閑話:もふもふたちのおしゃべり
レオンたちが試練を終えた翌朝。
「おはよう、レオン!」
突然の言葉にレオンは驚き、目をぱちくりさせた。目の前には、もふもふの姿のままのモコが、ぴょんぴょん跳ねている。
「あっ、しゃべった!?」
「うん、しゃべったよ!」モコは耳をぴくぴくさせながら嬉しそうに答えた。
「おはよう、レオン。」
ルナがゆったりと伸びをしながら、しっぽを揺らして話しかけてくる。さらに、コンが誇らしげに胸を張って言った。
「ようやく、我の偉大さを言葉で伝えられるようになったのだ!」
「そういうこと、前から思ってたの?」レオンが苦笑すると、コンは鼻を鳴らしてふんぞり返る。
「まあまあ、コンの言うことはさておき……レオン、これで私たち、もっとたくさんお話できるね!」ルナがにっこりと笑った。
「それは嬉しいけど……なんか不思議な感じ。」
「そうか?」トトが丸くなりながら、小さな声でつぶやいた。「わたし、もともと静かにするの好きだから、あんまり話さないかも。」
「おーい! 話せるって、楽しいなー!」モコが元気よく飛び跳ねる。
「まったく落ち着きがないな……」コンがため息をつくが、モコは気にせず走り回っていた。
そこへ、シルフィードがゆっくりと翼を広げる。「……風が、やさしく流れている。言葉を持つことで、世界の声がより深く感じられるようになった。」
「かっこいい!」レオンは感嘆の声を上げる。
「シルフィードはやっぱりすごいなあ。」ルナがうっとりと見つめ、コンも「我も負けておれぬな」と鼻を高くする。
その後も、もふもふたちはおしゃべりを楽しみ、朝食の間も大騒ぎ。
「レオン、ごはん、まだー?」モコがせがむ。
「待ってよ、今準備してるから!」
「レオンの料理、おいしいもんね!」コンが得意げに言う。
「おいしいのは認めるけど、もう少し静かに食べようよ……」トトが呆れ顔で言った。
「まあまあ、これからもっといろんなことが話せるようになるんだから、ゆっくり楽しめばいいよ。」
レオンは笑いながら、にぎやかなもふもふたちとともに新しい朝を迎えた。
言葉を交わせるようになったことで、さらに絆が深まり、旅はますます楽しくなっていくのだった。
***
食事が終わり、もふもふたちがそれぞれ言葉を楽しんでいると、フェンリルが静かに言った。
「お前たち、人間の前では迂闊に話さない方がいい。」
「え? なんで?」モコが首をかしげる。
「もふもふたちが言葉を話すことは、珍しいどころか、奇跡に近い。人間たちの中には、珍しいものを欲しがる者もいる。話せると知られれば、危険が及ぶこともあるだろう。」
フェンリルの言葉に、もふもふたちは顔を見合わせた。
「……たしかに、珍しいって思われるかもしれないね。」ルナが真剣な表情になる。
「むぅ、我の偉大な知性を披露したいのに……」コンが不満そうにしっぽを揺らす。
「我慢して、コン。安全のためだよ。」トトが穏やかに諭す。
「そうだね、気をつけるよ!」モコが元気にうなずいた。
「うむ、それが賢明だ。必要なとき以外は、もとの通り振る舞うのだ。」フェンリルが静かに言い、もふもふたちは頷いた。
こうして、もふもふたちの新しい日常が始まった。




