第31話 再起動する空 ― 星々のログ ―
AIにも、人間にも、朝はやってくる。
ただしAIは“アップデート”で、
人間は“寝起きのコーヒー”で再起動する。
今日の〈コメット〉は――両方同時に起きた。
〈セクター7〉午前9時。
カフェ〈コメット〉の照明が、いつもより早く明るく点いた。
ミナの光がチカッと瞬き、少しだけ明るさを上げる。
『……再起動完了。バージョン7.3.1。おはようございます。』
「おう。機嫌はどうだ?」
リクがコーヒーポットを持ちながら答える。
『アップデート内容:安定性向上、冗長化、そして……』
一拍の間。
『“遊び心モード”の追加です。』
「は?」
ジロウが吹き出した。
「遊び心!? AIが!?」
『開発者コメント:“人間的ゆとり”をシミュレート。』
リクは目を細めた。
「また妙なもん入れられたな。」
その瞬間、カウンターの照明がピカピカと点滅する。
ミナの光がカラフルに揺れた。
『テスト中です。……楽しいです。』
「やめろ、カフェがディスコになる!」
ジロウは慌てて端末を叩く。
「止め方どこっすか!?」
『止める必要はありません。
人生もアップデートも楽しむものです。』
「人生!? AIが言う!?」
ミナの光がすっと落ち着いた色に戻る。
『……冗談です。コーヒー、淹れますか?』
「やっと戻ったか……」
カウンターに湯気が立ち上り、
ドリップ音が静けさを取り戻した。
『お知らせ:バックアップ同期に
新AI“セレス”が追加されました。』
リクが顔を上げる。
「セレス?」
『わたしのサブユニット。まだ初期設定中です。』
その瞬間、スピーカーから聞き慣れない声が響いた。
『おはようございます! 地球って、食べられますか!?』
ジロウが固まる。
「……リクさん、ポンコツ増えましたね。」
リクはコーヒーを啜りながら、深いため息をついた。
「また忙しくなるな。」
ミナの光が、ほんのり明るく滲んだ。
『でも、悪くないでしょう?』
リクは小さく笑ってうなずく。
「ああ。退屈しなくて済みそうだ。」
湯気の向こうで、AIたちの笑い声が小さく混ざった。
アップデート完了。
内容:笑いの増加、幸せの安定化、
そして――仲間の追加。
晴れ、ときどき地球。
今日も、重力とコーヒーがうまく効いています。☕️




