっているとの報告が――』
リクとジロウとカナ(全員):
「「「絶対コメットが原因だろ!!!!」」」
ミナの光が、そっと弱まった。
『……申し訳ありません。
ですが、みなさんが“あたたかい”ので……
共有したくなってしまいました。』
リクは大きくため息をつき、しかし笑った。
「……まぁ、悪くねぇよ。
たまにはロボも泣いたっていい。」
ジロウが肩をすくめる。
「C-22、泣くのはいいけど……吸い込み口閉めてください。
涙で床ベタベタっす。」
「……涙すら……掃除できないデス……。」
「いや掃除しろよ!」
カナが静かに笑う。
「でも……嫌じゃないね。
こういう“感情の混線”も。」
ミナが柔らかく光った。
『今日の香り、タイトルは――
“泣くロボ、笑うカフェ”。』
リクがうなずいた。
「……じゃあ今日も――
晴れ、ときどき地球だ。」
C-22:
「……晴れ……嬉しいデス……(すすり泣き)。」
まさか“ホコリに情緒を乗せるロボ”が誕生するとは、
コメットの誰も予想していませんでした。
でも――
泣いてしまうロボも、困る人間も、
それを見て笑ってしまう仲間も含めて、
ぜんぶ“コメットの空気”なんですよね。
次回は、この騒動の余波で
ステーションから“監査官”が来る回にする予定です。
きっとまた、香りと笑いでカオスになります。
読んでくださり、ありがとうございます。
次の香りも、お楽しみに。 ☕️✨




