第十六章② 妖精の泉と妖精女王
ようやく湖へたどり着いたレオンたちは、その神秘的な光景に息を呑んだ。
湖は青白く輝き、宙には小さな光の粒が舞っている。その中心に立つのは、長い銀髪を持つ気品ある妖精女王だった。
「ようこそ、異邦の旅人たちよ」
女王の優雅な声が響く。
「私は妖精の王、セレスティア。この泉を護りし者」
レオンは少し緊張しながらも、一歩前に進み出た。
「はじめまして。俺はレオン。旅の途中で妖精たちに出会って……ここに来ました」
女王は静かに微笑む。
「ふふ、聞いているわ。あなたたちは精霊と縁深き者。妖精たちがここまで案内するのは、あなたに何かしらの可能性を感じたからでしょう」
「可能性……?」
レオンが首を傾げると、妖精たちがくるくると舞いながら彼の周囲を囲んだ。
「あなたたちには、妖精の祝福を授けましょう」
妖精女王が手を掲げると、湖の水がふわりと浮かび、光の粒となってレオンたちへと降り注ぐ。
「うわっ、暖かい……」
身体の内側から、心地よい風が吹き抜けるような感覚がした。
「これは……妖精の祝福?」
「ええ。風と精霊の力を少し分けてあげましょう。あなたたちは、この世界にとって大切な存在。だからこそ、さらなる加護を与えるのです」
「なんかすごいな……」
レオンが呟くと、フェンリルもじっと女王を見つめていた。
「がぅ……俺たちは何か試されているのか?」
妖精女王は微笑みながら、静かに首を振った。
「いいえ。ただ、あなたたちの旅の助けになればと思って」
「……ありがとう」
女王は軽やかに笑い、妖精たちが祝福の光を降らせながら楽しそうに舞っていた。
「それと、お土産にこれをあげましょう」
女王が手をかざすと、ふわりと現れたのは、美しい刺繍が施された小さな袋だった。
「これは?」
「妖精の秘薬。傷を癒し、疲れを取り除く特別なエリクサーです。妖精の加護が込められており、使用すると身体だけでなく心まで軽くなると言われています」
「すごい! こんな便利なものをもらっちゃっていいの?」
「ええ、あなたたちならきっと役立ててくれるでしょう」
妖精たちはくるくると飛び回りながら、「また遊びにきてね!」と楽しげに手を振る。
こうして、レオンたちは妖精たちと親交を深め、新たな力と贈り物を得て旅を続けることになった。




