モゲ3
「尿じゃったな」
「おほほ。ガマン汁すら無しの完全な尿どすえ」
「あっはん。困ったお漏らしちゃんね~。うっふん」
壁一面に電子機器の埋め込まれた広大な部屋。
その中央には大きな正三角形のテーブルがある。
各辺の中央にある、銀色の巨大なスライムのようなソファーに腰掛けた三人が、険しい表情で座っている。
「エロバイトのタチダスは『男子の本懐にござるー』と叫びながら、わしらのパイオツでもおケツでもジャンジャンバリバリ大放出しよったんじゃがのお。このバッソとタチダスとの相違を、貴様らはどう解釈する?」
獣のような鋭い目をして、チョイミナが2人に問うた。
「おほほ。おそらくバッソの野郎は変態どすえ」
「何? 変態じゃと?」
眉間にゴボウ一本は挟めそうな深いシワを寄せながら、チョイミナが問い返す。
「おほほ。タチダスの奴はパイオツやおケツが大好物のノーマルスケベ。しかし、そんな通常のエロでは満足しない、いとおかしな性癖を持つ野郎を変態と呼ぶどすえ。バッソの奴を大放出させるには、より特殊でエモーショナルなオペレーションが必要どすえ」
自信満々の表情で大和撫子は、そう言い切った。
「ふむ。この銀河の生命体研究のトップガンと言われる知識のデンジャーゾーン、ムラブー博士の見解はそうなるか。貴様はどう見る、レオトラよ」
「あっはん。まずは、こちらの資料をペロペロっと見ちゃってね~ん。うっふん」
レオトラが指差した先には、壁一面を埋める巨大なモニターがあった。
そこには『大人気片っ端から押し倒し連載・ツンエロ娘の発情日記』と言うタイトルの漫画が全十八ページに渡って映し出されていた。その1コマ1コマには、点字とバーコードを組み合わせたような記号が、びっしりと書き込まれている。
「あっはん。バッソの生息環境調査の際に、多摩川の河川敷でタマタマ回収したこの星の聖典『エロスのバイブル・エロマゲドン』の解析が128ページまでイッタわ~ん。そこで『フラグ』と言う、地球人のDTボーイの股間をクリーンヒットする重要な概念を発見しちゃったわけね~ん。うっふん」
「何? フラグじゃとお?」
そう言いながら、凄腕の殺し屋のような目でチョイミナが巨大モニターを眺める。
そして、数秒で全てを読み終えると、その内容を一言で要約する。
「ふむ。要するにフラグと言うのは、エロ行為に至るまでの特別な因果関係を意味しとるようじゃな」
「あっはん。チョイミナ艦長のご推察の通りよ~ん。地球人はフラグが発生したエロ行為を、特別に恋愛と呼んでもてはやし、そうでもない直情的なエロ行為をスケベって呼んで区別してる事が、解析の結果判明したのよ~ん。うっふん」
「ふむ。そうなると、わしらがこれまで行ったオペレーションは全てフラグ無きスケベであったと言うことか。スケベでは無反応じゃったバッソの奴も、フラグを付けて恋愛にしてやればジャンジャンバリバリ大放出すると言うことか!」
「あっはん。地球人のDTボーイは、分もわきまえずに恋愛にこだわる傾向にあるみたいよ~ん。これまでのオペレーションの敗因は、このDTハートを理解せずにフラグを立てなかったスケベが原因だったわけね~ん。うっふん」
そう断言したレオトラの真紅の髪がエキゾチックに輝く。
「ふむ。変態かフラグかと言う訳か。どちらも説得力のある意見じゃった。じゃが、わしの歴戦の勘が、すでに答えを出しておるわ」
艦長と言う最も責任ある立場であるらしいチョイミナが、不敵に腕組みをしつつ『ツンエロ娘の発情日記』を見詰めていた。