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第五話「オルレアンの指輪」

ミッシェル・レインウォーター、占い師。前職はバルジ・ラルガスに雇われた

メイドである。彼女がどのような考えで退職したのか、彼女の口から教えられる。

彼女は元より占いを得意としていた。自分でも占い師になりたいと思っていたが

それだけで食っていけるはずが無いと冷静に考えて、バルジがたまたま出していた

求人に応募したらしい。彼女の学や家事スキルを高く評価して採用されて元気に

働いていた。あくどいことをするようなバルジだが、まぁそれなりに上手く

付き合って来た。ずっと働く気はさらさら無かった。タイミングを見て、辞職する

つもりでいたのだ。


「何かしてるんだろうなぁ…って思った時に見つけちゃったのよ、これ」


バルジの管理体制の悪さが原因、しかし彼のお陰で見つけたと言っても過言では

無い。銀の指輪に嵌め込まれた水色の宝石。アクアマリンと言う宝石だ。裏側に

名前の刻印がされている。


『ルチア・オルレアン』

「オルレアン!?」


反逆者オルレアン、ルチア・オルレアン。国を揺るがせた勇敢なる反逆者は

一人の女性。彼女の形見をミッシェルはバルジの邸宅から発見し、持ち出した。

ルチアには結婚相手がいた。その男はミッシェルからすると父の兄、つまり

伯父という事だ。彼女が所有権を主張しても、納得できる。少なくとも何の

関係も無いバルジが権利を主張するより、よっぽど正当な理由になる。


「ミラと言う男とも話したことがあるんだろ。何か知らないか?」

「彼の事が、私がさっさと仕事を辞めた理由よ。良い人なんだけどね」


後からやって来たミラの教育係にミッシェルは任命され、使用人の仕事を

教え込んだ。彼とも上手くやっていた。慣れてくると仕事を互いに分担して

行うようになった。他のメイドからはミラとの関係を揶揄われるぐらいには

親睦が深かったようだ。


「でもね、確信したのよ。ついさっき」


ミッシェルは携帯を取り出して、バルジ邸の火災に関するニュース映像を

見せる。メイド諸共死亡したことが判明。もとよりバルジと言う男は恨みを

買う男だ。誰かが放火した可能性があり、犯人について調査をしているとの事。


「私の命も、危ないわね。だって、貴方達にこの住所を教えたのは彼でしょう?」

「…あ!まさかとは思うけど…考えすぎでは無いとしたら…」


外から来たのはリラとキース。二人は探偵を名乗っている。つまり頭も回るはず。

ミラはもしかすると指輪の行方を捜していた可能性がある。そうであると仮定し、

考えるとミラはリラたちを利用して指輪を見つけようとしていた。行き過ぎた

考察だが、彼がミッシェルの住む場所を知っていたのは前々から彼女をマーク

していたのでは無いだろうか。


「何処に住んでいるか、なんて彼に話した覚えは無いわよ。流石、探偵を

名乗るだけあるわね。普通は突飛した話なんて信じられないけど」

「十分に考えられることだよ。どんなにあり得ない事でも、それが真実だと

するのなら変わらないもの。答え合わせは、犯人とすれば良い」


リラはミラと言う男について僅かな時間しか顔を見合わせていない。しかし彼は

何でもかんでも煙に巻くような男では無さそうだ。聞けば大抵の事は素直に

話すはず。そして彼は恐らくリラたちを追って、ここに来る。


「真正面から迎え撃つか?」

「おばかっちょ!勝てるわけ無いから!こっちの勝利条件は、勝負に勝つことでは

無い。ミラの口から真実を語らせれば、私たちの勝ち」


リラはミッシェルに目を向けた。


「危険な事、頼むけど良いですか?」

「命の保障は?」

「いざという時はキースもいます。最悪、逃げれば良い。この住居に未練は

あるだろうけど、怒りはミラにぶつけて貰うという事で」


ミッシェルが対話をする。傍で身を隠し、リラたちはその会話を録音する。

音さえ手に入れれば良い。既に指輪の在処を調べて欲しいという依頼は達成

されている。ここからはバルジの悪事、もしかしたらこれは処刑された反逆者

オルレアンの真相にも近づく可能性がある。


「…分かったわ。そのお願い、受け入れる。信じてるわよ、探偵さん」

「任せて」


ミッシェルの手をリラは握った。


「要は何かあったら俺に全てを押し付けるって事だろ」

「駄目?」


暫く静観していたキースが口を開いた。不満だろうか、そうに違いない。

と思っていたが、彼は特に不平不満があるわけでは無いらしい。


「勝てるとか思ってないよな?」

「勝てそうにない相手だから、命最優先ね!」


その言葉を聞き、キースは突然扉の前に立ち屈んだ。ウエストポーチから

小瓶を取り出し蓋を開ける。赤い液体が扉の前に流れるもすぐに消えた。

何をしたのか分からない。


「少しばかり仕掛けをした。本当に、避けられなかった場合の為に」

「貴方でも難しいの?サムソン家の人間の相手」


ミッシェルもミラの正体を知っていた。


「何の策も無しに戦っては勝てない。流石の俺も致命傷を負うだろうな。

魔法の類は彼らにも通用するはずだ。奴らはそのあたり、からっきしだから。

だがその致命的ともいえる弱点を力で覆すのが彼らの恐ろしいところだ」

「ねぇ、ミラ以外にも戦ったことがあるの?」

「一度だけな」


キースは自分の右腕を叩いた。


「腕の骨を粉々に砕かれた。そういう奴らだ。だから」


彼はリラにあるものを渡した。それは武器、銃である。二丁拳銃、ありふれた

武器では無いようだ。これも一種の魔道具。魔術的な改造が施された代物。

実弾では無く、魔力を弾丸として放つ。


「いざという時は、お前が撃て。必要ならば、俺ごと撃って良い」



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