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酔仙楼詩話  作者: 吉野川泥舟
2/39

まくら

 さてここにご紹介しました詩は、大唐帝国は玄宗皇帝の御代、その天才を存分に発揮して誰からも仰ぎ見られた詩仙、李太白入魂の一作「将進酒」でございます。


 詠われている内容は、限りある人生を存分に楽しみ尽くそうという素晴らしいものであり、千古不朽の名作として朗唱され、今なお数え切れないほどの人々を感動させ続けているのです。


 特に優れておりますのは、「この世に私が生まれ出たのは 天の意思が働いてのこと そう きっと活躍する機会がある」でありましょう。


 己がこの世に存在する意味、意義、それは人それぞれ、まさに千差万別でありましょうが、この世に生を受けた以上、必ず何らかの意味があるというのです。


 これは裏返しますれば、この世に不用な者など誰ひとりとして存在しない、という人間賛歌でありまして、たとえどんな困難があろうとも前向きに生きていこうという強い意志を表しているのです。


 今は不遇で、何をやっても上手くいかず、不幸のどん底――そういう方もきっといらっしゃることでしょう。しかし諦めてはいけません。必ず出番がやって来るのです。求められる機会が訪れるのです。


 唯一の存在ともいえるあなた。そのあなたが真の力を発揮できる、そのときの到来を信じて、今はひとまず一献傾けましょう。


 懐が寂しい? そんな悲しいことをおっしゃって下さいますな。李太白も申しておるではありませんか。「どんなに散財したところで 金は天下の回りもの ぐるりと巡って もと通り」と。


 明日を生き抜く活力を養うことこそ、人生において何よりも優先されるべきこと。そして同好の友人や仲間の存在が、楽しいひとときにさらなる彩りを加えてくれるのです。


 さあ、顔にかかった雲を払ってしまいましょう。


 杯はご準備なさいましたか? 竹葉酒に蒲桃酒、名高い千日酒もございます。


 牛肉に羊肉、もちろん食べ放題でございます。鳳凰や麒麟はございませんが、山海の珍味はこれここに。蟹螯ですか? もちろんございますとも。大概のものは揃えております。しかし蟹螯――カニのハサミをお求めとは、なかなか通でございますな。


 さあ、それでは――準備の方も整ったようでございます。早速に、今宵のお話を始めることといたしましょう。


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