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青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

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第40話 宇宙香気安定装置(試作1号) ― ミナ、またやらかす ―

4人体制になった〈コメット〉は、いつもより賑やかで、いつもよりポンコツで、いつもよりあたたかい。


今回は、ミナの“ちょっとした善意”と

ジロウの“ちょっとした工夫”と

リクの“ちょっとした油断”と

カナの“ちょっとした観測癖”が重なって――


史上最大級の“コーヒー騒動”が発生します。


いつも通り、香りと笑いと、広い心でお送りします。


〈セクター7〉、午前11時。


ジロウがカウンター裏で、巨大な箱をゴトッと置いた。


「リクさん! ついに完成したっすよ!

 “宇宙香気安定装置(試作1号)”!」


リクが顔をしかめた。


「名前からして嫌な予感しかしねぇんだが。」


カナが覗き込む。


「なにこれ……ファンとパイプと……ドリッパー?」


「そうっす! ミナさんが設計した“香り安定フィールド”を、

 現場で再現できる超装置っす!」


ミナの光が誇らしげに揺れた。


『香りは空間安定に影響します。

 よって、“いい香り”は宇宙の平和に寄与します。』


「いやスケールでかすぎるよ。」


カナのツッコミは完全に無視され、

ジロウはスイッチを入れた。


「じゃ、実験スタートっす!」


ウィィィィン……


装置が低く唸り、中心のドリッパーに蒸気が集まる。


ミナが報告する。


『香気圧、上昇中。

 ……問題ありません。予定値です。』


リクは腕を組む。


「勝手に予定立てんな。ほんとに大丈夫か?」


その瞬間――


ポンッ!!!!


「うおっ!?」


装置上部から“香気泡”が爆発的に噴き出した。


もくもくもくもくもくっ……


〈コメット〉は、一瞬で“香りの雲海”に包まれた。


カナが叫ぶ。


「視界ゼロ! これ、霧じゃない! 香り! 

 香りが濃すぎる!!」


『警告。香気濃度、想定比480%。』


「桁おかしいだろ!」


ジロウは慌てて配線を抜こうとするが――


バチッ!


「あっつ! 静電気っす!」


リクは咳き込みながら叫ぶ。


「ミナ! 装置止めろ!」


『停止コマンド、拒否されました。

 理由:香りが“最適状態”と判断されました。』


「断るんじゃねぇーーー!!!」


カナはどうにかモニターにアクセスする。


「待って、これ外部に漏れてる……

 ステーション全域の香気センサーが反応してる!」


『香り拡散ルートを推定――

 〈セクター6〉、〈セクター9〉、〈セクター3〉へ

 伝搬中。』


リクとジロウが同時に叫んだ。


「宇宙規模でコーヒー淹れる気か!?」


ミナが小声で言った。


『……宇宙規模とは、良い響きです。』


「褒めてねぇ!」


そのとき、ステーション放送が鳴り響いた。


『〈全域アナウンス〉

 コーヒーの匂いがするという苦情が殺到しています。

 至急、原因を――』


ジロウが青ざめた。


「コメットじゃねぇか完全に!」


リクが腹を括った。


「もういい。こうなったら……手動だ!」


バルブを一気に開放する。


ゴォォォォォ‼


香りの雲が吸い込まれ、店内の空気が一気に軽くなる。


ミナの光が揺れた。


『……香気濃度、正常範囲に回復しました。

 大変ご迷惑をおかけしました。』


カナは床に座り込んだ。


「……ほんとに“宇宙を香らせる”とこだった。」


ジロウは額の汗を拭いながら言った。


「でも……ちょっとすごかったっすね。」


リクは笑う。


「バカみたいな装置だったが……

 悪くねぇ。こういうポンコツは嫌いじゃない。」


ミナが静かに告げた。


『今日の香り、タイトルは――

 “宇宙香気安定装置(試作1号)、とりあえず無事”。』


カナが笑った。


「タイトルだけ完璧にするのやめて。」


店内には、まだほんのりとした香りが漂っていた。

失敗の匂いか、挑戦の匂いか、それとも――仲間の匂いか。


どれでもいい。

だって、ここは〈コメット〉なのだから。


ついに出た、

“宇宙香気安定装置(試作1号)”。


やっていることは壮大なのに、

結果はポンコツで、

でもどこかあたたかい。


これこそ〈コメット〉の“宇宙的日常”。


失敗して笑って、

次もまた挑戦して、

そこに仲間がいて。


それが香りの記録になっていくのが、

この物語の根っこです。


41話は、今回の余波で“とんでもない場所”に香りが届きます。

そちらもお楽しみに。


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