第二十二章 もふもふたちの救出
市場で楽しい時間を過ごしたレオンたち。エドワードと共に帰路につこうとしたそのとき、ルナがピクリと耳を動かした。
「にゃ……」(なんか、変な気配……)
「どうしたの?」
レオンが尋ねると、今度はコンが鋭く鼻をひくつかせる。
「こん!」(あっちに何かある!)
「えっ?」
もふもふたちが一斉にある路地の方を向く。
「……何か、あるのか?」
エドワードも不審に思い、レオンと共にそちらへ向かった。狭い路地の奥、そこには古びた木製の小屋があり、外壁には布が無造作にかけられていた。
「ここ……?」
レオンがそっと近づくと、かすかに小さな鳴き声が聞こえてきた。
「……くぅん……」「ぴぃ……」
「誰かいる!」
焦って中を覗くと、そこには檻に閉じ込められた小さなもふもふたちがいた。薄汚れた毛並みで、怯えた目をしている。
「こんなの、ひどい……!」
レオンが拳を握ると、奥から荒々しい声が響いた。
「おい、何をしてるんだ!」
見るからに粗暴な男たちが出てきた。市場の喧騒から外れたこの場所で、違法に希少な魔獣やもふもふたちを売りさばいているのだろう。
「……君たち、もしかして違法な取引をしているのか?」
エドワードが鋭い視線を向けると、男たちは警戒したように睨み返してきた。
「関係ねえだろ。ここは俺たちの商売の場所だ。さっさと帰んな」
「こんなこと、許せない!」
レオンが叫んだ瞬間、フェンリルが一歩前に出る。
「ガルル……!」(この子たちを解放しろ!)
それに続くように、ルナやコン、シルフィードたちも警戒の声を上げた。
「な、なんだこのもふもふの軍勢は……!」
男たちは慌てて後ずさるが、フェンリルの威圧感に気圧される。
「レオン、檻を開けろ!」
「うん!」
レオンは急いで鍵を探し、見つけるとガチャリと開錠した。檻の中のもふもふたちは、怯えながらも希望に満ちた目でレオンを見つめる。
「もう大丈夫だよ……!」
「くぅん……!」
解放されたもふもふたちが、喜びと安堵の声をあげる。その瞬間、男たちは逃げ出そうとした。
「待て!」
エドワードが剣を抜き、一瞬で男たちの逃げ道を塞ぐ。
「……お前たちの行い、騎士団に報告させてもらう」
「ちっ……!」
男たちは悔しそうに歯ぎしりしながらも、騎士の威圧感に抗えず、観念したようにその場に座り込んだ。
その後、駆けつけた騎士たちによって男たちは捕まり、違法な取引をしていた証拠も押収された。
「よかった……!」
レオンは解放されたもふもふたちをそっと抱きしめた。
「これからどうしよう?」
「ここにいたもふもふたち、行くあてがないなら、希望者を募って新しい飼い主を探してみよう。騎士団でも保護はできるが、温かく迎えてくれる人がいればそれが一番だ」
「うん、そうしよう!」
レオンは、無事に助け出したもふもふたちとともに市場へ戻る。そこで、もふもふ好きな人々が次々と現れ、新たな家族として彼らを迎えていった。
「みんな、幸せになってね……!」
レオンの優しい言葉に、もふもふたちは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「よくやったな、レオン」
エドワードが誇らしげにレオンの肩を叩く。
「うん! もふもふたちが笑顔になれてよかった!」
こうして、レオンたちの市場での冒険は思わぬ形で大きな意味を持つものとなったのだった。




