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あだばな  作者: 藤泉都理
8/11

ちにく




 このままポメラニアンとしてこの男に飼われた方が幸福なのか。

 このまま人間として常に恐怖を抱えたまま生きていく方が幸福なのか。

 しかし果たしてこの男の元でポメラニアンとして幸福に生きて行けるのか。

 しかし果たして人間として生きて来たのに、人間として幸福を得たいのに、その夢から逃げ出していいのか。


 喉元を喰い千切られて、芝生の上に倒れ込んだ男を見下ろす中で、生まれた思考。


 もしかしたらこの男が、運命の、相手、だったのか。


 瞬く間に全身が凍りつく中で、唯一燃えるように熱かった。

 口が、口の周りが、喉が、口で銜える肉が。


 この肉を早く放して、この男の喉に戻さなければ。

 この男の喉に戻せばきっと、


 いや、いやいやいや。

 この男の肉を喰い千切った瞬間に、ポメラニアンから人間に戻ったのだ。

 このままこの肉を、血を、飲み込んでしまえば、もう、ポメラニアンになる事はないのではないか。

 運命の相手であるこの男の、一部とはいえ、肉体に取り入れれば、取り込んでしまえば、ポメラニアンになる事はないのではないか。

 ポメラニアンから人間に戻らなくなるのではないかという恐怖に苛まれる事はないのではないか。

 人間として人間の幸福を得る為に生きて行けるのではないか。




 肉を、血を、飲み込んでしまえば、











(2024.5.31)




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