#1
私はずっとあなたのそばにいる。時には見え、時には見えないけれど、私はそこにいる。決して変わらない。たとえ死が訪れても、私たちを引き離すことはできないだろう。
鈴木莉子は、何年も前に亡くなった妹をもう一度見た。夢の中ではなく、現実の中で。
例えば今日の授業中、彼女がノートを取っていると、妹・鈴木理子が教室のドアから入ってきた。長い黒髪が顔を隠し、彼女の席へと正確に歩み寄り、そばにまっすぐ立った。そして、長い髪の間から覗く漆黒の瞳が、無言で冷たく彼女を見据えた。
彼女は必死で彼女を見ないようにしたが、手に持ったペンは震えて言うことを聞かなかった。授業が半分以上過ぎても、ノートにはまだ数行の走り書きがあるだけだった。
「トントントン」。低く鈍い音が前方で響いた。彼女は慌てて我に返り、誰かの人差し指の関節が自分の机を軽く叩いているのを見た。顔を上げると、学級委員長の高橋翔太だった。
彼はまばたきをした。揺らめくまつげが、語りかけるかのようなその澄んだ瞳に影を落としていた。『授業中にぼんやりしないで。どうしたんだ?』とでも言いたげな目だった。
彼女は無理に笑って、そっと首を振った。そしてさっき妹がいた場所を振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。
下校のチャイムが鳴り、莉子はぼんやりと立ち上がり、外へ出た。彼女はもう、この幻影にうんざりしていた。毎晩、電気を消すとぎゅっと目を閉じる。それでもなお、目の前で黒い影が揺らめいているような気がして…目を開ける勇気がなく、毎日がぼんやりと過ぎていった。気力は萎え、反応は鈍く、記憶力も極端に落ちていた。
莉子はクラスの学級委員だ。大学のクラスでは、学級委員は名ばかりの役職で、いいことはあまりなく、雑用は山ほどある。クラスメイトを連れて情報処理室で履修登録を手伝ったり、教育用スライドを見るのをまとめたり、再試験の費用を集めたり、期末の優秀学生選考で投票を読み上げたり、生活委員から回ってきた定期券の手配まで…。
「おい。」誰かが何かを彼女の肩に叩きつけた。鼻を刺すようなタバコの匂いが噴き出した。「再試験料、よろしくな!」彼女が目を開けると、灰色がかった二枚の札束が肩からふわりと落ち、地面に散らばった。
「今度も落ちたら、お前が金返せよ!」相手は歩き出そうとして、また振り返り、別の札束を地面に放り投げた。「そうだ、忘れるところだった。これは来月の定期券代だ。980円だろ?千円でいい、お釣りはいらねえ。」
そう言いながら、相手は傍らにいる友人にボソボソと呟いた。「犬どもめ…俺から金巻き上げておいて落とすなんざ、今度落ちたらお前を落とすぜ!」そばにいた誰かが調子を合わせた。「あのバカと何かけるんだよ?あいつはガリ勉しか知らねえ、つまんねーよ…」
自分が試験に落ちたのを学級委員のせいにするなんて?笑いたい気持ちもあったが、笑えない。口元が少し上がったが、苦い瓜を噛んだようにすぐに萎んでしまった。言いようのない、悔しい苦しさだった。
莉子は廊下の隅にへたり込み、頭を膝に深く埋めた。
足音が聞こえ、誰かが身をかがめて近くから彼女を見ているようだった。すると、サラサラという音がした。彼女は慌てて顔を上げたが、そこには高橋翔太がしゃがんで、一枚一枚紙幣を拾っている姿があった。自分を見つめる莉子に気づくと、彼は微笑んでお金を差し出した。「…誰かさんのこと、何かさんのこと、気にしすぎないほうがいいよ。」
彼女は呆然とそれを受け取った。心の中で、ありとあらゆることを何度も何度も反芻した。彼女には無理だった。誰かさんのこと、何かさんのこと、気にしないでいられなかったのだ。
例えば、彼女の双子の妹、鈴木理子のこと。