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酔仙楼詩話  作者: 吉野川泥舟
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 渡りに船と思った子柳、主人に頭を下げると急いで宿を出ようとします。黙って見送るしかない主人を尻目に、駆け出そうとしたその袖を、翔鷹ががっしりとつかみました。


「おっと、少し待ちたまえよ。せっかく援軍を出してあげたんだ、そのままってのはあまりにつれないだろう? 君、最近はめっきり付き合いが悪くなったじゃないか。長安に来たばかりの頃は、毎日のように僕の後ろをついて回っていたのに。酔仙楼で誰が待っているのか、そんな野暮な詮索はしない。僕だって、秘密にしたい繋がりはたくさんあるわけだしね。だからさ、君がもしさっきのことを恩に感じるなら、今夜くらいは僕に付き合っておくれよ。君にぴったりな、楽しい店を紹介したくてね」


 翔鷹はそう言うと、片目をつむって見せました。


 こう持ちかけられては、子柳も黙って振り払うことはできません。渋々の態ながら、翔鷹の言うままについて行くことに決めたのです。早く切り上げて、それから酔仙楼へ登ろうと思いなおしたのでした。そうすれば三人との約束に背くこともありません。


 翔鷹は扇で肩を叩きながら、慣れた様子で繁華街の雑踏をすいすいと縫うように進んでいきます。子柳がはぐれないように必死の思いでついて行くと、やがて真っ赤な燭に照らされた店舗がずらりと並ぶ通りにぶつかりました。そのうちの一件を選んだ翔鷹は、子柳の手をつかむやグイグイと引っ張って入り口に向かいます。


 掲げられた大きな額には、「瑶台月下楼」と書かれてありました。


「どうだい、この風流な名前。ぐっとくるだろう? この店にはね、この世のものとは思えないような仙女たちがわんさかいるんだ。なあに、緊張しなくてもいい。遊び方は僕が指南するし、君がこの道の初心者だってことも理解しているから、ぴったりな子を選んであげるよ」


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