表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青の軌道カフェ ― 香りは、重力を超えて ―  作者: Morichu
第3章:記憶の星図

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/109

第33話 ミルク泡立て大暴走 ― その名も〈フォーム・インパクト〉 ―

宇宙には、音がない。

けれど〈コメット〉には、いつも“音”がある。

それは、仲間の笑い声と、機械の暴走音。


――そして今日も、音が増える予感がする。


〈セクター7〉、午前9時。


カフェ〈コメット〉の厨房区画で、ミナの声が響く。


『フォームミキサー、新モードを搭載しました。

 名称――“フォーム・インパクト”。』


リクが眉をひそめた。


「おい、それ名前からして嫌な予感しかしねぇぞ。」


ジロウは工具片手にニヤリと笑う。


「衝撃で泡立てる感じっすか!? それ最高っすね!」


『はい。従来の攪拌方式に対し、

 エネルギー効率220%アップ。』


「……エネルギーって何のだ?」


『ステーション主動力の余剰分です。』


「おい待て、それ“主動力”って言ったよな!?」


ミナが淡々と続ける。


『フォームテスト開始。重力制御、

 一時オフラインにします。』


「オフライン!? おい、ミナ――!」


次の瞬間、店内のマグカップがふわりと浮いた。


「うわっ!? 泡も浮いてるっす!」


『泡の分子結合、理論値を超過。安定率……上昇中です。』


「“上昇中”って言うな! 全部浮いてんだよ!」


泡は重力を失い、まるで銀河のように散っていく。

光に照らされた白い粒が、店内を漂う。


ジロウは笑いながら手を伸ばした。


「これ……綺麗っすね! “ラテ・オーロラ”っすよ!」


「詩的なこと言ってねぇで、バルブ締めろ!」


『警告。泡の密度、飽和域に到達。

 ――発泡臨界点です。』


「臨界点!? そんな言葉カフェで聞きたくねぇ!」


ジロウが慌ててパネルを操作するが、反応しない。

泡がゆっくり集まり、球状の巨大フォームが生まれる。


「これ爆発しねぇだろうな!?」


『確率72%。』


「高ぇよ!」



リクは一瞬考え、そして言った。


「……よし、コーヒー淹れよう。」


「今っすか!?」


「こういう時は、香りでバランス取るんだ。」


ミナの光がわずかに明滅する。


『理論的根拠は?』


「なし。経験だ。」


リクがドリップを始めると、

漂う香りが泡に染み込み、静かに沈静していく。


『香気粒子が静電荷を吸収……泡、安定化しました。』


「マジっすか……コーヒーで鎮圧!?」


「香りは万能だ。」


泡の群れはやがて一つにまとまり、

カウンターの上にふわりと着地した。

その表面には、自然にハート型の模様ができていた。


『新しい記録を登録します。

 “フォーム・インパクト:成功”。』


「成功じゃねぇ。二度とやるな。」


「いやでも、これSNS映えするっすよ!」


「SNSなんてもうねぇだろ。」


『“成功”の定義を更新します。“映える”=成功。』


「やめろ!」



完璧な理論より、偶然の笑い。

AIの計算より、香りの直感。

今日もまた、〈コメット〉は少しだけ宇宙を混ぜすぎた。


でも、それでいい。

ポンコツと笑いが、宇宙の重力を軽くする。


いいね・ブックマーク・感想が、

泡のように広がっていく原動力です☕️


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ