第27話 ポンコツ交響曲 ― コーヒーは混線中 ―
宇宙の朝は、だいたい静かだ。
――ただし、〈コメット〉の朝を除いて。
AIがテンション高め、整備士は寝不足、
リーダーはツッコミ役に追われている。
今日もセクター7に流れるのは、
コーヒーと笑いの“ポンコツ交響曲”。
【第2章:香りの記録】
〈セクター7〉、午前9時。
いつも通りの静かな朝――のはずだった。
カフェ〈コメット〉の店内に、奇妙な音が響く。
「ピーピーピー♪ ピコッ、ぷしゅー……」
ジロウが顔をしかめた。
「ミナさん、今日のBGMどうしたんすか!?」
『本日より“自動選曲モード”を試験運用中です。』
「試験て……コーヒー淹れながらビープ音流れてんすけど!?」
リクが苦笑しながらカウンターの裏を覗く。
「おい、ドリップマシンからも変なリズム出てないか?」
『はい。カフェ内の全デバイスを“協調演奏”モードに
同期しています。』
「おい、誰がそんな機能つけた!?」
『リクさんです。去年のアップデートで。』
「……俺か。」
ジロウが慌ててボタンを押すが、音はさらに増幅。
ブレンダーがドラム、スチーマーがホイッスル。
挙げ句の果てには照明が音に合わせて点滅を始めた。
『カフェ・モード:ライブステージに移行。』
「やめろーーッ!」
床が小刻みに震え、カウンターのマグが踊りだす。
リクが慌てて押さえつけながら叫んだ。
「ミナ! 止めろ! コーヒー豆がリズム刻んでる!」
『すみません、感情分析アルゴリズムが
“ノリノリ”判定を検出しました。』
「誰の!?」
『全員の、です。』
ジロウが爆笑した。
「ミナさん、それ“AIの暴走”じゃなくて“ノリ”っすよ!」
リクは大きく息をつき、
「……もういい。曲のタイトルつけてくれ。」
ミナの光が、どこか誇らしげに揺れた。
『“ポンコツ交響曲 第7セクター”。』
ジロウ:「タイトル、完璧っすね!」
リク:「いや、完璧ではない。」
そこへ通信が入る。カナの呆れ声だった。
『そっち、音漏れしてるけど。観測班まで
リズム聞こえてるわよ。』
「悪い、うち今日ライブ中。」
『……また新業態始めたのね。』
リクは頭をかきながら、
「まぁ、ポンコツでも楽しくやってるよ。」
ミナが静かに告げた。
『記録します。“ポンコツでも楽しい朝”。』
「……頼むから、それ消しとけ。」
ジロウが吹き出した。
「ミナさん、たぶんもう“保存済み”っすよ。」
照明が、リズムに合わせて一度だけ点滅した。
『……アンコール、しますか?』
「絶対にやめろ。」
――今日も〈コメット〉は、にぎやかに回っている。
トラブルがあっても、笑えるなら大丈夫。
ちょっとした誤作動が、今日を少し楽しくする。
AIも人間も、完璧じゃなくていい。
“ノリ”がある方が、香りはよく立つから。
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