第十二章 変わり者のダークエルフと不思議な家
果樹園での楽しい時間を過ごした後、レオンたちは再び旅を続けることにした。
「さて、この先はどんな出会いが待ってるかな?」
レオンがワクワクしながら歩いていると、フェンリルが突然足を止めた。
「……誰かいるな」
もふもふたちも警戒するように耳を立てる。前方の森の奥から、何かの気配が近づいてくるのを感じた。
「こん?」
コンがそっと茂みに身を潜めると、その先に現れたのは一人の青年だった。漆黒の髪と褐色の肌を持ち、鋭い金色の瞳がレオンたちを見つめている。
「おや、こんなところで旅の者とは珍しいな」
青年は優雅な仕草で近づいてくる。彼の周囲には心地よい風が流れ、まるで森と一体になっているかのような雰囲気を持っていた。
「えっと、あなたは……?」
「私はダークエルフのアルシェ。ここいらの森を研究している者だ。君たちは旅の途中かな?」
レオンは驚いた。ダークエルフと出会うのは初めてだったが、アルシェは敵意どころか穏やかな笑みを向けてくれている。
「はい! 僕はレオン。もふもふたちと一緒に旅をしてるんです!」
「もふもふたち……なるほど、いい仲間を持っているね」
アルシェは優しく微笑みながら、フェンリルやコンたちを見つめた。
「君たち、よかったら私の家で休んでいかないか?」
「え、本当ですか? ありがとうございます!」
アルシェの案内で森の奥へ進むと、そこには不思議な家が建っていた。大樹の幹をそのまま住居にしたような構造で、壁には小さな光る植物が張り付き、家全体がほんのりと光を放っていた。
「うわあ……すごくきれいな家ですね!」
「ふふ、ありがとう。ここは私が色々と工夫して作った場所でね。ところどころ、ちょっと普通とは違うかもしれないが、気にしないでくれ」
レオンたちは興味津々で家の中へ入った。しかし、次の瞬間——
「ぎゃっ!」
ハリネズミのもふもふ「トト」が突然宙に浮いた。
「ええっ!? トトが浮いてる!?」
「ああ、それは重力を調整する魔法の部屋だよ。ちょっと実験用に作ったんだ」
「実験用!? っていうか、どうやって戻すんですか!」
「このスイッチを押せば——」
カチッ。
「きゃぁぁぁ!」
トトがふわっと落下し、もふもふたちが慌てて受け止める。
「アルシェさん……すごい家ですね……」
「はは、面白いだろう?」
そして翌朝、アルシェはレオンに一つの袋を差し出した。
「これは驚かせたお詫びに。マジックバッグだ。どれだけ物を入れても重さが変わらない」
「えっ、いいんですか!?」
「君たちの旅に役立つだろう。大事に使ってくれ」
「ありがとうございます!」
こうして、レオンたちは変わり者のダークエルフ・アルシェの不思議な家で賑やかな時間を過ごし、貴重な贈り物を手に入れたのだった。




