第二十一章 市場へのお出かけ
翌朝、レオンたちは早めに朝食を済ませ、エドワードの案内で街へ向かう準備を整えていた。
「市場ってどんなところなんですか?」
レオンが興味津々に尋ねると、エドワードは微笑んだ。
「市場には、いろんな商人が集まっていて、食材や道具、珍しい魔法の品まで手に入る。君が持っている素材を売るのにも最適な場所だよ」
「すごい……! 僕の素材、ちゃんと売れるかな?」
「もちろんさ。貴重な素材なら高値がつくこともあるぞ」
レオンはわくわくしながら頷いた。
「それじゃあ、行こうか!」
「わん!」(フェンリル) 「にゃー!」(ルナ) 「ぴょん!」(モコ) 「しゅるる……」(シルフィード) 「くるるん」(トト) 「こん!」(コン)
もふもふたちも期待に満ちた鳴き声を上げながら、レオンの後をついていく。
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市場に到着すると、そこは活気にあふれていた。
「うわぁ……すごい!」
色とりどりの果物が並ぶ屋台、香ばしい匂いのするパン屋、きらめく宝石を扱う店、さらには魔法の道具を並べた露店まであった。
「さて、まずは素材を売る場所を探そう」
エドワードの言葉に、レオンは頷きながらマジックバッグを抱きしめた。そのとき、もふもふたちが何かに反応したように周囲をきょろきょろと見回し始めた。
「どうしたの?」
「にゃっ!」(ルナ)
ルナがひょいっと市場の奥へと駆け出した。
「ルナ!? 待って!」
レオンは慌てて追いかける。
ルナの行き先には、小さな露店があった。そこでは初老の男性が、珍しい魔法の道具を並べていた。
「おや? 猫ちゃんが興味を示したのかい?」
店主は優しく微笑み、ルナが見つめていたものを手に取った。それは、小さなガラスの瓶に入った光る粉だった。
「これはね、妖精の羽の粉末を調合した特別な品だ。少し振りかけると、一時的にふわふわと浮かぶことができるんだよ」
「ふわふわ……?」
レオンが目を輝かせると、店主は軽く笑った。
「試してみるかい?」
「いいんですか?」
店主は瓶の中の粉をほんの少しレオンの手に振りかけた。すると、レオンの指先がふわりと宙に浮いた。
「わぁっ!」
もふもふたちも驚いたように鳴き声を上げる。
「これ、すごいですね!」
「ははは、気に入ったかい? まあ、魔法の練習にはもってこいの品だよ」
「後で考えてみます!」
レオンは嬉しそうに微笑み、ルナの頭をなでた。
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「おや、君たちは素材を売りに来たんだろう?」
そう声をかけてきたのは、武骨な雰囲気の男だった。彼は市場の一角で「素材買取」と書かれた看板を掲げた店を構えていた。
「はい! 僕、こういう素材を集めたんです!」
レオンはマジックバッグから、風の加護を受けた樹皮や妖精の泉の水晶、魔獣の毛皮などを取り出した。
「おお……こりゃまた、珍しい品だな……! 特にこの樹皮、風の精霊が宿るほどのものとは……」
男は目を輝かせながら素材を丁寧に確かめ、値段を提示してくれた。
「どうだい? この値段で買い取らせてもらうが」
「こんなに……!」
思っていたよりも高値がつき、レオンは驚いた。
「ありがとう! お願いします!」
男は満足そうに頷き、代金を渡してくれた。
「また何か珍しい素材があれば持ってきてくれよ!」
「はい!」
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市場を一通り回り、レオンたちは満足そうに帰路についた。
「市場ってすごく楽しいね!」
「ああ、いろんなものがあって面白いだろう?」
エドワードが笑いながら言う。
「うん! また来たいな!」
「もちろん、また案内してやるよ」
こうして、レオンたちは無事に素材を売り、市場の賑わいを満喫した。
そんな話をしていると、ふと人混みの中から奇妙な衣装をまとった人物が現れた。
「おやおや、これはまた珍しいお客人だ」
その人物は、占い師のような衣装を身に纏った若い女性だった。長い杖を持ち、怪しげな水晶を手にしている。
「君、何か特別な力を持っているんじゃないかい?」
レオンは驚いて目を丸くした。
「えっ?」
女性はふふっと笑い、水晶を覗き込んだ。
「君の未来、ちょっと覗かせてもらってもいいかい?」
そう言いながら水晶を覗き込んだ彼女の表情が、ふっと和らぐ。
「……ふふ、いい未来が見えたよ」
「え?」
「君はね、たくさんのもふもふたちに囲まれ、温かい仲間たちと一緒に楽しく過ごしている。未来は優しくて、穏やかで、とても幸せそうだよ」
「ほんと?」
「もちろんさ。きっとこれからもたくさんの素敵な出会いがあるよ」
レオンはもふもふたちと顔を見合わせ、にっこり笑った。




