モゲ4
「ふ、ふえー、ひ、酷い夢を見ちゃったよー」
草治がベッドの上で目を覚ます。
部屋は綺麗に片付いていて、着衣の乱れもない。
彼の額と両頬に、美女達のお尻が擦った丸くて大きな痣さえなければ、本当に全ては夢だったように思える。
「さーて、今日のお天気はどんなんかなー」
草治は立ち上がると、ベッドの横にある大きなカーテンを開けた。
いつもなら、そこには目黒区の閑静な住宅街が広がっている。
だが、彼の瞳には荒涼とした褐色の大地と、巨大な暗黒の中に浮かぶ大きな青い星が映っていた。
「や、やっぱり、夢じゃなかったんだぁぁ…」
自分が宇宙船にキャトられて、月面にいることを確認した草治が、絶望を煮詰めて焦げ付かせたような暗い表情を浮かべた。
昨日の、宙に浮いていたおケツの記憶が蘇り、彼はその場に膝を付いて崩れ落ちた。
そして突然、部屋の扉がバーンと開く。
「おはようございます、バッソ。今日は太陽風の穏やかな絶好の大放出日和じゃのお!」
「のおおぉぉー!」
それがどんな日和なのか全く分からなかったが、すでに草治は天を仰いで泣き叫ぶプラトーンとなっていた。
そんな事にはお構いなしに、チョイミナがスタスタと早足で近付いて来ると、草治を後ろから楽々と抱き上げ、そのまま部屋の中央へと運んで行った。
「これから素敵な出会いが巻き起こるからのお。そのまま、そこに突っ立っておれ!」
チョイミナの命令に、草治はただ部屋の中央に立ち尽くすのみであった。
そして、部屋の扉がバーンと開く。
「やーん、遅刻しちゃうよー、大変だよー」
そう言いながら、紺色のセーラー服を着た真紅の髪の女性が入ってきた。
トーストを食わえて、左手の腕時計を見ながら、彼女は小走りに草治へと駆け寄ってくる。
草治が「危ない」と思った瞬間には、ニ人は軽く衝突していた。
罰ゲームの仮装のように全く似合っていないセーラー服姿のレオトラは、大きく足を開きながら後ろに倒れて、青と白の縦縞のパンツを見せていた。
「ちょっと、あんた何処見て歩いてんのよー。あ、痛っ、やーん乳首を擦りむいちゃったじゃないー。一体どうしてくれんのよー」
ただ立っていただけの草治には、状況がさっぱり分からなかった。
分からないながらも、一応は倒れたレオトラが心配になって声をかける。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「全然ダイジョブじゃないわよー。あんた擦りむいた乳首をペロペロしなさいよー。お腹が空いた子犬みたいにペロペロしないと許さないんだからねー」
「ふえぇぇ? い、いや、なんで、そんなこと急に…」
草治が戸惑っていると、レオトラのセーラー服の上着が、まるで貝が開くように肩から前後にパカッと開いた。ヘソから上が丸出しになって、張りツヤ天下一品の築地ピチピチ乳が草治の前に現れる。
それを直視してしまった草治が、真っ赤になりながら呟く。
「あ、あの、何処も擦りむいてないみたいですけど…」
「お腹が空いた子犬みたいにペロペロしないと許さないんだからねー」
「い、いえ、でも、怪我とかしてないですよ……」
「お腹が空いた子犬みたいにペロペロしないと許さないんだからねー」
「あ、あの、レオトラさん……」
「お腹が空いた子犬みたいにペロペロしないと許さないんだからねー」
それはもう、因縁をつけてくるヤクザのごとき圧迫感であった。
どうしてもペロペロしなければならないような、不穏な空気が部屋中に立ち込める。
だがしかしDT歴19年。母親と女教師以外の異性とまともな会話をしたことのない草治にとって、それは余りにもハードルの高い要求であった。
ただオロオロしている草治を見て、このままでは埒が明かないと悟ったレオトラは、おもむろに草治の頭をガッと掴むと、そのまま自分の胸へと押し込んだ。
「そうよ、もっと、もっとペロペロしなさいー」
「ん、あがっ、んぐ、ぐっ」
「ああんー、いいわー、もっとペロってー、ペロってー」
レオトラが嬌声を上げながら、その乳を押し付ける。
草治は、唇に触れるコリッとした感触から反射的に身を離そうとするのだが、頭を掴んだレオトラの怪力から脱け出すことは不可能だった。
「ふむ。これは上々のフラグが立ったんじゃないかのお」
「おほほ。すでにバッソの奴にはラブハリケーンが芽生えてやがるどすえ」
チョイミナとムラブーが、満足そうにそんな会話をしている。
「はあぁぁーん、もう、がまんできにゃいぃぃー」
感極まったような声を上げて、レオトラが草治を押し倒す。
そのままパンツ丸出しのM字開脚でマウントを取ると、草治の両腕を掴んで、自らのピチピチへと導いた。
「さあ、獲物を捕らえた鷹のようにワッサワッサと揉みなさいー」
「ふ、ふぇぇっ!? それより手を、手を離して下さいー」
「あぁ、いいぃぃーっ」
「あ、あの、止めて下さい、レオトラさんー!」
「ふにゃあああぁぁーっ」
下手に抵抗すると手首が折れそうな怪力に、草治はされるがままであった。
この無茶苦茶なレオトラの行動の理由を読み取ろうと、草治は必死になって彼女の表情を観察した。
だが、しかし、そこには乱れた赤髪のエモな美女があっはんうっふんしてる姿しか見えなかった。
その脈絡のない行動が、草治にはとにかく恐ろしかった。
「も、もう、やめて下さい…」
「バッソの奴の脈拍が160を超えたどすえ」
「よーし、バキューム隊、突入じゃあぁぁー!」
チョイミナの号令を受けて、リビングの扉がバーンと開いた。
例の掃除婦姿の三人組が駆けて来る
一人は台車を押し、一人はノズルを持ち、そして一もう人はグリコのポーズだ。
一瞬にして丸出しにされた草治の股間に、ノズルが差し込まれる。
ぎゅぼおおぉぉー!
「も、もう、モゲる! モゲましー! モゲまシュワルツェネッガァァー!!」
そんなターミネーターモゲ三段活用が、月面の褐色な大地に響いた。