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ドラゴンライフ!!~異世界で龍になりました~  作者: 花旅烏兎
一章 異世界で
7/42

漆 魔法とはファンタジー

 

 日が昇らないまだ暗いなか、わらの中の私は起きた。

 外に出てみると、体操ぽいのをやっているユダを発見した。


「おはようユダ」

「起きたか嵐風龍」

「早いねぇ」

「お前さんもな」


 私は今、ユダの家にいる。

 ユダの家はデロッター大森林の中間ら辺にある。魔物の数は意外と少ないらしく、森の中では比較的安全な場所らしい。

 ちなみに何故私がわらで寝ていたのかと言うと、ユダの家には私は入ることが出来ないからだ。人間族(ヒューマン)の大きさを優に超した私の体格では、扉から家を壊しかねない。だから私は外なのだ。


「チルティーはまだ起きていないのか?」

「あの子は朝に弱いからなぁ。日が昇って少ししたら起きてくるさ」

「どこの世界でもネコちゃんは変わらないねぇ」

「?」

「なんでもないよぉ」


 朝はまず、小屋から丸太を取って一日分の薪を作るらしい。斧で薪割りをするのだそうだ。

 小学校の頃のカレー作りの時に薪割りをした以来、その光景を見ることが無かったから懐かしく感じる。


「斧って重くないの?」

「重いさ。だが毎日やっていれば慣れるし体も同時に鍛えられる。一石二鳥だ…ふん!」


 ガッと音を立てて丸太が真っ二つに割れた。そこからまたさらに二つに分ける。


「へぇ、私も手伝っていい?」

「なら、あそこの一まとまりを頼む」

「よっしゃ任せろ」

「……丁度いいから風魔法の使い方を教えよう。嵐風龍なんだし風属性は持ってるだろう?」

「持ってるよ、あと水と雷」

「三属性か。バリエーションが豊富だな。風属性は特に攻撃力、殺傷能力が高い属性だ。攻撃魔法が多いことがこの属性の特徴でな、かなり人気のある属性なんだが、適性を持つものが少ないのも特徴の一つだ」


 そう言うと私の前に立ち、地面に枝で陣を描いた。複雑に見えて意外と簡単な陣である。

 この世界の字は知らないけど、何故か理解できるな。

 読める。


[〈言語理解〉の付属効果です。]


 …さっきは役立たずって言ってごめんね!

 言語理解(きみ)はものすごく役に立つよ!


「魔法陣は魔法ごとに違うが、陣の構成は総て同じだ。まず、円の中心から上には属性についてが描かれている。中心から右には顕現させるもの。左にはそれによって何を起こすか。下にはそれに必要な魔力量が描かれているんだ。使い慣れていないものが魔法を使うにはこういった陣を媒体にして魔法を使うが、慣れているものは使わずに使うことができる。例えば、わしならば土属性だから…」


 ユダは近くの小さな岩に向けて手を出した。


「ロックブレイク」


 岩のてっぺんが砕け、横から見ると台形のような形になった。


「今のはロックブレイクと言って、岩を壊すものだ。使う魔力を少なくしたから少ししか砕けなかったが、もう少し魔力を入れればあれくらいの岩はすぐに壊せる」


 すごい!

 魔法すごい!

 これこそファンタジーってやつなんじゃない!?

 たまに映画でやってた◯リー・◯ッターてやつみたい!

 早く使ってみたい!


「風属性はどんなやつなの?」

「風属性も土属性とそこまで大して変わらない。まず陣にして描いてみた方がわかりやすいだろう。最初に円を書いてだな…」


[能力(スキル)ポイント200を使って〈魔力操作〉を獲得することを推奨します。]


 じゃあ〈魔力操作〉を選択。


{能力(スキル)ポイント200を使い、〈魔力操作〉を獲得しました}


 〈魔力操作〉を常時発動、〈魔力感知〉その他と並列使用。


[並列使用に成功しました。]


「つまり、こうなるって訳だ。魔力込めて少しやってみろ」


 あら、いつの間にか終わっちゃってた。

 まぁいいや。

 〈風刃〉を元にやってみよう。


「おりゃ」


 魔力を操作してイメージを固める。すると魔法陣が緑色に光り始めた。


「今だ!」

「風魔法!」


 目の前の丸太が複数の風の刃によって切断された。

 おおー、とユダは声を上げ、私の肩?を叩いた。


「よくやっな、今のはウィンドカッターという風魔法の一つだ。初級魔法だが、一発で形になるとは思ってなかっだぞ」

「まぁ能力(スキル)があるからね。あと、ウィンドカッターみたいな能力(スキル)があったからイメージしやすかったんだよ。それに、私は嵐風龍だよ?できて当然よ」


 そこからは早かった。魔法陣を描いてひたすら詠唱。それ何度も繰り返していると、ようやく日が昇り本格的な朝がやってきた。


「おい、もう十分だぞ、それ以上やるな」

「へ?」


 見ると、私の前にはきれいに同じ形に斬られた薪が山積みになっていた。ユダも丸太を割り終え、横には薪が山積みになっている。


「お前、熱中すると周りが見えないタイプだな。直したほうがいいぞ」

「それ前も言われたことあるけど、私は周り見ているつもりだよ?」

「いや、絶対違うと思うが………まぁいい。これから朝食の準備をするから、オーク出してくれないか?」

「いいよ、解体の仕方わからないから見たいし」


 私は道具箱(アイテムボックス)からオークを一体出し、それをユダの前に置いた。


「うわ」

「どうした?」


 マジであの時のまんまだ。

 傷もそのままで腐ってもいないし、冷却保存されていて肉の保存方法がまるでわかっているみたい。


「解体するから、そこで見てろよ」

「了解です!」


 まずユダはノコギリのようなもので首を落とし、小さめのナイフのようなもので皮を切り剥ぎ取った。四肢を切り落として胴だけにすると、腹に包丁を立てて切り開き、内臓を取り出していくつかを近くの掃き溜めに捨てた。


「オークの胃や腸などの内臓には毒性があるから、それを取るんだ。間違って食ったりしたら、一週間は腹痛と吐気に襲われるからな。弱めの弱毒だが、解毒剤を作るのが結構面倒なんだ」

「オーク、肉美味いくせに…」


 まぁ、フグも美味いのに毒持ってたりするからなぁ。

 そう思っていると、ユダは内臓を取り出した腹を綺麗に切り、腕も足もザックザックと切っていった。手と足首から下は切り離し、指の爪をナイフで一つずつ抜き取っていく。頭を手に取ると、目を抉り取り口をこじ開け歯や舌を切り出して爪と一緒にまとめる。皮も全て剥ぎ取ると、分厚い袋の中にまとめて放り込んだ。


「爪や歯は武器屋に売れば金になるし、皮は商人に売れば加工して商品にされて売れる。魔物は売れば金になる。魔物からは色んな材料が取れるから、冒険者をやってるやつなんかには魔物は金に見えるんだと」

「こっわ!ユダは私にそんなことしないよね!?」

「当たり前だ。恩龍を無下にするほど酷い人間族(ヒューマン)ではないわ」

「そうだにゃ、ユダはそんなことしないにゃ」

「そうだよね!ユダはそんなこと……へ?」

「ユダは獣族(ビースター)であるあたしと一緒に住んでくれるし、お世話してくれるにゃもん。優しい優しい人間族(ヒューマン)にゃ!」

「……」


 いつの間にかチルティーが家から出て来ていた。

 動いてる気配はしていたが、まさか出てきて言ってくるとは思ってなかった。全く音がしなかった。

 猫とは足裏の肉球で音を立てずに歩くことが出来る動物だ。猫の獣族(ビースター)である彼女にできなくもないだろう。


「チルティー、寝癖がひどいぞ。早くブラシをかけて井戸で顔を洗いなさい。オーク肉を食べたいんだろ」

「にゃにゃっ、それならば急いでいくにゃ!」


 チルティーは小さい頃に見たアニメの、“バビューン”が似合いそうな感じで走っていった。

 可愛いなぁ。

 向こうの方に井戸でもあるのかな?


「外にも(かまど)があるから、そこでオークの肉を焼くぞ。そしたら、お前も食べられるからな」

「やったー」

「肉はわしが運ぶから薪を運んでくれ」

「任せて」


 私は風を操って薪を浮かせ、竈の隣の薪置場に積んだ。


「にしてもさ、ユダとチルティーは本当に物好きだよね」

「何故だ?」

「だってさ、普通は魔物となんて一緒にいないよ?」

「それならば、人種を助ける魔物も普通はいないと思うが」

「あはは、言われちゃったよ」

「ほれ、火をつけるから少し離れろ」


 ユダは腰ポケットから小さな魔力の通ったものを取り出すと、カチッと押して焼べた薪に火をつけた。

 チャッカマン……ライターみたい。

 でも、魔力が通ってるから違うのかな?


「それは?」

「火をつけるための魔道具だ。あいにくわし達には火属性の魔法を使えるものはいなくてね」

「へぇ」


 テル、魔道具って何だ?


[魔力駆動式道具、通称魔道具と呼ばれる魔力で動く道具のことです。通常の道具と違い特殊な構造をしており、魔力伝導率の高い魔鉱石が主な原料となっており、魔石を内蔵されています。魔道具は世界中で使用されており、魔力で動くものは大体が魔道具と言われています。個体名ユダが使用している魔道具は、火属性の魔法が組み込まれた炎熱魔道具です。]


 ほおぉ、すごいなぁ。

 科学みたい。


[似て非なるものです。ですが、この魔道具を使えばある程度あその科学というものに近づけるかと。]


 うお、マジか。


「…あれ?今ユダ火属性の魔法を使えるものはいないって言ったよね?」

「あぁ、言ったが」

「チルティーは魔法が使えないのか?」

「いや、使える。チルティーのような獣族(ビースター)は、五感を敏感にしたりスピードやパワーを上げたりする無属性の強化魔法を得意とする。チルティーもそれだ。一人一人の属性は生まれた時から決まっている。学べば他の属性を使えるらしいが、持ち合わせたものと比べれば劣るというものだ」

「へぇ」

「肉出せ、火が大きくなってきた」

「はい」


 私はユダにオーク肉を渡す。ユダは肉を受け取ると、鉄製の板の上に肉を置いた。するとユダは私に聞いてきた。


「嵐風龍っていうのは、小型なのか?」

「え?」

「他の龍と比べると、体の大きさが異様に小さいからな」

「他の龍に会ったことが?」

「一度だけ、若い頃にな」


 その時に会った龍は雷龍だったらしい。




 今更ですが、ややこしいなぁ!と思う方もいらっしゃると思うので説明しておこう!

 龍種と竜種の違いだ。

 まず龍種は、原龍種から派生した龍のこと。

 原龍種の足元にも及ばないが、それを抜けば高位ランクに入る激レア魔物だ。

 龍種は原龍種と違い、同じ龍が何体か存在している。

 同じ属性の竜達の長として君臨しているものも少なくない。

 そして竜種だ。

 竜種は更に龍種から派生した竜のことだ。

 これは数が多く、何百体もいる。

 この竜種は、良く言えば新世代の龍。

 悪く言ってしまえば、龍種の決壊種だ。

 力も魔力も全てが劣る決壊種。

 酷く言っているが、高ランクの魔物だ。

 ち、な、み、に。

 亜竜というものが存在するが、亜竜とは地を這う竜だ。

 地上に住む翼を持たない飛ばない竜。

 それが亜竜だ。

 龍からは翼を持たない駄作(トカゲ)と言われている。




「前に天候が荒れた時があったでしょ?天候が荒れたのはね、先代嵐風龍が死んだからなんだよ。私は二代目の嵐風龍なんだ」

「!!?」

「原龍種の一体でも欠ければ、その龍が司るものが荒れる。だから、原龍種は殺されたりしたらいけない。死んだりしたらいけないんだ」

「そうだったのか……」


 だからこそ私には必要だ。情報が、この世界のことが。


「私はさ、まだ生まれて間もないから、この世界のことをよく知らない。

 代わりにユダがこの世界のことを、知っている限りを教えてくれよ」


 ユダは少し考え込むと、優しく微笑んで答えてくれた。


「もちろんだ。わしが知っているこの世界を、余すことなく教えよう」

「ありがとう」


 私とユダは笑いあった。

 それが少しの間続き、バチバチバチっという音で終わった。

 そして、焦げ臭いにおいがただよった。


「にゃっ!焦げてるにゃー!ユダ!早くしないと真っ黒になっちゃうにゃー!」


 ささっと肉を急いで救い、少しだけ焦げた肉を皿に盛り付けて朝食をとった。




「嵐風龍様はどんなことをしているのにゃ?」


 私に合わせて外で朝食を食べていると、突然チルティーが聞いてきた。

 私の仕事か…。

 アルベリア様は原龍種が存在しているだけで、この世界のバランスが保たれるって言っていたけど。

 でも、何故か自分自身の存在意義って言うのをわかっているんだよね。

 聞いてもいないのにさ。


「まず、私が存在しているっていうことかな。存在しているだけで天候が安定するって感じだね。まぁそもそも、天候っていうのは私が毎日操っているわけじゃないし」

「そうなのにゃ?」

「うん。吹き付ける風、流れる水、照り続ける太陽。存在している自然が、誰の意図も関係無しにずっと動き続ける、回り続ける。天候もそれでね、だから、私はただの仲介役なんだよ。他の原龍種もまた同じさ」

「仲介役とは?」

「元々この世界の自然は荒れに荒れててね。誰かが管理しない限り、この世界には生物が存在できないほどだったんだよ。原龍種は、その荒れた自然を中和していく役目を担っているんだ。汚い水をろ過して綺麗な水にする感じだね」


 口からペラペラと出てくる。

 全て聞いたりとかしていない。これは全部知っていたことだ。生まれてからずっとある知識。これは先代のものなのか、はたまたアルベリアが入れといてくれていたものなのか。

 よくわからないが、嵐風龍について、原龍種については、当たり前のように私の中にあった。

 それに気づいたのは最近だけどね。


「なるほど。昔から原龍種には手を出してはいけないというが、そういうことだったのか」

「?どういうこと?」


 ユダは、ナイフで切った肉を刺しながら言った。

 ちなみに焼き方は山賊焼き風。


「とある文献にそう書いてあったんだ。昔はよくわかっていなかったが、今ので繋がる。原龍種が誰も勝てないぐらいに強い理由もそこにあるんだろう」


 おおー、なんていい文献なんだ。


「うん、間違っちゃいないと思うよ」

「そっちからはなんかないのかにゃ?」

「そうだねぇ」


 うーん、やっぱりねぇ。

 今聞くとしても、まずはこれかな?


「この世界の種族について聞きたいかな」

「種族か。まず、大まかに三つに分けられるな。人種、精霊、魔物だ」

「ほお」

「人種は人間族(ヒューマン)が中心となっていて、そこから獣人族(セリアンスロープ)獣族(ビースター)、異民族の矮人(ドワーフ)耳長族(エルフ)がある。次に精霊だが、精霊というのは滅多に人前に姿を現さない、あまり世間に知られていない種族だ。これについてはわしもよく知らない。魔物はまぁお前のようなものを指す。だが、その中には人の姿をするものがいてな。それを魔人と呼ぶ」

「魔人か」


 ソレフィア様が言ってたな。

 人間族(ヒューマン)みたいな姿をしているのに能力(スキル)を使うって。


「魔人ていうのは、魔族とも呼ばれていてな。魔王と呼ばれる魔人が、他の魔人や魔獣などを統率しているらしい。人種、精霊の二つと敵対関係にある種だ。といっても、人種と精霊は共同関係にはないがな」

「へぇ」


 これはまた新情報。

 人種と敵対している魔族ね。

 しかも魔王とは。

 そんな物騒な世界なのね。

 まぁ、魔物がいる時点でわかってたことだけど。


人間族(ヒューマン)は色々階級があってな。平民と貴族に分かれるんだが、貴族にはややこしい奴ばかりなんだ」

「ややこしい奴?」

「私は貴族だ。こんな汚いものではなく綺麗なものを出せ。とか、貴族なんだからもっと優遇しろだとかな。あと、貴族には姓がある。わしは平民になったから、姓は無い。ただのユダだ。もちろんチルティーもな」


 ん?平民に()()()()()

 どういうこと?


「まず獣人族(セリアンスロープ)獣族(ビースター)に貴族はいないのにゃ。獣牙王国レペテウスにはあるって聞いたことはあるにゃけどにゃ」


 獣牙王国レペテウス?

 なんだそれ。


[獣人族(セリアンスロープ)獣族(ビースター)が主に住んでいる亜人国家です。]


「レペテウスは人間族(ヒューマン)の国メリタリナル王国と仲が良くなくてな。何かあればすぐに戦争さ。それが嫌で、このデロッター大森林に来たんだ。最近は戦争が無いから安全といえば安全だが」

「今は、来る魔族との戦いのために、どこの国も停戦状態なのにゃ。近頃勇者も召喚されるとか聞くにゃ」


 私は肉にかじりつきながら考えた。

 勇者か。

 そんなものがいるのね。


「ま、そのせいで魔物も活発になるんだけどな」

「?」

「勇者が現れると、それを倒そうと魔物達の動きが活発になるんだよ」





魔法って、あるだけでファンタジー感ありますよね。



読んでくださりありがとうございました。

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