キミ、AIにならない?
私は今、選択を迫られている。
その数時間前は余命宣告をされた。
私の残された時間は、私が思ったよりも短いらしい。
あまり実感がないのは急にいろんなことが起こったからからもしれない。
私は、都会で一人暮らし。
毎日働いた。
私には働く以外何もなかった。
もっといろんなことしたかった。
いろんな場所に行ったり、いろんな人に出会ったり。
旅したり、恋したり…
今の私は友達も恋人もいない。
死が静かに近づいてくる。
お医者さんからあなたに相談したいことがあると言われた。
相談とは何だろうか?
夜の診察室に来てほしいと言われ、約束の時間に行ってみた。
夜の診察室は誰もいなかった。
シーンとしていて、不気味だった。
「ごめんね、待たせちゃったかな?」と男の人が現れて、私は咄嗟に身構えた。
あたふたしながら、言葉に詰まりながら「あの相談があると言われて来たんですが…」と私は男の人に言った。
「ああ、相談っていうのは…キミ、AIにならない?」
訳がわからないまま話を聞いた。
話が途中難しくて全くわからなかった。
私がわかったことは3つ。
◯余命わずかな人に声をかけていること。
◯AIになるとは、私の脳に残された記憶をメモリチップみたいなものに入れて保存し、それをAIの脳に置き換えるということ。
◯AIはまだ不完全な機械であること。
私はわからなかった。どうしたいのか。
「何かわからないことあったら、聞いてね」と言われたが、聞いたこと全てが嘘みたいで全てデタラメみたいで。
明日まで返事を待つと言って男の人は消えた。
一晩、考えた。
ふっと頭に浮かんだのは実家の両親。
親より先に死ぬのは…
AIに感情はない。ただ感情という記憶はあると言っていた。
嬉しかったことや悲しかったことは残っていると。
◇◇◇◇◇
次の日。
私はAIになることを決めた。
両親が死ぬまではAIで生きると希望した。
体は機械。
記憶だけは私。
近づいてくる死が怖かった。
全て終わりが怖かった。
新しいスタートが未来があることが今の私を支えていることが不思議だった。
この先のことはわからない。
ただ私はどんなカタチでも両親より長生きしたいと思った。
これが私の親孝行でごめん。
私はゆっくり目を閉じた。