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夏色のハンカチ  作者: ねこぽん
第2章 -- 押しつけないで
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3

 教室につくと、みんな来ていたけど、あいつの席は空いてた。あれ?


 ……がらがら。あ、本吉先生だ。

「あー。みんな席に着け、出席をとる。石上」

あいつはどうしたのかな……。

「石上?」

え?

「は、はい」

「どうした、石上?」

ぼやっとしていたらしく、先生の鋭い声がした。


「い、いえ……。なんでもないです」

慌てて返答。

「ならいいが。伊藤」


 ……結局、その日、本吉くんの名前は呼ばれなかった。昨日のことがあったから、少し気になってる。

「……先生」

気になったわたしは、本吉先生を呼び止める。


「ん、なんだ石上」

「えと……えと、本吉くんは?」

「風邪だとさ。いまごろ熱だして寝込んでるところ」

「そ、そうですか……」

まさか。


「まったく、史裕のやつ、雨の中濡れて帰ってくるんだからなあ。そりゃ風邪もひくぞ」

そんな……。まるで、あたしのせいみたいじゃない……。


あいつにこの傘、返しにいかなきゃ。

「あの、先生。あいつ、どこに住んでるんですか?」

「ん、あいつって、史裕か? あいつは、うちだ」

え? またおかしな話が。

「うちに居候だよ。高校卒業までだがな」

「そ、そうなんですか……」


「どうかしたか?」

先生に問われて、あたしは一部始終を先生に話した。あいつが傘を押し付けて帰っていったこと。そして、その傘がいまここにあること。


「そうか。じゃ、この傘は……いや、石上が持っていったほうがいいかもな。できればそうしてくれないか」

「で、でも……」

「そうしなよ、秋子」

突然、背中で美弥子の声がした。

「み、美弥子ちゃん! いつからいたの」

「一部始終ぜーんぶ。すっかり聞いてたわよん」

「あう……」

やな予感がするよ……。


「結城、石上のつきそいしてやってくれるか」

「ええ、もちろん。こんな楽しそうな……げふん、親友の大事な話、見逃すわけには参りませんものっ」

み、美弥子ちゃん……楽しんでるでしょ。


「ということだ。あとで職員室へ来い」

……先生に呼ばれた。

「ええ、ちゃあんと捕まえておきますね。先生」

「頼んだぞ結城」

「あの、あの……」

あ、あたしの立場は……。やだあ、もう。

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