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夏色のハンカチ  作者: ねこぽん
第2章 -- 押しつけないで
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2

 翌日は雨が上がった。雨が上がったあとの青空は、細かい塵が洗い流されて、とてもすっきりと見える、と理科の先生が言ってた。

あたしには、違いが良くわからない。


美弥子が来た。

「あ、秋子! おっはー」

「美弥子ちゃん。おはよう」


「あれ、秋子。傘、二本も持ってきてる」

見つかっちゃったか。昨日の話、しておかないとダメかな。

「……あのね、間抜けな話なんだけど。昨日、傘忘れちゃって。しかも置き傘もなかったから、大変だったの。で、今日はその」

「置き傘を二本持ってきたわけね」

美弥子が言葉を引き取る。


「うん」

「でも一本はなんか秋子っぽくない傘だぞ」

え? 美弥子、なんか勘がよくない?


「ちょっと見せてみなさい~」

「え、ちょ、ちょっと、美弥子ちゃん、なにするの」

言うが早いか、美弥子に傘を取られてしまった。


「……あら。『本吉』って書いてあるう」

あ。名前が書いてあるのが見つかっちゃった。どうしよ。


「……ふふーん♪ そっか、そんな仲だったんだあ。うらやましいなあ」

「な、なんのことよ」

うう、あらぬ誤解を招いちゃったかな。美弥子ってそういうの好きだから。

「ううん、秋子が男の子に興味を持ってくれて、お姉さんはうれしいのよお」

「み、美弥子ちゃん、ち、ちがうって」

そんなわけないじゃない。

「だって。これ、本吉くんのでしょ?」

美弥子がにやにやと笑うけど。


「そ、それはそうだけど……」

「昨日傘忘れて、彼と相合い傘って」


うぅ、やっぱり。誤解だってば。

「そんなことはありません。ほんとに。美弥子ちゃんと帰ろうかな、と思って下駄箱で待ってたら、あいつが来て、傘押し付けてくんだもん」

「へー。そうなんだあ。やるなあ、本吉くん」

美弥子は意外そうな顔をする。


「いい迷惑よお」

思い出しても腹が立つ……。

「まあまあ。人の好意は素直に受け取っておくものよ、秋子」

美弥子はそういうけれど。


「そうはいってもさあ」

「まあまあ。少なくとも悪気があったわけじゃないし」

「そうかなあ」

「……でも、ごめんね」

美弥子が少しだけ声を落とす。

「ん?」

「秋子、下駄箱で待ってたんだ。先帰っちゃったでしょ、あたし。気がつかなくってごめん」

すまなさそうに。


「あ、ううん、それはいいよ。約束してたわけじゃないし」

わたしの一方的な話だったのだから。


「ま、おかげで王子様にガラスの靴ならぬ傘を借りられたわけだしい」

「だれがよ! ちょっと調子に乗りすぎ、美弥子ちゃん」

「あははは!」

「あはははじゃなくて、まったく……」

 結局、美弥子にさんざからかわれて、あたしの立場ったらなかった。こういうときだけ、意地悪なんだもんなあ、美弥子って。

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